カンロ株式会社とは|代表的な商品と生い立ち

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目次

カンロ株式会社とは何か

カンロは、を中心とした事業で日本国内の市場において、一定のシェアを占めている食品メーカーです。という商品は、子供から大人まで幅広い年齢層に親しまれている菓子であり、単なる甘味を楽しむだけでなく、のどの調子を整えたり、気分転換したりする役割も果たしています。カンロは、このような多様な役割を持つを中心とした事業を展開することで、日本の菓子市場に独自の地位を築いています。

カンロ株式会社の歴史

カンロの歴史は、110年以上前の1912年(大正元年)に遡ります。この長い歴史の中で、小さな製菓所から全国的な企業へと成長を遂げました。

創業:宮本製菓所の時代

創業者の宮本政一が、山口県熊毛郡島田村(現在の光市)で個人経営による「宮本製菓所」を開業したのがカンロの始まりです。創業当時の日本は、近代化が進む一方で、まだ伝統的な和の文化が色濃く残っていました。この時代に、宮本製菓所は「宮本のドロップス」や「宮本の生玉」を製造し、地域では知られた存在となりました。

会社組織への移行

戦後の1950年になると、事業の拡大と近代化を目指して、資本金100万円で「宮本製菓株式会社」を設立しました。当時の100万円は、現在の価値に換算すると相当な金額であり、個人事業から本格的な企業経営へと転換する、強い意気込みが感じられます。この株式会社化により、カンロは組織的な企業活動へと本格的に移行しました。

社名変更と甘露の意味

1960年には、社名を現在の「カンロ株式会社」に変更しました。社名の「カンロ」は、サンスクリット語で「甘露」を意味する「アムリタ」に由来しており、天から降る甘い露、あるいは不老不死の薬という意味も持ちます。子供たちに親しまれるよう、あえてカタカナ表記の「カンロ」としたのです。

経営基盤の構築

東京証券取引所への上場

1962年には、東京証券取引所市場第2部に株式を上場しました。地方の小さな製菓所から始まった会社が、わずか50年で上場企業にまで成長しました。この急速な成長の背景には、単に良い商品を作るだけでなく、時代の変化を読み取り、適切な事業展開を行った経営判断がありました。

本社移転

同じ年に本社を東京都豊島区に移転し、首都圏に拠点を置くことで、事業のさらなる拡大を図りました。これにより、全国的な知名度と流通網を確保するための基盤が構築されました。

販売網の構築

1973年には、三菱商事と販売総代理店契約を締結し、全国的な販売網を確保しました。この三菱商事との提携は、単なる販売契約を超えて、カンロの事業展開に大きな影響を与え、現在でも三菱商事はカンロの最大の取引先となっています。この安定したパートナーシップにより、カンロは商品開発に集中できる環境を得ることができました。

カンロの代表的な商品

カンロは、時代に合わせた様々な商品を開発することで、独自の市場を確立しました。

カンロ飴の誕生

1955年に「カンロ」が誕生しました。創業者の「日本人には日本人だけが好む味のふるさとがある」という独自の発想に基づいて、和食に欠かせない醤油をに使用するという、当時としては前例のない試みから生まれました。カンロは、砂糖と水に醤油を配合するという、シンプルながら計算された製法で作られています。醤油の味と旨味が甘さと絶妙にバランスを取り、「あまじょっぱい」という独特の風味を生み出しました。この味わいは日本人の舌に深く訴えかけるものがあり、大人から子供まで幅広い支持を獲得しました。

セロハン紙で個別包装されたキャンディとしては日本で初めての商品でもあり、衛生面と携帯性の両方を向上させました。これにより、どこでも気軽に持ち運んで食べられるようになりました。

健康のど飴の開発

1981年に「健康のど」を発売しました。従来のが主に甘味を楽しむものだったのに対し、のどの調子を整えるという機能性を前面に出した商品は画期的でした。この商品の成功により、「のど」という新しい商品カテゴリーが確立され、後に多くのメーカーが参入する市場を創出しました。

グミ市場への進出

1990年代には「グミ」分野に進出しました。グミは欧米では一般的な菓子でしたが、日本ではまだ馴染みが薄い商品でした。カンロは日本人の嗜好に合わせたグミを開発し、独自の市場を開拓していきました。現在では「ピュレグミ」がグミ市場のブランドとして市場を牽引しています。

カンロ株式会社の市場での地位

カンロの事業は、伝統的なと新しい分野であるグミを二つの柱としています。

売上構成

2024年の年間売上高は約318億円です。その内訳は、が約158億円(49.8%)、グミが約152億円(47.9%)、素材菓子が約7億円(2.3%)です。この数字から、カンロが伝統的な事業を維持しながら、グミという新しい分野でも収益を上げていることが分かります。

市場シェア

カンロは、国内キャンディ市場全体でシェア12.1%の首位です。また、市場では19.4%の首位、グミ市場では15.9%の2位という強固なポジションを占めています。これらの数字は、カンロが単に老舗企業として生き残っているだけでなく、現在も市場をリードする存在であることを示しています。

カンロ株式会社の研究開発体制

カンロは、様々な分野で事業を展開し、成長を続けています。この成長を支えるのが、研究開発への取り組みです。

研究所の設立

2015年には、東京江東区に「KANRO R&D 豊洲研究所」を開設しました。この研究所では、新商品の開発や既存商品の改良に取り組んでいます。

屋内ハーブ農園「カンロファーム」

2020年には屋内ハーブ農園「カンロファーム」をオープンしました。これにより、原料の栽培から製品化まで一貫した品質管理に取り組んでいます。

カンロ株式会社の企業理念

カンロは明確な企業理念と、それを実現するための戦略を持っています。

企業パーパス

カンロは企業パーパス「Sweeten the Future ~心がひとつぶ、大きくなる。~」を掲げています。これは、を口に入れた瞬間に心が安らいだり、弾んだりするような、小さな幸せを積み重ねることで、持続可能な社会に貢献することを目指す考え方です。

行動指針

この理念を実現するため、「創意工夫」「信義誠実」「百万一心」という三つの行動指針を定めています。「創意工夫」は、常に市場に新しいものを提案し、需要を生み出す精神を表しています。カンロや健康のどの開発など、カンロの歴史を支えてきた考え方です。「信義誠実」は、事業に関わるすべての人に対して誠実な姿勢でビジネスを行うことを示しています。「百万一心」は、パーパスの実現に一致団結して向かっていくという意志を示しています。

カンロ株式会社の事業戦略

カンロの事業戦略は「Kanro Vision 2.0」として体系化されています。この戦略は、既存ブランドを強化する「コア事業」と、新しい分野を開拓する「新規事業」の2軸で構成されています。

カンロ株式会社の組織体制

カンロの組織体制は、本社と製造・販売拠点から構成されています。

本社と製造拠点

本社は東京都新宿区西新宿の東京オペラシティビル37階に位置します。製造拠点は、山口県光市のひかり工場、長野県松本市の松本工場、そして東筑摩郡朝日村の朝日工場の3つです。2025年10月には朝日工場で増築工事が開始され、2027年7月からの稼働が予定されており、今後の事業拡大に対応する準備が進められています。

販売体制

北海道から九州まで、全国をカバーする7つの支店と3つの営業所を配置しています。きめ細かな営業活動を展開しており、三菱商事との長年にわたるパートナーシップがこの全国展開を支えています。

カンロ株式会社の企業文化

カンロは、従業員の健康や多様性も大切にする企業文化を持っています。

健康経営への取り組み

健康経営宣言

2020年7月に健康経営宣言を発表しました。経済産業省と日本健康会議が推進する「健康経営優良法人」に、2022年と2023年に続けて認定されています。

禁煙推進とオフィス環境

健康増進の具体的な取り組みとして、就業時間中の禁煙を推進し、各工場の喫煙所をすべて廃止しました。意識的に歩く歩幅を広くするサインや、立って会議をする「立ち会議室」など、日常の業務の中で自然に健康増進を図れる工夫もしています。

医療サポート体制

三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)に対して、治療と仕事を両立できるよう支援する制度を設けています。また、病気による休職者には、健康保険の傷病手当に加え、一定期間の所得を補償する制度も用意されています。

ダイバーシティ推進

女性管理職の比率向上

2018年から本格的にダイバーシティ推進を開始しました。女性管理職率を短期間で引き上げ、将来的には30%まで引き上げることを目標としています。この取り組みが成果を上げた背景には、社長直下でダイバーシティ推進を進めるという戦略的な判断がありました。

育児支援

子供が小学4年生になるまでは時短勤務が可能で、2歳になる前に復帰した場合は時短勤務であっても通常通りの給料を支給しています。また、子供の看護休暇は時間単位で有給休暇を使えるようになっており、柔軟な働き方を支援しています。

現代の取り組み

カンロは、伝統を大切にしながら、新しい取り組みを続けています。

カンロ飴70周年プロジェクト

2024年には、ブランドの若返りと新世代への浸透を目指す「カンロ70周年プロジェクト」が開始されました。現在の購入者層の約55%が60代以上であることから、30〜40代世代への訴求を強化しています。このプロジェクトでは、粒の大きさを約60%にした「ちいさくなったカンロ」の発売などが行われています。

新規事業

新規事業として、グローバル事業、ヒトツブ事業、デジタルコマース事業、フューチャーデザイン事業など、様々な分野の開拓を進めています。これには、米国グミ市場への参入や、EC専用商品の発売などが含まれます。

まとめ

カンロは、1912年の創業から110年以上にわたり、日本の菓子業界において独自のポジションを築いてきました。伝統的な事業を基盤としつつ、のどグミといった新しい市場を創出しました。伝統を大切にしながらも、革新を追求し、日本を代表するキャンディメーカーとして、今後も発展していくことが期待されています。

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