オルファクティブ・ファミリーとは – 香水初心者向け解説

  • URLをコピーしました!

香水を選ぼうとしたとき、香水売り場に並ぶ数多くのボトルを前にして、どこから手をつけていいのかわからないという経験をされた方は多いでしょう。

この一見複雑な香水の世界には、実は音楽のジャンル分けのような体系的な分類が存在しています。

この分類システムを理解することで、香水選びが効率的になり、香水そのものをより深く理解できるようになります。

目次

オルファクティブ・ファミリーとは

複雑な香水の世界を分かりやすく分類するために生まれたのが、オルファクティブ・ファミリーという考え方です。

オルファクティブとは「嗅覚の」という意味なので、「嗅覚的な家族」と訳すことができます。

これは香水を、共通する香りの特徴や主要な成分、与える印象などによって大まかに分類したカテゴリーを指します。

オルファクティブ・ファミリーの歴史

この分類システムの歴史は1900年代初頭のフランスに遡ります。

香水産業が急速に発展する中、香水の種類が多様化し、消費者にとっても業界関係者にとっても、香水を理解し選択することが困難になってきました。

香水研究家のポール・ジェリネックが、香水を体系的に分類する試みを行ったのです。

彼は香水を7つの基本的なファミリーに分類しました。

フローラル、アンバー、シプレ、フーガー、レザー、ヘスペリデ、ヴィオレットという7つの系統です。

香水の世界は継続的に進化しているため、この分類システムも時代とともに発展してきました。

新しい合成香料の開発、天然香料の新しい抽出技術、異なる文化圏からの香りの影響、消費者の嗜好の変化などにより、分類も変化しています。

特に20世紀後半以降、化学技術の進歩により以前は不可能だった香りの再現や創造が可能になり、香水の表現力は拡大しました。

主要なオルファクティブ・ファミリー

現代では、香水業界や研究機関によって若干の違いがありますが、一般的に7つから8つの主要なファミリーが認識されています。

それぞれのファミリーの特徴を詳しく見ていきましょう。

フレッシュ系(シトラス)

フレッシュ系は、レモン、オレンジ、グレープフルーツなどの柑橘系の香りを中心とした、やかで軽やかな香りです。

香りの持続時間は比較的短いものの、つけると気分が明るくなります。

夏の暑い日や、朝のシャワーの後など、さっぱりしたいときにぴったりです。

年齢や性別を問わず、多くの人に好まれています。

フローラル系

フローラル系は、バラやジャスミン、ユリなどの花の香りを中心とした、優雅でロマンチックな香りです。

古くからある香りの分類で、女性らしい印象を与えます。

現代では、一つの花だけでなく、複数の花を組み合わせたり、他の香りと混ぜたりすることで、さらに複雑で美しい香りが作られています。

ウッディ系

ウッディ系は、木の香り(シダーウッド、サンダルウッドなど)を中心とした、落ち着きと力強さを感じさせる香りです。

伝統的に男性の香水に多いですが、最近では洗練された女性にも人気があります。

知的で信頼できる印象を与え、落ち着いた雰囲気を演出します。

オリエンタル系(アンバー)

オリエンタル系は、バニラ、スパイス、アンバーなどの温かみのある香りを中心とした、神秘的で少し甘い香りです。

香りが強く、長く続くのが特徴です。

夜の外出や特別な日に使うと、魅惑的で印象的な雰囲気をまとうことができます。

アロマティック系

アロマティック系は、ラベンダーやローズマリー、タイムなどのハーブの香りを取り入れた、自然でリラックスできる香りです。

フランスのハーブ畑にいるような、心地よいリフレッシュ感を与えます。

シプレ系

シプレ系は、オークモスという苔のような香りを土台にした、複雑で洗練された香りです。

知的で大人っぽい印象を与え、少しクールな雰囲気を楽しめます。

フーガー系

フーガー系は、フランス語で「シダ」を意味する言葉から来ており、ラベンダーやクマリンなどの清潔感のある香りを組み合わせた、男性的な香りの代表です。

上品で清潔なイメージを演出します。

グルマン系

グルマン系は、比較的新しい香りの分類で、お菓子や食べ物を思わせる甘い香りが特徴です。

バニラ、キャラメル、チョコレートなどがよく使われ、幸福感に満ちた、親しみやすい香りです。

香りのサブカテゴリー「ファセット」

オルファクティブ・ファミリーをさらに深く理解するためには、ファセットという考え方を知っておくと便利です。

ファセットとは、宝石のカットされた面のように、香りに加えることができる小さな特徴のことです。

同じファミリーの中でも、このファセットが加わることで、香りの印象が大きく変わります。

代表的なファセットの種類

パウダリー赤ちゃんのおしろいのような、柔らかく優しい香り。
グルマンチョコレートやキャラメルのような、甘くておいしそうな香り。
グリーン摘みたての葉っぱや茎のような、生き生きとした香り。
フルーティー果物のジューシーでみずみずしい香り。
マリン海辺の潮風のような、やかで清潔な香り。
アルデヒド石鹸のような、すっきりと清潔な香り。
パイシーコショウやシナモンのような、ピリッとした刺激的な香り。
ムスク温かみのある、人の肌に馴染むような香り。
バルサミック樹液や樹脂のような、少し重く甘い香り。
アニマル動物からとれる香料に似た、力強く官能的な香り。

これらのファセットを組み合わせることで、フローラル系なのにやかな「グリーン・フローラル」や、甘くて美味しそうな「グルマン・フローラル」など、たくさんの新しい香りが生まれます。

香水製作の基礎知識

オルファクティブ・ファミリーを理解するために、香水の基礎となる考え方も見ていきましょう。

調香師の仕事

香水を作る調香師は、音楽を作る作曲家と似た仕事をします。

作曲家がいろいろな音符を組み合わせて美しいメロディーを作るように、調香師も数百種類もの香りの材料(香料素材)を組み合わせて、一つの香りの作品を創造するのです。

ノートとアコード

香水作りにおいて、基本となる考え方がノートアコードです。

ノートは、バラやレモン、バニラのように、一つ一つ独立した香りのことを指します。

一方、アコードとは、複数のノートが組み合わさって、まるで一つの新しい香りが生まれたように感じる、香りの組み合わせのことです。

アコードを料理で例えると

アコードの考え方は、料理に例えると分かりやすいでしょう。

トマト、バジル、モッツァレラチーズをそれぞれ別々に食べたときと、これらを混ぜ合わせてカプレーゼにしたときでは、全く違う味わいになります。

どの材料の味も感じられるのに、それらが合わさることで、個々の味とは違う、新しいおいしさが生まれるのです。

香水アコードも同じで、元の香料の香りは感じられるのに、全体として全く新しい香りの印象を作り出すのです。

香りのピラミッド

香水は、つけた瞬間から時間が経つにつれて香りが変化します。

この変化は香りのピラミッドという三つの段階で説明されます。

トップノート

トップノートは、香水をつけた瞬間の最初の香りです。

軽やかでやかな香りが多く、およそ15分ほど香りが続きます。

これは、香水の第一印象を決める大切な香りです。

ミドルノート

ミドルノート(ハートノート)は、トップノートの後に現れる、香水の中心となる香りです。

約30分から数時間にわたって香りが続き、その香水が本当に伝えたい香りや印象を表現します。

ベースノート

ベースノートは、最後に残る、香水の土台となる香りです。

数時間から、場合によっては翌日まで肌に香りが残ることがあります。

香水全体を支え、深みと落ち着きを与えます。

香水選びに役立つ知識

オルファクティブ・ファミリーの知識は、香水を選ぶときにとても役に立ちます。

季節や時間帯で使い分ける

香りは、気温や湿度によって感じ方が変わります。

軽やかなフローラル系や、フレッシュ系がおすすめです。

新芽や花が咲くような、明るい気分になれます。

暑い時期には、やかなシトラス系やマリン系の香りがぴったりです。

重い香りは避け、涼しげな香りを選びましょう。

落ち着いたウッディ系や、少しスパイシーな香りが似合います。

読書や芸術の秋にぴったりの、知的な印象を与えます。

寒い季節には、温かいオリエンタル系やアンバー系の香りが体を包み込んでくれます。

濃厚な香水でも、冬ならちょうどよく香ります。

個人の要素も大切に

香水の香り方は、使う人の体温や肌質、生活習慣などによっても変わります。

体温が高い人は、香りが強く感じられやすいため、軽めの香水がおすすめです。

逆に、乾燥肌の人は香りが飛びやすいので、少し香りが長持ちするタイプを選ぶと良いでしょう。

香水を選ぶ際には、お店で実際に肌につけてみて、自分の肌でどう香るかを確かめることが大切です。

香りの文化の違い

香水は、国や文化によって好まれる香りが異なります。

ヨーロッパでは伝統的で複雑な香りが好まれる一方、アメリカでは明るく親しみやすい香りが人気です。

アジアでは、控えめで清潔感のある香りが好まれる傾向があります。

中東では、濃厚で力強い香水が愛されています。

こうした文化の違いを知ることも、香水を楽しむ一つの方法です。

香水をもっと楽しむために

オルファクティブ・ファミリーの知識は、香水をもっと深く楽しむための道具です。

香水のコレクション作り

異なるファミリーの香水を集めることで、様々な場面に対応できる香りのワードローブを作ることができます。

例えば、仕事用にはウッディ系、リラックスしたいときにはアロマティック系、特別な日にはオリエンタル系といった具合に、使い分けることができます。

香りを重ねる「レイヤリング」

さらに、香水をいくつか重ねて使うレイヤリングという方法もあります。

同じファミリー内の香水を重ねたり、相性の良い異なるファミリーの香水を重ねたりすることで、自分だけのオリジナルの香りを作り出すことができます。

まとめ

オルファクティブ・ファミリーは、香水選びの指針としてとても役立ちます。

しかし、これがすべてではありません。

香りはとても個人的なもので、大切なのは、知識を参考にしながらも、最終的には自分の感覚を信じることです。

香水は、単に良い香りを身につけるだけでなく、あなたの個性を表現し、日々の生活を豊かにしてくれる芸術作品です。

この知識を活かして、あなた自身の香りの旅を始めてみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次