アイスミルクは体に悪いのか?|カロリーやトランス脂肪酸のお話

アイスミルクは体に悪いのか?【結論】
アイスミルクが体に悪いと断定することはできませんが、高カロリーで糖分が多い嗜好品(しこうひん)であるため、摂取量や頻度の管理が健康維持に重要です。
アイスミルクは、牛乳からきた成分の量が法律で定められています。そのため、乳成分の少ないラクトアイスと比較すると、乳成分が多く、植物性油脂や添加物の使用が少ない傾向にあります。このことから、アイスミルクは相対的に健康面でのリスクは低いと考えられています。
しかし、どのようなお菓子でも過剰な摂取はカロリーオーバーや血糖値の急上昇につながります。そのため、アイスミルクを食べる際は、毎日の食事全体のバランスを考えた上で、適切な量と頻度で楽しむことが健康的なアプローチです。
下記より詳しく解説していきます。
アイスミルクの区分
日本で売られているアイスは、「食品衛生法」という法律で、どんな成分がどれくらい入っているかによって、グループに分けられています。
この法律による分類は、私たちがお店でアイスを選ぶときに、そのアイスが「牛乳が多いか」「油が多いか」などがすぐにわかるようにするための、大切なルールです。
乳固形分
乳固形分(にゅうこけいぶん)とは、牛乳から水分を抜いた残りの成分のことです。
これには、私たちにとって大切なカルシウムやタンパク質などが含まれています。この乳固形分が多ければ多いほど、アイスの栄養価が高くなり、牛乳の風味が強くなります。
乳脂肪分
乳脂肪分(にゅうしぼうぶん)とは、牛乳に含まれている油分、つまり脂質のことです。
この乳脂肪分が、アイスを食べたときの「コク」や「なめらかさ」を生み出しています。乳脂肪分が多いほど、アイスクリームのように濃厚で口どけの良い食感になります。
アイスの成分基準を比較する
種類 | 乳固形分(牛乳の成分) | 乳脂肪分(牛乳の油分) | 特徴 |
アイスクリーム | 15パーセント以上 | 8パーセント以上 | 牛乳の成分が最も多く、濃厚でコクがある |
アイスミルク | 10パーセント以上 | 3パーセント以上 | 牛乳の成分が真ん中くらいで、さっぱりしている |
ラクトアイス | 3パーセント以上 | 決まりなし | 牛乳の成分が最も少なく、植物の油を使うことが多い |
私たちが今回知りたいアイスミルクは、この3つのグループの真ん中くらいに位置づけられています。
アイスミルクは、「乳固形分が10パーセント以上」で、「乳脂肪分が3パーセント以上」と法律で決められています。このように、法律で定められた最低限の牛乳からできている成分(乳固形分)が必ず入っていることが保証されています。
この乳固形分のルールのおかげで、乳固形分が3パーセント以上のラクトアイスと比べて、アイスミルクは牛乳成分が多く含まれていることが証明されます。乳脂肪分が3パーセント以上あることで、アイスミルクはさっぱりしている中にも、しっかりとした牛乳の風味を感じられるように作られています。
アイスミルクの材料に使われる油について
アイスミルクを作る時には、牛乳や生クリームなどの乳製品を使いますが、乳脂肪分を補ったり、食感を調整したりするために、中には植物性油脂(しょくぶつせいゆし)と呼ばれる油が使われることがあります。
植物性油脂を使う理由
植物性油脂は、アイスのコストを抑えたり、製品を溶けにくいような食感にしたりするために使われることがあります。
特にラクトアイスでは、乳脂肪分が少ない分、植物性油脂を使ってアイスに滑らかさやコクを出すことが一般的です。
使われる植物性油脂の種類
一般的に使われる植物性油脂には、パーム油(アブラヤシの実からとれる油)、大豆油、コーン油などがあります。
これらの油は、アイスの固さや口どけを調整するのに役立っています。製品によって使われる油の種類や量は異なり、これがアイスの食感やカロリーに影響を与えます。
トランス脂肪酸のお話
植物性油脂をアイスに使うために加工するとき、ごくわずかですがトランス脂肪酸(トランスしぼうさん)という成分ができてしまうことがあります。
トランス脂肪酸は、たくさん摂りすぎると、血液の中の「悪玉コレステロール」という、体にあまり良くない成分を増やしてしまうことがわかっています。これが続くと、心臓の病気などの原因になる可能性もあるため注意が必要です。
そのため、世界保健機関(WHO)は、トランス脂肪酸をなるべく少なく摂るように世界中に呼びかけています。
日本で売られているアイスは大丈夫なの?
この点については、農林水産省が調べた結果があります。
日本では、アイスを作る技術が進んでいるため、植物性油脂を使っている製品でも、トランス脂肪酸の量がとても少なく抑えられています。そのため、トランス脂肪酸について過度に心配する必要はありません。
しかし、植物性油脂が入っているものを毎日、大量に食べ続けるのは、トランス脂肪酸の心配よりも、単純にカロリーの摂りすぎにつながるため、量と頻度に注意が必要です。
ラクトアイスの油との違い
アイスミルクとラクトアイスで、油の使われ方には大きな違いがあります。
アイスミルクは必ず一定量の乳脂肪を使うという法律のルールがあるため、植物性油脂は「牛乳成分の補助役」として使われることが多いです。乳脂肪分が3パーセント以下になることはありません。
一方、ラクトアイスは牛乳成分が少ないため、植物性油脂が「主役の油」として、コクや風味を出すためにたくさん使われることが多いです。
このため、ラクトアイスのほうが、同じ量を比べたときにカロリーや脂質が多くなる傾向があります。
アイスのカロリーを比較する
100グラムあたりの目安
ラクトアイスのカロリーや脂質がアイスミルクよりも高くなっているのは、植物性の油を多く使っているためです。同じ量を食べると、ラクトアイスの方が体に取り込む油が多くなります。
カロリーの摂りすぎによる体重増加
アイスミルクを1個食べると、だいたい150キロカロリーから200キロカロリーくらいになります。これは、体を動かして消費するエネルギーに換算すると、軽く30分くらい歩いて消費できるカロリーと同じくらいの量です。
もし、毎日おやつにアイスミルクを食べ続けると、消費するカロリーよりも摂取するカロリーが上回るため、それが原因で体重が増えてしまう可能性があります。
糖分が血糖値に与える影響
アイスミルクには糖分(砂糖など)がたくさん含まれています。糖分を摂ると、血液の中の血糖値が上がります。
特に、お腹が空いているときに急いで食べると、糖分が一気に吸収されて血糖値が急激に上がってしまうことがあります。血糖値が急に上がると体に負担がかかるため、糖尿病という病気などで血糖値の管理が必要な人にとっては、特に気をつけなければならない点です。
また、口の中に糖分が長時間残ると、虫歯の原因菌がその糖分を食べて酸を出すため、虫歯になりやすくなります。食べた後は歯磨きやうがいをすることが大切です。
冷たい食べ物が胃腸に与える負担
冷たいアイスミルクを一度にたくさん食べると、体が急に冷やされ、胃腸に負担がかかることがあります。
胃腸が敏感な人や、体調が良くないときに冷たいものを食べると、胃腸の血管が収縮し、消化の働きが弱まることで、お腹が痛くなったり、うまく消化できなかったりする可能性があります。そのため、ゆっくりと少しずつ食べるのがおすすめです。
アイスミルクから摂れる栄養素の利点
アイスミルクには、牛乳の成分が入っているので、カルシウムやタンパク質といった栄養素も少しだけですが摂ることができます。
ラクトアイスよりも牛乳の成分が多い分、少しでも栄養が摂れるのは利点です。
しかし、これらの栄養を効率よくしっかり摂りたいのなら、牛乳やチーズを食べた方が適しています。そのため、アイスミルクを栄養のために食べるのは適切ではありません。あくまで「おやつ」として考え、楽しみましょう。
アイスミルクを楽しむための工夫
食べる頻度と量を適切に管理する
私たちが一日にとるおやつは、「食事バランスガイド」という国が作った基準によると、だいたい200キロカロリー以内が目安とされています。
アイスミルク1個のカロリー(150~200キロカロリー程度)を考えると、週に2回から3回くらいを目安にするのが、健康のためには良いと考えられます。
この頻度と量を守ることで、総カロリーの摂りすぎを防げます。
パッケージの表示を確認する
お店でアイスミルクを選ぶときには、パッケージに書かれている「原材料表示」や「栄養成分表示」をチェックする習慣をつけましょう。
原材料表示の確認ポイント
原材料は、多く使われているものから順番に書かれています。
牛乳などの乳製品が先に書かれていて、植物性油脂や添加物の名前が後ろの方に書かれている製品のほうが、牛乳成分が多く、よりシンプルな材料で作られている可能性があります。
栄養成分表示の確認ポイント
脂質や糖質の量を他のアイスと比べてみるのも良い方法です。
栄養成分表示を確認し、脂質や糖質が少ないものを選ぶことで、より健康に気を配ることができます。
アイスミルクを食べる適切なタイミング
アイスミルクを食べるタイミングにも配慮することで、体への負担を軽減できます。
ご飯を食べた後のデザートとして適量を食べるのがおすすめです。ご飯を食べた後なら、空腹時の一気な摂取よりも、血糖値の急な上昇を少し抑えることができます。
また、寝る直前に食べるのは避けるべきです。寝る前に食べると、消化器官に負担がかかるだけでなく、消費しきれないカロリーが体脂肪として蓄積されやすくなってしまう可能性があります。
体への負担を減らすための工夫
冷たいアイスを食べるときは、体への負担を減らす工夫を取り入れましょう。
適温の飲み物(温かいお茶など)と一緒に摂取したり、少しずつ時間をかけて食べたりすることで、胃腸が急に冷えるのを防ぎ、消化機能への負担を軽くすることができます。
まとめ
アイスミルクは、ラクトアイスと比べると牛乳成分が多い分、健康面での心配は比較的少ないと言えます。
しかし、高カロリーで糖分が多い「お菓子」であることに変わりはありません。
「絶対に悪いものだから食べてはいけない」と我慢するのではなく、食べる頻度と量をしっかり守り、バランスの取れた食事の中で「ご褒美」として上手に楽しむことが、心も体も健康でいるための最善の方法です。