生クリームについて
生クリームとは?
生クリームは、牛の乳(牛乳や生乳)から脂肪だけを取り出して作るクリームのこと。ケーキのデコレーションや料理によく使われる、とてもなめらかでコクのある乳製品です。
生クリームの原料
生クリームの原料は「生乳(せいにゅう)」です。これは搾りたての牛の乳を冷やして、そのままの状態で運んだものを指します。
生クリームの作り方
生クリームは、牛の乳(生乳や牛乳)から脂肪分だけを取り出して作られる乳製品だと上記で話しました。
この取り出しには「遠心分離機(えんしんぶんりき)」という機械が使われます。
高速で回転させることで、脂肪分の多いクリームと、脂肪の少ない脱脂乳(スキムミルク)に分けることができます。
取り出したクリームは、そのままでは日持ちしないため「殺菌・均質化・エイジング」という処理が施されます。
この3つの工程を経ることで私たちが普段口にする安全でなめらか、風味豊かな生クリームが作られます。
それぞれの工程は、おいしさと品質、そして安全性を支える大切なプロセスです。
- 貯乳
- 遠心分離
- 殺菌
- 均質化
- エージング
- 充填・包装
- 出荷前の最終チェック
原料の受け入れと貯乳(ちょにゅう)
まず、生クリームの原料となる生乳(せいにゅう)は牧場から冷やされたタンクローリーで工場に運ばれてきます。
工場に到着するとすぐに品質のチェックが行われます。
チェック項目 | 内容 |
---|---|
細菌数 | 衛生状態が保たれているかを確認 |
成分分析 | 脂肪分・たんぱく質などのバランスを調査 |
外観・におい | 見た目やにおいに異常がないかを確認 |
これらの検査をクリアした生乳だけが、冷却された「貯乳タンク」に保存され、次の工程へと進みます。
遠心分離(ぶんり)でクリームと脱脂乳に分ける
次に行うのが「分離(ぶんり)」という工程です。
ここでは生乳から脂肪分を取り出して、クリームと脱脂乳(スキムミルク)に分けます。
生乳を「遠心分離機」という機械にかけると、成分の重さの違いによって分かれます
軽い脂肪分は外側に集まり、それがクリームになります。
重い水分やたんぱく質などは内側に残り、これは脱脂乳として別の用途に使われます。
この時点で得られるクリームは、脂肪分が35〜45%ほどの濃厚な状態です。
ケーキや料理で使う「生クリーム」は脂肪がたっぷり必要です。その脂肪をここでしっかり分けて集めるのです。
殺菌(さっきん)で安全性を確保する
分離されたクリームは、そのままでは細菌が増えやすく日持ちしません。
そのため「加熱殺菌」を行い、安全に長持ちするよう処理します。
製品の用途や保存期間に応じて、適した方法が選ばれます。
方法 | 温度と時間 | 特徴 |
---|---|---|
HTST法(高温短時間) | 約75℃で15秒 | 一般的な方法。風味の変化が少ない |
UHT法(超高温短時間) | 120~130℃で2〜3秒 | 長期保存が可能。加熱の影響で風味が変わることも |
低温長時間 | 約63℃で30分 | やさしい風味が残るが、時間がかかる |
- 食中毒の原因となる菌を取り除く
- 品質を安定させる
- 保存期間を延ばす
均質化(ホモジナイズ)でなめらかに
次は「均質化(きんしつか)」の工程です。
ここではクリームの中にある脂肪の粒(脂肪球)を細かくし、均一になめらかにします。
均質化されていないクリームは、時間が経つと脂肪が分離して浮いてしまいます。
均質機を使って高い圧力をかけると脂肪球が細かくなり、クリームの見た目や舌ざわりが安定します。
均質化されたクリームはしっかり混ざり合っていて分離しにくく、料理やお菓子にも使いやすくなります。
冷却とエージングで泡立ちやすく
均質化されたクリームは、すぐに冷却されて5℃以下に下げられます。
その後、「エージング」と呼ばれる工程で一定時間タンクの中で休ませます。
エージングには、数時間〜一晩(8〜12時間)かかります。
このひと手間によって下記の変化が起こり、ホイップしやすい理想的なクリームが完成するのです。
泡立ちやすくなる | 冷やすことで脂肪が安定し、空気を取り込みやすくなる |
舌ざわりがよくなる | 脂肪球と水分がなじみ、なめらかになる |
品質が安定する | 冷却によって分離や変質が起きにくくなる |
充填・包装
エージングが終わると、いよいよ製品としての最終段階です。
クリームはクリーンルーム内で、紙パックやボトルなどに自動的に詰められます(=充填)。
衛生管理が徹底されており、外部の空気や菌が入らないように密閉されます。
出荷前の最終チェック
- 容器の密封状態
- 異物混入の有無
- 微生物検査
- 重量・外観の確認
これらの確認をクリアしたものだけが、店頭に並びます。
まとめ
生クリームはただの「ミルク」ではなく、多くの工程と工夫によって作られています。
- 牛乳の中の脂肪を取り出し
- 安全に加熱し
- なめらかに整え
- 泡立ちやすく仕上げ
- 清潔にパック詰め
これらをすべて丁寧に行うことで、お菓子作りや料理にぴったりの生クリームができるのです。