森永乳業の2026年中間決算|海外売上で利益増加
森永乳業の2026年3月期中間決算(2025年4月から9月までの半年間の成績)は、売上も利益も前の年より増えました。特にドイツにあるMILEI社という会社を中心に、海外での商売が計画していた目標を大きく上回る成績を出しました。営業利益と経常利益はどちらも2桁成長(10%以上の増加)を達成しています。
大貫陽一社長は11日にインターネットで開いた説明会で、今後の方針を発表しました。これから先は短い期間だけでなく、長い期間で見た成長を大事にするそうです。具体的には、成長している分野であるヨーグルトやアイスに、お金をたくさん使って工場や商品を強化していく計画です。
上半期の成績はどうだった?
| 項目 | 金額 | 前の年と比べて |
|---|---|---|
| 売上高 | 2933億円 | 0.9%増えた |
| 営業利益 | 208億円 | 18.9%増えた |
| 経常利益 | 219億円 | 27.3%増えた |
| 純利益 | 146億円 | 50.8%増えた |
売上と利益の数字
まず、森永乳業の上半期(4月から9月まで)の成績を見てみましょう。
売上高は2933億円で、前の年より0.9%増えました。0.9%というのは少しだけ増えたという意味です。でも、利益の方を見ると大きく増えています。営業利益は18.9%増え、経常利益は27.3%増え、純利益は50.8%も増えました。純利益が半分以上増えたというのは、とても良い成績です。
売上高営業利益率は7.1%でした。これは「売上100円のうち、7円10銭が利益になった」という意味です。
利益が大きく増えた理由
売上はあまり増えていないのに、なぜ利益が大きく増えたのでしょうか。その答えは「海外での商売がとても上手くいったから」です。
海外事業では49億円も利益が増えました。49億円というのは、とても大きな金額です。この利益の増加が、会社全体の成績を良くする原動力になりました。
特にドイツのMILEI社という会社の業績が素晴らしかったそうです。MILEI社は「ホエイ」という製品を作って売っています。ホエイとは、チーズを作る時に出る液体のことです。この液体にはタンパク質やミネラルがたくさん入っていて、サプリメントやスポーツ選手が飲む栄養食品の材料として使われます。今、ホエイの値段が高くなっていて(市況が良い状態)、それでMILEI社は良い成績を出せたのです。
海外で売れている商品
- 赤ちゃん用のミルク(育児用ミルク)
- サプリメント(栄養補助食品)に入れる乳酸菌
- パキスタンで売っている赤ちゃん用のミルク
MILEI社のホエイ以外にも、海外で売れている商品があります。
これらの商品がみんな順調に売れていて、海外での商売が会社全体を支えています。
日本国内の状況
一方、日本国内の商売は厳しい状況が続いています。営業利益は計画していた目標を上回りましたが、売れた商品の数や量は前の年より減ってしまいました。結果として、日本国内では利益が減ってしまいました。
なぜ売れた量が減ったのでしょうか。それは、物の値段が上がっていて(物価上昇)、お客さんがお金を使うことに慎重になっているからです。家計が厳しいので、買う商品の数を減らす人が増えているのです。
ただし、営業利益が計画を上回ったということは、商品一つあたりの値段を上げることで、売れる数が減った分をある程度カバーできたということです。また、すべての商品が売れていないわけではありません。アイスや、お店で使う業務用の乳製品は順調に売れています。ヨーグルトや牛乳も、8月以降は回復してきています。
森永乳業は1年間の予想を変更
| 項目 | 最初の予想 | 新しい予想 | 前の年と比べて |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5800億円 | 5700億円 | 1.6%増える |
| 営業利益 | 320億円 | 330億円 | 11.3%増える |
上半期の成績を見て、森永乳業は1年間(4月から翌年3月まで)の予想を変更しました。
売上高は100億円下げて5700億円にしました。これは、日本国内での厳しい状況が下半期(10月から3月まで)も続くと考えたからです。
でも、営業利益の方は10億円上げて330億円にしました。海外の商売が好調なのと、日本国内でも利益を出す力(収益性)が良くなってきているからです。つまり、売上の金額は少し減るけれど、利益はしっかり増やせるという予想になっています。
これから大事にすること
大貫社長は説明会で「それぞれの商品について、短い期間で見た対応と、長い期間で見た対応の両方を考えながら進めている」と話しました。
短い期間で見た対応というのは、今すぐの売上や利益のことです。長い期間で見た対応というのは、何年か先の成長のための準備のことです。今すぐの利益だけを考えるのではなく、将来大きく成長するための投資も大事にするという方針です。
これから先(下半期以降)は、成長している分野のヨーグルトとアイスに、たくさんのお金を使って強化していく計画です。工場を大きくしたり、新しい商品を作ったりするための投資を積極的に行います。
ヨーグルトをもっと売るための取り組み
ビヒダスの容器を新しくした
ヨーグルトは8月以降、売れ行きが回復してきています。この勢いをもっと強くするために、森永乳業はいろいろな取り組みをしています。
9月には主力商品の「ビヒダス」というヨーグルトの容器を新しくしました。この新しい容器には2つの良い点があります。
| 良い点 | 詳しい説明 |
|---|---|
| 小さくなった | 冷蔵庫に入れやすく、使いやすくなった |
| プラスチックが減った | 環境に優しくなった |
容器を小さくすることで、冷蔵庫での保管がしやすくなりました。それと同時に、プラスチックの使用量も減らせたので、地球環境にも優しくなりました。
容器を新しくしただけでなく、宣伝活動(プロモーション)も強化しています。テレビCMやお店での宣伝を増やして、より多くの人にビヒダスを知ってもらい、買ってもらおうとしています。
パルテノの工場を大きくした
「ギリシャヨーグルト パルテノ」という商品をご存知ですか。これは普通のヨーグルトより濃くて、タンパク質がたくさん入っているヨーグルトです。健康を気にする人たちに人気があります。
パルテノはとても人気があって、作っても作っても足りない状況でした。そこで森永乳業は、利根工場に約12億円をかけて、パルテノを作る設備を大きくしました。12億円というのは、とても大きな金額です。
この投資によって、パルテノをもっとたくさん作れるようになりました。お客さんが「パルテノを買いたい」と思った時に、お店に商品があるという状況を作ることができます。これで、もっと多くの人にパルテノを買ってもらえるようになります。
新しい商品「森永ラクトフェリン200」
10月には新しいヨーグルト「森永ラクトフェリン200」を発売しました。
この商品の特徴は、2つの健康効果があることです。
- 免疫機能を助ける(風邪などにかかりにくくする)
- のどの乾燥感を和らげる(のどがカラカラになるのを防ぐ)
この2つの効果は、どちらも科学的に証明されていて、パッケージに書くことが認められています(ダブルヘルスクレームと言います)。
秋や冬は風邪やインフルエンザが流行る季節です。この時期に、免疫機能を助けたり、のどを守ったりする商品は、とても需要があります。大貫社長は「森永乳業ならではの商品として、機能性ヨーグルトの新しい柱として育てていく」と話しています。
ラクトフェリンは、お母さんの母乳にたくさん入っている成分です。森永乳業は長い間この成分を研究してきたので、この分野に詳しい会社なのです。その研究の成果が、この新商品に活かされています。
アイスをもっと売るための取り組み
神戸工場に新しい機械を入れた
アイスも、日本国内で順調に売れている商品の一つです。特に夏は需要が大きくなります。森永乳業は神戸工場に新しいアイスを作る機械を入れて、もっとたくさんのアイスを作れるようにしました。
新しい機械があれば、暑い日にお客さんが「アイスを買いたい!」と思った時に、お店にちゃんと商品があるようにできます。商品が足りなくて売れないという機会を減らせるのです。
PPMという3つの主力商品
森永乳業のアイス事業を支えているのは、PPMと呼ばれる3つのブランドです。
PPMは、それぞれの商品の最初の文字を取った言葉です。
| PPMのブランド | 商品の特徴 |
|---|---|
| ピノ | 一口サイズのアイスクリーム。小さくて食べやすく、家族で分け合える |
| パルム | 棒付きのプレミアムアイスクリーム。濃厚で高級感がある味 |
| モウ | 子供向けのアイス。かわいいキャラクターが人気 |
この3つの商品は、長い間ずっと人気があって、アイス事業の基盤になっています。神戸工場の新しい機械で、これらの商品ももっとたくさん作れるようになりました。
新商品「バリッチェ」
PPMの3つに加えて、新しく「バリッチェ」という商品も売り出しています。新しい商品を出すことで、お客さんに「新しいアイスが出たんだ!食べてみよう」と思ってもらえます。
新しい商品を育てるには時間がかかります。でも、上手く育てられれば、ピノやパルムに続く4番目の柱になるかもしれません。森永乳業は、バリッチェのシェア(市場での占める割合)を増やしていく計画です。
乳酸菌を外国で売る取り組み
森永乳業には、ヨーグルトやアイス以外にも「菌体」という商品があります。
菌体とは、乳酸菌などの微生物そのもの、またはその成分のことです。これらは、他の会社がサプリメントや食品を作る時の材料として買っていきます。
この菌体の商売も順調に進んでいます。森永乳業は長い間、乳酸菌の研究をしてきたので、独自の優れた乳酸菌をたくさん持っています。
はぴねす乳酸菌を海外へ
「はぴねす乳酸菌」という森永乳業の乳酸菌を、これから海外で売っていく取り組みが始まりました。今までは日本国内で販売していましたが、これからは外国の会社にも売っていくのです。
海外では、サプリメント向けの菌体がすでに順調に売れています。健康志向の高まりとともに、世界中で良い乳酸菌への需要が増えているのです。日本の会社が持つ高品質な乳酸菌は、海外でも評価されています。
菌体の商売は、完成した商品を消費者に売るのではなく、材料として他の会社に売るビジネスです(B2Bビジネスと言います)。このビジネスの良い点は、大量に作れば作るほど効率が良くなり、安定した利益が見込めることです。
海外展開により、日本国内だけでは限界がある成長の壁を超えられます。特に健康食品市場が大きくなっている地域では、高品質な乳酸菌への需要がどんどん増えています。森永乳業の技術力と品質管理の力が、競争に勝つための強みになります。
森永乳業のこれからの計画
大貫社長が説明したように、森永乳業はそれぞれの商品について、短い期間で見た対応と長い期間で見た対応のバランスを取りながら進めています。
短い期間で見た対応
今の厳しい日本国内の状況に対応しながら、利益をしっかり出すことです。商品の値段を調整したり、商品の種類を見直したりして、売れる数が減っても利益が減らないようにします。同時に、好調な海外事業をさらに伸ばすことで、会社全体の成績を支えます。
長い期間で見た対応
成長している分野への投資を続けることです。ヨーグルトやアイスの工場に大きなお金を使ったり、新しい商品を開発したり、海外市場を開拓したりすることは、すぐには結果が出ません。でも、何年か先の成長のための土台になります。
成長する分野に集中投資
下半期以降、成長分野のヨーグルトとアイスに積極的な投資を実施していく方針は、この長い期間で見た視点に基づいています。パルテノへの12億円の投資や、神戸工場の新しい機械は、その具体的な例です。
投資をするということは、短い期間で見れば利益を減らす要因になります。でも、これらの投資によって作る力(生産能力)が高まり、お客さんの要望に応えられるようになれば、長い期間で見れば大きな利益をもたらします。今の好調な成績があるからこそ、将来に向けた投資を行う余裕があるのです。
それぞれの商品に合わせた対応
森永乳業は、すべての商品に同じ対応をするのではなく、それぞれの状況に合わせた対応をしています。
一つ一つの商品を丁寧に見ながら、最適な判断を行っていく姿勢が、今回の決算説明会での大貫社長の説明から読み取れます。
まとめ
森永乳業の2026年3月期中間決算は、海外事業の好調により増収増益を達成しました。日本国内は厳しい環境が続いていますが、ヨーグルトや牛乳の回復、アイスや業務用乳製品の順調な動きなど、明るい兆しも見えています。
1年間の予想では営業利益を上方修正しており、利益を出す力が良くなっていることがわかります。これから先は成長分野への積極的な投資を続けながら、短い期間と長い期間のバランスを取った経営を進めていく方針です。
ヨーグルトとアイスという主力商品への投資、新商品の育成、海外市場の開拓など、複数の成長の柱を持っていることが、森永乳業の強みといえます。





