メロンパンとは|「メロンあり」と「メロンなし」の発祥起源

メロンパンは、パン生地の上に甘いビスケット生地を乗せて焼いた、日本発祥の菓子パンです。その名は、見た目がマスクメロンに似ていることに由来しますが、元々の製法ではメロンは使用されません。本記事では、メロンパンの謎に包まれた起源から、庶民の憧れが生んだその形、そして本物のメロンを使った革新、さらには近年の「台湾メロンパン」ブームに至るまでの進化の歴史を紐解きます。

目次

メロンパンとは

メロンパンとは、パン生地の上に、砂糖、卵、小麦粉、バターなどを混ぜて作った甘いビスケットクッキー)生地を重ねて焼き上げた、日本独自の菓子パンです。

表面のビスケット生地はサクサク、中のパン生地はふんわりと柔らかい、そんな食感のコントラストが好まれています。

表面にはマスクメロンの網目模様を模した溝がつけられることが多く、これが名前の由来となっています。

サンライズとは

関西地方の一部では、メロンパンに似たパンを「サンライズ」と呼び、メロンの果汁を加えた紡錘形のパンを「メロンパン」と呼ぶなど、地域によって定義や形状に違いが見られます。

メロンパンの発祥起源

メロンパンの正確な誕生時期や開発者については、残念ながら明確な記録が残っておらず、その起源は諸説あります。しかし、大正時代から昭和初期にかけての間に、日本で独自に考案されたというのが通説です。

従来のメロンパン(メロンなし)

一般的に「メロンパン」として知られるのは、メロンの果汁や果肉を一切使用せず、その外見だけをメロンに似せたパンです。ビスケット生地の格子模様がマスクメロンの皮の網目を彷彿とさせることが、そのアイデンティティとなっています。

メロンを模した理由

ではなぜ、実際には入っていない「メロン」を模倣する必要があったのでしょうか。その背景には、当時の日本の社会状況が深く関わっています。

かつてメロン、特にマスクメロンは、一般庶民にとっては到底手の届かない最高級の果物でした。「いつかあの甘くて高価なメロンを思いきり食べてみたい」。そんな多くの人々の強い憧れや夢を、もっとも身近な食べ物の一つであるパンで表現しようとしたのが、メロンパンの始まりであったと考えられています。

手の届かない憧れの果物を、せめてその形だけでも身近に感じたいという、ささやかでありながらも豊かな想像力が、このユニークなパンを生み出したのです。

本物のメロンを使用したメロンパン

時代は移り変わり、日本の経済は豊かになりました。メロンは依然として高級品のイメージはありますが、かつてほど雲の上の存在ではなくなり、多くの人がその味を楽しめるようになりました。

このような時代の変化を背景に、ついに「本物のメロン」を使用したメロンパンが登場します。

ビスケット生地にメロン果汁を練り込んだり、クリームにメロンの果肉を入れたりと、そのスタイルは様々ですが、これによりメロンパンは「名実ともに」メロンのパンへと進化を遂げたのです。

ルノートルのメロンパンが話題を呼んだ

この「本物のメロンを使用したメロンパン」を世に広め、高級パンとしての地位を確立した先駆けとして知られているのが、フランス・パリの名門パティスリー「ルノートル」です。

1980年代に西武百貨店池袋本店に出店したルノートルが、夕張メロンの果汁を使用したクリーム入りのメロンパンを発売したところ、大きな話題を呼びました。

日本の大衆的なパンであったメロンパンが、フランスの最高級ブランドの手によって、本物の素材を使った高級品へと昇華されたのです。

日本で生まれたユニークなパンが、海外の文化と融合して新たな価値を創造したこの出来事は、メロンパンの歴史における画期的な転換点と言えるでしょう。

メロンパンの進化

メロンパンの進化は留まることを知りません。伝統的なスタイルを守り続けるパン屋がある一方で、チョコレートチップ入り、抹茶風味、紅茶風味など、様々なバリエーションが次々と生み出されています。そして近年、新たなブームとして登場したのが「台湾メロンパン」です。

台湾メロンパンとは

「台湾メロンパン」とは、温かいメロンパンに厚切りの有塩バターを挟んだ、甘じょっぱい味わいが特徴のパンです。

正確には、このパンのルーツは台湾の「菠蘿包(ボーローポー)」に、香港でポピュラーな食べ方である「菠蘿油(ボーローヤウ)」を組み合わせたもの。

「菠蘿」はパイナップルのことで、焼き上がった表面の亀裂がパイナップルに似ていることから名付けられており、日本のメロンパンとよく似たパンです。

この甘いパンに、塩気の効いた冷たいバターを挟むことで生まれる「甘さ」と「しょっぱさ」、「温かさ」と「冷たさ」のコントラストが、多くの人々を魅了しました。

メロるとは

2018年頃からの第4次タピオカブームでは、タピオカドリンクを飲むことを「タピる」と表現するのが大流行しました。

この流れを受け、2019年頃から人気が沸騰した台湾メロンパンについても、それを食べることを「メロる」という新語で表現する若者が現れました。

この言葉の誕生は、台湾メロンパンが一過性の食べ物ではなく、社会的なトレンドとして認知されたことの証と言えます。

まとめ

メロンパンの歴史を紐解けば、高価なものへの庶民の憧れ、時代の変化、そして日本人の持つ優れた創意工夫の精神が見えてきます。

メロンが入っていないのに「メロンパン」と名付けられた日本独自のパンが、フランスの名店によって本物のメロンを使う形に進化し、さらには台湾や香港の食文化と融合して「メロる」という新たなムーブメントを生み出す。

一つのパンに込められた豊かな物語は、これからも新たな時代を映しながら、私たちを楽しませてくれることでしょう。

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