ミント味スイーツブーム|日本人に嫌われていたミント味

  • URLをコピーしました!
目次

日本ではミント味の人気は少なかった

かつて日本では、ミント味のスイーツは一部の人にしか受け入れられていない味でした。欧米では定番の味であるにもかかわらず、なぜ日本では人気が出なかったのでしょうか。この謎に包まれた状況を、あるテレビ番組が取り上げたことをきっかけに、ミント味のスイーツは突然のブームを巻き起こします。この興味深い出来事には、日本の食文化や現代社会の様子が隠されています。

そもそもミントとは

ミントは、古くから世界中で親しまれてきたハーブの一種です。その特徴は、なんといっても口にしたときに感じる快な清涼感と、スーッとした独特の刺激にあります。この感覚は、ミントに含まれる「メントール」という成分によるものです。ミントは、料理や飲み物の香りづけに使われたり、薬や香料の原料になったりと、その用途は多岐にわたります。欧米の食文化では、デザートにも自然に取り入れられ、特にチョコレートとの組み合わせは定番として広く確立されていました。

日本と欧米におけるミント味の認識の違い

ミント味のスイーツの歴史を理解するには、まず日本と欧米の食文化におけるミントの立ち位置を比較する必要があります。

欧米のミント文化

欧米、特にヨーロッパやアメリカでは、ミント味は古くから親しまれてきました。これは単なる嗜好の問題ではなく、歴史的な背景があります。欧米では、ハーブ文化が生活に深く根ざしており、ミントも料理や飲み物、そしてお菓子に自然に取り入れられてきました。デザートにおいても、チョコレートとミントの組み合わせは定番中の定番として確立されていたのです。

日本のミント文化

一方、日本の伝統的な味覚文化を考えてみると、和菓子に代表されるように、甘味は比較的単純で上品な味わいが好まれる傾向がありました。抹茶の苦味や小豆の自然な甘さなど、素材そのものの味を活かした繊細な味覚が重視されてきたのです。そうした文化的土壌において、ミントの持つ清涼感やスーッとした刺激は、どこか異質なものとして受け取られがちでした。

ミント味スイーツのブーム到来

こうした状況が長く続いていた日本市場に、ある出来事がきっかけで大きな変化が訪れました。

テレビ番組が火をつけたブーム

2017年8月、テレビ番組「マツコの知らないチョコミントの世界」が放送されました。この番組は、なぜ日本ではミント味スイーツが人気を得られないのかという疑問を取り上げ、その理由を探ろうとするものでした。しかし、メディアの影響力は時として予想を超えた展開を見せるものです。この番組が放送されると、思いがけない反響が生まれました。長年にわたってミント味を愛好してきた人々、いわば「隠れミント党」とでも呼べる人たちが、自分たちの好みが否定的に扱われることに対して反発を示したのです。これまで声を大にしてミント味への愛を語ることができなかった人々が、番組をきっかけにして堂々と自分の好みを主張するようになりました。ソーシャルメディアの普及も手伝って、こうした声は瞬く間に拡散され、一つの大きな流れを形成していったのです。

「食わず嫌い」が克服された瞬間

この動きは、既存のミント愛好者だけでなく、これまでミント味を敬遠していた人々にも影響を与えました。番組やSNSでの議論を見聞きした多くの人が、「実際はどうなのだろう」という好奇心を抱くようになりました。食わず嫌いであった人々が、改めてミント味のスイーツを試してみる機会を持つようになったのです。そして、実際に食べてみた結果、「思っていたより美味しい」「これなら好きになれる」といった好意的な反応が続出しました。これは、日本人の味覚がミント味を受け入れられないということではなく、単に慣れ親しむ機会が少なかっただけだということを示していました。

ミント味ブームを後押しした隠れた要因

ミント味ブームの背景には、テレビ番組の影響だけでなく、もう一つの重要な社会の変化が隠されていました。

チューインガム市場の低迷

近年、日本ではチューインガムを噛む習慣が減少していました。スマートフォンの普及や生活様式の変化により、口寂しさを紛らわす必要が減るなど、様々な要因が重なり、ガムの消費量が減っていたのです。これにより、多くの人にとってミントとの接点が薄れていました。しかし、これは同時に、ガムを通じた「機能的なミント体験」が減り、スイーツを通じた「楽しむミント体験」への道が開かれたことを意味していました。

市場の急拡大と新商品の登場

番組放送後、これまで限定的だったミント味商品の売上は急激に伸び始めました。アイスクリームチョコレートクッキーなど、あらゆる商品カテゴリーでミント味の商品が注目され、新製品が次々と開発されました。製菓メーカー各社も、この新たな市場の可能性に気づき、積極的に商品を投入するようになったのです。

ミント味ブームの分析

この一連の流れを振り返ると、市場分析や消費者動向の予測がいかに難しいかということがわかります。専門家による事前の分析では、日本市場におけるミント味スイーツの可能性は限定的だと考えられていました。しかし、適切なきっかけがあれば、潜在的な需要は顕在化し、大きな市場を形成することができたのです。

もちろん、こうした分析は多くの場合、現象が起きた後になされる後付けの説明という側面があります。しかし、それでも理にかなった説明として受け入れられるのは、そこに一定の論理性や整合性があるからです。現在では、ミント味のスイーツは日本の市場においても確固たる地位を築き、特に夏には欠かせない人気商品となっています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次