「エッグベネディクト」は、朝食やブランチの定番として世界中で親しまれている料理です。お菓子とも料理ともいえるこの一品は、シンプルな構成でありながら、奥深い味わいと豊かな歴史を持っています。日本でも2012年頃から大きな流行を見せ、多くのカフェやレストランで提供されるようになりました。
エッグベネディクトとは
エッグベネディクトは、一体どのような料理なのでしょうか。その基本的な構成と、各要素が持つ役割を見ていきましょう。
エッグベネディクトの構成要素
エッグベネディクトは、いくつかの重要な要素で構成されています。
- 土台: イングリッシュマフィンを半分に切ってトーストします。
- 具材: ハム、ベーコン、またはスモークサーモンなどを載せます。
- 卵: 半熟に仕上げたポーチドエッグを具材の上に置きます。
- ソース: 卵の上から濃厚なオランデーズソースをかけます。
エッグベネディクトの味わい
それぞれの要素が、エッグベネディクト独特の味わいを作り出しています。イングリッシュマフィンの素朴な風味は、具材の塩味やソースの風味を引き立てます。ポーチドエッグの黄身がとろりと流れ出すと、すべての具材がまろやかにまとまり、濃厚なオランデーズソースが、バターの風味とレモンの酸味で全体を調和させてくれます。
エッグベネディクトの発祥起源
エッグベネディクトの起源には、複数の興味深い説が存在します。どの話も「ベネディクト」という人物が関わっている点が共通しています。
レミュエル・ベネディクト説
最も有名な説は、1894年にニューヨークのウォルドルフ・アストリア・ホテルで生まれたというものです。ウォール街の株式仲買人だったレミュエル・ベネディクトが、二日酔いを治すために特別な朝食を注文しました。彼は、バターを塗ったトーストに、ポーチドエッグとベーコン、少量のオランデーズソースを添えるよう頼んだのです。ホテルの支配人オスカーがこの料理に感銘を受け、トーストをイングリッシュマフィンに、ベーコンをハムに変えて、ホテルの正式な朝食メニューに加えたと伝えられています。
デルモニコスレストラン説
別の説は、1900年頃にニューヨークに住んでいたベネディクト夫妻が、行きつけのレストラン「デルモニコス」でこの料理を考案したというものです。ある日、夫人が支配人に「何か新しい料理はないか」と尋ねたところ、彼女の好みに合わせて、マフィンとハムの上にポーチドエッグを載せ、オランデーズソースとトリュフを添えたものを出したとされています。
どの説が真実かは定かではありませんが、こうしたエピソードからも、この料理が特別なリクエストや創意工夫から生まれたことが伺えます。
土台となるマフィンの種類
エッグベネディクトに欠かせないイングリッシュマフィンには、イギリス式とアメリカ式の二つのタイプが存在します。
| 項目 | イギリス式マフィン | アメリカ式マフィン |
| 発祥 | イギリス （ヴィクトリア朝時代） | アメリカ |
|---|---|---|
| 製法 | 平らな鉄板（テンパン）で両面を焼く。 | 型やカップを使いオーブンで焼く。 |
| 特徴 | 街を売り歩く文化があった。パンケーキのような製法。 | チョコレートチップなどを混ぜ込んだ甘いお菓子のようなタイプが多い。 |
エッグベネディクトにはイングリッシュマフィンが必須
エッグベネディクトを作る際には、必ずイングリッシュマフィンを使用します。なぜなら、アメリカ式の甘いマフィンでは、ハムやポーチドエッグ、オランデーズソースといった塩味の具材との相性が悪く、料理としてのバランスが崩れてしまうからです。イングリッシュマフィンの素朴で控えめな味わいが、他の材料の個性を引き立て、全体として完璧なハーモニーを生み出すのです。
日本におけるエッグベネディクトの流行
エッグベネディクトは、世界中で朝食の定番として親しまれていますが、日本でも2012年頃から大きな流行を見せました。ハワイやニューヨーク発のパンケーキブームに続く形で、おしゃれなカフェやホテルレストランで提供されるようになり、多くの人々がその味を楽しみました。
まとめ
エッグベネディクトは単純に見える料理でありながら、長い歴史と文化的背景、そして絶妙な材料の組み合わせによって成り立っている、奥深い一品です。朝の食卓に特別な彩りを添える存在として、今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。