ドバイチョコレートとは|本場はFIX Dessert Chocolatier

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目次

ドバイチョコレートとは

ドバイチョコレートは、中東の伝統的なお菓子「クナーファ」から着想を得て誕生した、新しいタイプの板チョコレートです。

外側はなめらかなミルクチョコレートで覆われ、中には濃厚なピスタチオクリーム、中東の伝統的な食材である細い糸状の生地カダイフ、そしてタヒニ(ゴマペースト)の3つの要素が詰められています。これらの要素が組み合わさることで、ドバイチョコレートは従来のチョコレート菓子とは異なる独自の食感と味覚を提供します。

口に入れると、まず外側のミルクチョコレートのまろやかな甘みが広がり、次にピスタチオクリームの濃厚なコクのある風味が続きます。最後に、カダイフのパリパリとした食感が心地よいアクセントとなります。この一連の変化が、ドバイチョコレートが多くの人に受け入れられている理由の一つです。

ドバイチョコレートの材料

ドバイチョコレートは、異なる食感と風味を持つ3つの材料で構成されています。

ピスタチオクリーム

ドバイチョコレートの主要な材料の一つが、濃厚なピスタチオクリームです。

中東で古くから親しまれているピスタチオは、独特のコクと風味、そして鮮やかな緑色が特徴です。

このピスタチオをペースト状にしたものが、チョコレートの中心に詰まっています。

チョコレートを割ったときに現れる鮮やかな緑色は、見る人に強い印象を与えます。

カダイフ(天使の髪)

ドバイチョコレートに新しい食感をもたらしているのが、中東の伝統的な食材である細い糸状の生地カダイフです。

カダイフは、小麦粉やトウモロコシ粉を水で溶かした生地を、熱した鉄板の上に糸のように細く垂らして焼き上げる独特な製法で作られます。

その見た目が髪の毛のように細いことから、「天使の髪」という愛称で呼ばれることもあります。

このカダイフが、チョコレートを噛んだときにパリパリとした心地よい音と、軽やかな食感を生み出しています。

タヒニ(ゴマのペースト)

ドバイチョコレート全体の味に深みを与えているのが、タヒニと呼ばれるゴマのペーストです。

タヒニは、炒ったゴマをすりつぶして作られる調味料で、中東料理で広く使われています。

ゴマ特有の香ばしい風味が、濃厚なピスタチオクリームとチョコレートの甘さのバランスを整えています。

これにより、複雑で奥深い味わいを作り出しています。

ドバイチョコレートの基となったお菓子「クナーファ」

ドバイチョコレートは、中東の伝統的なお菓子であるクナーファからアイデアを得て生まれました。

クナーファは、カダイフ生地とチーズを何層にも重ねて焼き、甘いシロップをかけて食べる中東の伝統的なデザートです。特にトルコやレバノン、パレスチナなどの地域で広く親しまれています。

サクサクしたカダイフの食感と、とろけるようなチーズ、そして甘いシロップが組み合わさることで、独特の風味が生まれます。

このクナーファの構成要素が、後にドバイチョコレートのアイデアの原点となりました。

ドバイチョコレートの誕生

ドバイチョコレートは、アラブ首長国連邦のドバイにある小さなチョコレート工房から始まりました。

2021年頃、ドバイにあるFIX Dessert Chocolatier(フィックス デザート ショコラティエ)という工房の職人たちが、伝統的なクナーファの要素を現代のチョコレートに取り入れることを思いつきました。

商品の名前と意味

2022年、彼らは「Can’t Get Knafeh of It」という名前の板チョコレートを発売しました。

この商品名は、英語の「Can’t get enough of it」(いくらあっても足りない)と、伝統的なお菓子「Knafeh」(クナーファ)を組み合わせた言葉遊びです。

「クナーファの虜になって抜け出せない」という意味が込められています。

SNSで大流行!ドバイチョコレートの世界的ブーム

当初はドバイの地元で知る人ぞ知る存在でしたが、ある出来事をきっかけに世界的なブームとなりました。

TikTok動画が火付け役

2023年12月、ドバイのフードインフルエンサーであるマリア・ヴェヘラがTikTokに投稿した動画が、ブームが広まるきっかけとなりました。

この動画では、板チョコを割った瞬間に中身がこぼれ落ちる様子や、食べる際のザクザクとした音が印象的でした。

2025年6月時点で、この動画の再生回数は1億2900万回を超えています。

ASMR文化との関連性

この動画が注目を集めた背景には、SNS文化におけるASMRの人気があります。

ASMRとは、聴覚や視覚への特定の刺激によって心地よさを感じる現象のことです。

ドバイチョコレートは、断面に現れる鮮やかな緑色のピスタチオクリームという視覚的な要素と、カダイフによる咀嚼音という聴覚的な要素を兼ね備えていました。

この組み合わせが、「見てみたい」「食べてみたい」という強い欲求を多くの人に抱かせました。

中東からヨーロッパへ

最初に注目が集まったのは、ドバイに近い中東諸国、特にトルコでした。

カダイフはトルコの伝統的な食材でもあり、現地の人々にとって馴染み深かったことが理由の一つです。

トルコから次に流行が広がったのはヨーロッパ、特にドイツでした。

ドイツには多数のトルコ系移民が住んでおり、トルコの食文化に精通したコミュニティがあったことが、流行の早期の広がりにつながりました。

アジアでの流行

アジア地域では、韓国が流行の中心となりました。

韓国はSNSトレンドの発信力が強く、食べ物の流行において重要な役割を果たしています。

2024年夏頃から韓国で関心が高まり、独自のアレンジを加えた商品が次々と登場しました。

例えば、の生地でドバイチョコレートの要素を包んだドバイや、ピスタチオとカダイフをクッキークロワッサンに取り入れた商品などが開発されています。

韓国での流行は、日本の食文化トレンドにも影響を与え、2024年末頃から日本国内でも注目されるようになりました。

ドバイチョコレートの入手方法

世界的な人気の高まりとは対照的に、本場ドバイでの入手は非常に困難な状況が続いています。

FIX Dessert Chocolatierの商品は、基本的にアラブ首長国連邦内でのみ販売されています。

購入方法は、ドバイ国際空港の実店舗か、オンラインデリバリーサービスを通じてのみです。

現在、需要の急増により、商品は発売と同時に数分で売り切れてしまう状況が続いています。

2025年4月には、ドバイ国際空港の実店舗だけで120万枚もの板チョコが売れたという記録も残っており、その人気の高さがうかがえます。

ドバイチョコレートは入手困難

ドバイチョコレートの人気は、その入手の難しさからいくつかの問題を引き起こしています。

インターネット上には、本物の商品を高額で転売するサイトや、偽の通販サイトが数多く出現しています。

元値の何倍もの価格で取引されるケースも報告されており、消費者が不利益を被る事例も発生しています。

ドバイチョコレートの類似商品が登場

オリジナルのドバイチョコレートが入手困難な状況を受け、現在では世界中の様々な企業が類似商品を開発し、販売しています。

類似商品の品質には大きなばらつきがあります。特に安価な商品では、カダイフやピスタチオの含有量が少なかったり、チョコレート自体の品質が低かったりするものも見受けられます。

一方で、ピスタチオの産地に近いトルコなどで製造された商品は、本場に近い味わいを実現しているものもあります。

新たな概念「ドバイスタイル」の誕生

ドバイチョコレートの流行は、単なる商品ブームにとどまらず、新しいデザートのスタイルを生み出しました。

日本国内でも、この世界的なトレンドを受けて多くの企業がドバイチョコレート関連商品の開発に取り組んでいます。

スイスの高級チョコレートブランドであるリンツは、2025年3月に「ドバイスタイチョコレート タブレット」を限定2万枚で発売し、発売からわずか3日で完売しました。

また、ベルギーの高級チョコレートブランドであるゴディバは、板チョコの形にとどまらず、「ドバイチョコレート ショコリキサー」や「ドバイチョコレート パフェ」といった商品を展開しています。

これらの商品では、ピスタチオチョコレートの組み合わせに加えて、カダイフをイメージした揚げ麺を使用するなど、独自の要素を加えています。

ドバイスタイルという概念の普及

これらの大手企業の取り組みから、ドバイチョコレートの核となる要素、すなわちピスタチオチョコレートの組み合わせが「ドバイスタイル」という一般的なカテゴリーとして認識されるようになっていることがわかります。

現在では、必ずしもカダイフを使用していない商品でも、ピスタチオチョコレートが組み合わされていれば「ドバイスタイル」と呼ばれることが多くなっています。

ドバイチョコレートが受け入れられた要因

ドバイチョコレートがこれほどまでに広く受け入れられている理由を分析すると、複数の要因が重なっていることがわかります。

これまでにない食感と風味

カダイフによるサクサクとした食感は、従来のチョコレート菓子では体験できないものです。

多くの人にとって、この食感は全く新しい体験であり、それが強い印象を残しています。

また、ピスタチオの濃厚な風味も、一般的なチョコレートとは異なる味わいの体験を提供しています。

SNSでの断面映え

チョコレートを割った時に現れる鮮やかな緑色の断面は、従来のチョコレートでは見ることのできない美しさを持っています。

この「断面映え」は、SNSでの共有を促進する要因となり、「実際に見てみたい」「食べてみたい」という欲求を呼び起こしています。

地域の食文化への関心

ドバイチョコレートは、中東という多くの人にとって馴染みの薄い地域の食文化に由来しています。

異文化の食材や調理法を体験することへの関心が高まる中、ドバイチョコレートはそうした欲求を満たす商品として機能しています。

同時に、チョコレートという世界中で親しまれている食べ物の形を取ることで、親しみやすさも保っています。

特別感のある価格設定

多くのドバイチョコレート関連商品は比較的高価格帯で販売されており、この価格設定が「特別感」を演出する要素となっています。

ドバイチョコレートの課題

ドバイチョコレートは、その独特な材料と製法のため、製造と流通の過程でいくつかの課題を抱えています。

カダイフは日本では一般的でない食材のため、多くの製造業者にとっては取り扱いが困難です。

海外からの輸入に依存するか、独自に製造技術を開発する必要があります。

また、ピスタチオペーストの品質管理や、異なる食材を組み合わせる際の技術的な調整など、従来のチョコレート製造とは異なる専門知識が求められます。

これらの課題を解決するため、ドバイチョコレートの製造経験を持つOEMメーカーの選定や、中東の食材に精通した専門家との協力が重要になっています。

また、「ドバイチョコレート」という名称について、複数の企業が商標権を主張するケースが生じています。

これは、急速に広がったトレンドに対して法的な整備が追いついていない現状を反映しています。

まとめ

ドバイチョコレートのブームは、単なる一過性の流行を超えて、新しいチョコレート菓子のカテゴリーとして定着する可能性を示しています。

中東の伝統的な食材と現代的なチョコレート技術の融合は、国境を越えた食文化の交流を象徴しています。

この現象は、SNSを通じて世界規模で拡散した現代の情報伝達と文化交流の新しい形を反映しているといえるでしょう。

各国で独自のアレンジが加えられている状況は、グローバルなトレンドがローカルな文化と融合して新たな価値を生み出す、現代の文化創造のプロセスを如実に表しています。

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