日本人が初めてアイスクリームを食べたのはいつ?
アイスクリームを邦人として初めて口にしたのは幕末の時代とされています。
幕末の万延元年(1860年)、アメリカの軍艦ポーハタン号に乗った幕府の使節団や、咸臨丸に乗った一行が初めてアイスクリームを体験したという記録があります。
使節団の一人、柳川当清の航海日記には次のように記されていました。
氷を色々に染め、物の形を作り、是を出す。味は至って甘く、口中に入るに忽ち解けて、誠に美味なり
これほど初めてアイスクリームを体験した使節団の驚きは大きかったようです。
ある人物はそのおいしさに感動し、同僚のために持ち帰ろうと懐紙に包んで懐に入れたところ、中で溶けてしまい服がべとべとになったというエピソードが語り継がれています。
こうした体験談は、アイスクリームの初体験がいかに特別なものだったかを物語っています。
日本人で初めてアイスクリームを作ったのは誰?
アイスクリームを日本で初めて製造した人物として知られるのが町田房蔵です。
彼は幕臣の家に生まれ、勝麟太郎(海舟)らとともに咸臨丸で渡米しました。
渡米中に彼はマッチや石鹸、氷などの製造技術を学び、帰国後、横浜の馬車道で氷水屋を開業します。
そこで「あいすくりん」と呼ばれるアイスクリームの製造・販売を試みました。
初期のアイスクリームは高価すぎて売れなかった?
町田が製造したアイスクリームの価格は、当時の女工の半月分の給料に相当する2分(約8000円)という高額でした。
このため、購入するのは稀に外国人が訪れる程度で、初めは全く売れませんでした。
しかし、翌年の伊勢神宮の遷宮祭の際には祭りの賑わいと共に大人気となり、町田の努力が報われました。
日本人にアイスクリームが普及したきっかけは?
町田房蔵がアイスクリームを販売した伊勢神宮の遷宮祭では、祭りの特別な雰囲気も手伝い、大成功を収めました。
この成功をきっかけに、アイスクリームは徐々に日本の人々に受け入れられるようになり、その後多くの人が製造に乗り出しました。
町田房蔵のその後
町田自身はアイスクリームの事業に執着することなく、造船業に転じました。
その背景には、かつて太平洋横断で運命を共にした勝海舟の影響があったとされています。
町田は国家的プロジェクトに貢献する道を選びましたが、日本で最初にアイスクリームを作った人物としての名誉は歴史に刻まれています。
アイスクリームのその後の発展
町田の後、日本国内でアイスクリームの製造技術は進化し、徐々に価格も下がり、一般の人々に広がっていきました。
冷凍技術の発展に伴い、保存性が向上し、多様なフレーバーが登場します。
明治後期から昭和初期にかけて、アイスクリームは特別な贅沢品から日常の楽しみへと変化していきました。
現代のアイスクリーム文化
現代ではアイスクリームは日本の食文化に深く根付いています。
夏の定番スイーツとしてだけでなく、季節限定フレーバーや地域特産の素材を使った商品が次々と開発されていますね。
コンビニエンスストアやスーパーで手軽に購入できる一方で、高級パティスリーや専門店で提供されるちょっと贅沢なアイスクリームも人気です。
まとめ
アイスクリームの歴史は日本が西洋文化を取り入れる過程の一端を象徴しています。
幕末の使節団による初体験から、町田房蔵の挑戦とその後の普及に至るまで、アイスクリームは人々に甘い夢と楽しみを提供し続けています。
これからも新しい技術やアイデアによって、その魅力がさらに広がっていくことでしょう。