おかきとあられ、何が違うの?
日本の伝統的なお菓子として親しまれているおかきとあられ。
多くの人が何気なく口にしているこれらのお菓子ですが、その違いを正確に説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。
実は、おかきとあられには明確な違いがあり、その背景には日本の歴史や文化が深く関わっています。
最大の違いは大きさ
一般的に、5センチメートル以上の大きなものが「おかき」、それより小さなものが「あられ」と呼ばれています。
どちらも同じもち米を原料としていますが、この大きさの違いは、お正月に神聖な鏡餅を割って作っていた歴史や、宮廷での特別なもてなしに使われていたという異なる起源に基づいています。
原料は同じ「もち米」
まず、一番大切なことを知っておきましょう。
おかきもあられも、同じ**「もち米」**というお米から作られています。
もち米は、お正月のお餅を作る時に使う、とても粘り気が強いお米です。
もち米とうるち米の違い
私たちがいつもご飯として食べているお米は「うるち米」といいます。
もち米とうるち米の最も大きな違いは、お米のでんぷんの成分にあります。
お米の主成分であるデンプンは、アミロースとアミロペクチンという二つの成分で構成されています。
うるち米は粘りを抑える働きをするアミロースを含んでいるのに対し、もち米はほぼ100パーセントが粘りを強くする働きのアミロペクチンでできています。
この違いが、もち米を火で焼いたときに、大きくふくらむ性質を生み出しています。
おかきとは
おかきは、もち米を主原料とする米菓の一種で、その名前は「欠きもち」に由来します。
これは、お正月に神様にお供えした鏡餅を、縁起を担いで刃物を使わずに手で割って(欠いて)作られたことに由来します。
そのため、比較的大ぶりなものが多く、庶民のおやつとして古くから親しまれてきました。
火を通すとふっくらと膨らむもち米の特性を活かした、サクサクとした軽い食感が特徴です。
あられとは
あられもまたもち米を主原料とする米菓ですが、おかきよりも小粒なのが特徴です。
その名前は、空から降ってくる小さな氷の粒である**「霰(あられ)」**に形が似ていることから名付けられました。
おかきが庶民の生活から生まれたのに対し、あられは奈良時代に宮廷で外国の使節をもてなすための高級な食べ物として扱われていた歴史があります。
小粒で食べやすく、醤油や塩、砂糖など様々な味付けで楽しめます。
名前に込められた物語
おかきとあられの名前には、それぞれおもしろい歴史があります。
おかきの名前の由来
「おかき」は、漢字で「御欠き(おかき)」と書くことがあります。
これは、お正月にお供えした鏡餅(かがみもち)を、手で**欠いて(割って)**作ったことからきています。
神様にお供えしたお餅に包丁を使うのは縁起が悪いとされていたため、手で割る習慣がありました。
この「欠きもち」に丁寧な言葉の「お」がついて、「おかき」と呼ばれるようになったのです。
あられの名前の由来
「あられ」の名前は、空から降ってくる小さな氷の粒**「霰(あられ)」**に形が似ていることから名付けられた、という説が一番有力です。
もち米を鍋で炒(いた)めたときに、跳ね上がる様子が霰に似ているから、という説もあります。
歴史と製法の違い
おかきとあられは、同じもち米から作られますが、その歴史には大きな違いがあります。
庶民のおやつ「おかき」
おかきは、お正月の鏡餅を無駄にしないように、どこの家庭でも作られていた、庶民(しょみん)のおやつでした。
硬くなったお餅を手で割って、焼いたり揚げたりするのは、昔の日本の家庭の当たり前の風景でした。
貴族の食べ物「あられ」
一方、あられは、昔の奈良時代(ならじだい)に、外国から来たお客さんをもてなすために、宮廷(きゅうてい)で作られていた、とても高級な食べ物でした。
当時は、もち米をそのまま炒って作られていたので、作るのに手間と時間がかかり、特別な人しか食べられないお菓子だったのです。
せんべいとの違い
おかきやあられは、同じ米菓であるせんべいとよく間違えられますが、一番大きな違いは、やはり原料となるお米です。
- おかき・あられ:原料はもち米。火を通すと大きくふくらみ、サクッと軽い、口の中で溶けるような食感になります。
- せんべい:原料はうるち米。火を通してもあまりふくらまず、平たくてパリッとした、硬い食感になります。
まとめ
おかきとあられは、同じもち米を使いながらも、その大きさの違いには、日本の歴史や文化が深く関係していることが分かりましたね。
おかきが庶民の知恵から生まれたのに対し、あられは宮廷の高級な食べ物だったという、対照的な歴史を持っているのです。
次にこのお菓子を食べるときは、そんな背景を思い出しながら味わってみてください。