【分かりやすい】ウラノス・エコシステムとは|経済産業省の取り組み
ウラノス・エコシステムとは
ウラノス・エコシステムは、経済産業省という国の機関が中心となって進めている、会社同士のデータのやり取りをスムーズにするための大きな取り組みです。
日本の経済や産業の発展を支えるために設けられた国の行政機関です。
国内の企業活動を促進し、雇用の安定や新しい産業の育成を進める役割を担っています。
また、エネルギー政策や貿易の推進、技術開発の支援なども行い、日本の経済が持続的に成長できるように調整を行っています。
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データ共有における現代の課題
まず、皆さんが毎日使っているインターネットのサービスを思い浮かべてください。
YouTubeで動画を見たり、LINEで友達とメッセージをやり取りしたり、Amazonで買い物をしたり。これらのサービスは、それぞれの会社が独自にシステムを作って運営しています。
これは私たち利用者にとっては便利ですが、実は会社同士がデータをやり取りする場面では大きな問題が隠れています。




たとえば
ある会社が気温のデータを「摂氏25度」という形で保存していて、別の会社が「華氏77度」という形で保存していた場合
この場合、どちらも同じ温度を表していますが、形式が違うため、そのままではコンピューターが理解できません。
人間なら「ああ、単位が違うだけだな」と気づけますが、コンピューターは言われた通りにしか動けないので、こうした違いが大きな障害になるのです。
ウラノス・エコシステムの考え方
ウラノス・エコシステムの基本的な考え方はこうです。
協調領域の情報やシステムを整備して、いろいろな会社が効率よく使えるようにしよう!
気象情報や道路情報のように、みんなが共通して使える情報は、一つにまとめて、必要な会社が自由に使えるようにすれば、同じ情報を何度も集める無駄がなくなり、みんなが同じ質の高い情報を使えるようになります。
データ共有の先にあるシステム連携
ここで大切なポイントは、単にデータを集めて配るだけではなく、会社が使っているシステム同士をつなげることです。
たとえば
- 配送会社は、配達管理システムを持っていて、どの荷物をどのトラックに載せて、どのルートで運ぶかを管理しています。
- 気象会社は、天気予測システムを持っていて、気温や風の予報を出しています。
これら①②のシステムが自動的につながって、配送会社のシステムが天気予測システムから最新の情報を受け取れたら、雨が降りそうな時は配達ルートを変更する、といった判断が素早くできるようになります。
ウラノス・エコシステムの名前の由来
ウラノス
ギリシャ神話に登場する天空の神様「ウラノス」から来ています。
空から地上を見渡すように、日本中のいろいろな産業や会社を上から俯瞰して、全体がうまくつながるようにしようという意味が込められています。
エコ・システム
元々、エコシステムという言葉は、生態系を意味します。
森の中では、植物が光合成をして、虫が植物を食べて、鳥が虫を食べて、というように、いろいろな生き物がつながって、全体として一つの生態系を作っています。
ビジネスの世界でも同じように、いろいろな会社や組織がつながって、お互いに協力したり、競争したりしながら、全体として一つの生態系を作ることができます。
ウラノス・エコシステムが目指す社会
ウラノス・エコシステムが目指しているのは、データ、システム、サービスが有機的につながって、新しい価値が次々と生まれるような、豊かな生態系を作ることです。
一つの会社が独占するのではなく、多様な会社や組織が参加して、それぞれの得意分野を活かしながら、全体として発展していく形を目指しています。
Society5.0
また、ウラノス・エコシステムの根底には、Society5.0という日本が目指す社会の姿があります。
- Society1.0
狩猟社会です。人々が狩りをして、採集をして暮らしていた時代です。
- Society2.0
農耕社会です。農業が始まって、定住するようになった時代です。
- Society3.0
工業社会です。機械を使って大量に物を作れるようになった時代です。
- Society4.0
情報社会です。コンピューターやインターネットが発達して、情報が大切になった時代です。
そして今、Society5.0という次の段階を目指しています。ウラノス・エコシステムは、このSociety5.0を実現するための具体的な取り組みの一つです。データやシステムをつなげることで、社会全体の効率を上げて、無駄を減らし、新しい価値を生み出していこうとしています。
Society 5.0は、インターネットが発達した情報社会(Society 4.0)のさらに次の社会です。
日本政府は、Society5.0を「持続可能性と強靭性(きょうじんせい)を備え、みんなが安心して暮らせて、一人ひとりが自分らしい幸せを実現できる社会」と定義しています。
データアクセスの平等化
ウラノス・エコシステムでデータやシステムが共有できるようになると、小さな会社でも大きな会社と同じ質の情報を使えるようになります。
たとえば、精密な加工技術を持つ小さな町工場があったとします。
従来なら、大企業とつながりがないと、その技術を活かす機会が限られていました。でも、データスペースで自社の技術や能力を公開できれば、いろいろな会社から声がかかるかもしれません。
ある製品の開発で、特殊な加工技術が必要になった時、データスペースを検索して、その技術を持つ町工場を見つけることができます。
このようにして新しい協力関係が生まれやすくなり、小さな会社にもチャンスが広がります。また、サプライチェーン全体でのデータ共有が進めば、中小企業も大企業と同じように環境規制に対応できるようになります。データ連携基盤を通じて必要な情報を受け取り、必要な報告をすることで、グローバルな取引にも参加しやすくなります。
ここまでの話で、大企業の取り組みのように聞こえたかもしれませんが、実は中小企業にとっても、ウラノス・エコシステムは大きな意味を持っています。
ウラノス・エコシステムの仕組み
ウラノス・エコシステムでは、具体的にどんな技術や仕組みが使われているのでしょうか。いくつかの重要な要素を見ていきましょう。
空間ID
まず、空間IDという仕組みがあります。これは少し難しく聞こえるかもしれませんが、仕組み自体はシンプルです。
- まず、日本全体の空間を、細かい立方体の箱に分けることを想像してください。
- 縦にも横にも高さにも、細かく区切って、それぞれの箱に番号を付けます。
- たとえば、東京タワーのある場所は番号123456、スカイツリーのある場所は番号234567、というように決めます。
この番号を使うと、何が便利になるでしょうか。下記のように番号を使った情報を具体的に考えてみましょう。
たとえば
- 気象会社が「番号123456の場所は気温25度、湿度60%」という情報を持っているとします。
- 別の地図会社が「番号123456の場所には高さ333メートルの建物がある」という情報を持っているとします。
- さらに別の通信会社が「番号123456の場所は電波の状態が良好」という情報を持っているとします。
これらのように同じ番号に紐づいた情報があれば、コンピューターは簡単に情報を組み合わせることができます。
つまり、これらが全て同じ位置(番号123456=東京タワー)の「気温」「湿度」「周囲の建物」「電波状態」の情報だとすぐにコンピューターが理解して、表示してくれるのです
ドローン配達の場合
考えてみてください。
車が自動で走るには、今いる場所の正確な位置情報、周りの建物や道路の形、信号や標識の位置、他の車や歩行者の動き、道路工事の情報などが必要です。
ドローンが飛ぶには、風の強さや向き、雨や霧の状態、飛んではいけない場所の情報、電波の状態などが必要です。さらに、荷物を配達するなら、どこに何をいつまでに届けるかという情報も必要になります。
これらの情報がバラバラの場所にあって、それぞれ違う方法で管理されていたら、確認するだけで時間がかかってしまいます。でも、上で説明したように同じ番号で整理されていれば、素早く確認できます。
自動運転の車やドローンのように、リアルタイムで判断しながら動くシステムでは、こうした速さが安全性に直結するのです。


もし、それぞれの会社が自分たちだけでこれらの情報を全部集めようとしたら、どうなるでしょうか。
配送会社Aも、配送会社Bも、タクシー会社Cも、それぞれが気象情報を集めて、道路情報を集めて、地図を作って、となったら、同じ情報を何度も何度も集めることになります。
これは明らかに無駄です。お金も時間もかかりますし、情報の質もバラバラになってしまいます。
ウラノス・エコシステムでは、こうした空間を分割する枠や、空間IDの構成要素、空間に関する情報などを定めて、ガイドラインとして公開しています。このガイドラインに従ってシステムを作れば、他のシステムとも自然につながるようになります。
ODS-RAM
ウラノス・エコシステムを実現するための技術的な設計図が、ODS-RAMと呼ばれるものです。
ODS-RAMは、Ouranos Ecosystem Dataspaces Reference Architecture Modelの略で、ウラノス・エコシステム・データスペーシズ・リファレンスアーキテクチャモデルという長い名前です。
少し難しい言葉なので、分解して理解しましょう。それぞれの言葉の意味は下記となります。
- リファレンス
参照
- アーキテクチャ
設計
- モデル
模型、見本
つまり、データスペースを作る時に参考にする設計の見本ということです。
データ連携における課題
ODS-RAMでは、データをやり取りする時に起きる問題を整理しています。
これらの問題は、データを使いたい側と、データを提供する側の両方から見た時に出てくるものです。
- どこにどんなデータがあるのか分からない
- データがあることは分かったけどアクセスする方法が分からない
- データの形式が会社ごとにバラバラで使えない
- データの質が良いのか判断できない
- 自分たちのデータを必要としている会社に見つけてもらえない
- データを求めている相手が信頼できるのか判断できない
- 自分たちの形式でデータを提供しても相手が使ってくれない
- データの質を保証する方法が分からない
4層構造による問題解決
ODS-RAMは、これらの問題を解決するために、システムを4つの層に分けて考えています。
層というのは、建物の階のようなもので、それぞれの層が異なる役割を持っています。
- 一番下の層
データそのものをどう扱うかを決めます。データをどんな形式で保存するか、どうやって検索できるようにするか、誰がアクセスできるかをどう管理するかなどです。この層は、データの基礎的な管理を担当します。
- その上の層
データをどうやってやり取りするかを決めます。データを送る時の通信方法、データの形式を変換する方法、セキュリティを確保する方法などです。この層は、データの流通を担当します。
- さらに上の層
どんなサービスを提供するかを決めます。カーボンフットプリントを計算するサービス、トレーサビリティを管理するサービス、在庫を最適化するサービスなど、具体的な用途に応じたサービスです。この層は、データを使った実際の業務を担当します。
- 一番上の層
全体をどう管理するかを決めます。誰がどんな役割を持つか、ルールをどう決めるか、問題が起きた時にどう対処するかなどです。この層は、エコシステム全体の運営を担当します。
このように層を分けることで、それぞれの問題を整理して、段階的に解決していくことができます。また、下の層が変わらなければ、上の層だけを変更することもできるので、柔軟性が高まります。たとえば、新しいサービスを追加したい時、下の層のデータ管理方法は変えずに、上の層に新しいサービスを追加するだけで済みます。
公益デジタルプラットフォーマー認定制度
ウラノス・エコシステムでは、公益デジタルプラットフォーマー認定制度という仕組みを作りました。
公益デジタルプラットフォーマー認定制度とは、社会全体のためのデジタルの基盤を運営する事業者を認定する制度ということです。
少し長い名前なので、一つずつ見ていきましょう。
認定制度の目的
データ連携基盤は、社会のインフラとして重要な役割を果たします。しかし、運営する事業者が信頼できなかったり、システムが安全でなかったりすると、大きな問題が起きてしまいます。そこで、一定の基準を満たした事業者を国が認定することで、安心して使える環境を整えているのです。
認定を受けるための3つの条件
この認定を受けるには、3つの大きな条件を満たす必要があります。
システムがサイバー攻撃から守られているか、データが適切に管理されているか、提供されるアプリケーションが安全に動作するか、料金が適正な範囲に設定されているかなどがチェックされます。サイバー攻撃とは、インターネットを通じてコンピューターシステムに不正に侵入したり、データを盗んだり、システムを壊したりする行為です。データ連携基盤は多くの企業の重要な情報を扱うため、高度なセキュリティ対策が必須なのです。
異なる会社のシステム同士が問題なくつながって、データをやり取りできるかということです。たとえば、A社のシステムとB社のシステムが、同じルールや形式でデータを扱っていれば、簡単につながります。でも、まったく違うルールで作られていたら、つなぐのに多くの手間がかかったり、つながらなかったりします。相互運用性を確保するために、共通のID、データモデル、インターフェースなどが定められます。
システムを運営する組織の経営が安定していて、長く続けられる見込みがあるかということです。社会の基盤となるシステムが、運営する会社が倒産したからといって突然止まってしまったら、大混乱が起きてしまいます。ですから、しっかりした財務基盤と、持続可能なビジネスモデルを持っていることが求められます。
認定制度の効果
これら3つの条件を満たした組織を国が認定することで、みんなが安心してデータをやり取りできる環境を作っています。認定されたプラットフォームを使えば、企業は安全性や信頼性を自分で確認する手間が省けます。また、認定という客観的な基準があることで、どのプラットフォームを選べばよいか判断しやすくなります。
ウラノス・エコシステム・プロジェクト認定制度
ウラノス・エコシステムには、プロジェクトを認定する制度もあります。ウラノス・エコシステム・プロジェクト制度と呼ばれるもので、2つの種類があります。
- ウラノス・エコシステム先導プロジェクト
- ウラノス・エコシステム挑戦プロジェクト
ウラノス・エコシステム先導プロジェクト
1つ目は、ウラノス・エコシステム先導プロジェクトです。
これは、すでにサービスとして実際に動いていて、参加者を募集している取り組みを指します。先導とは、先に立って導くという意味で、お手本となるようなプロジェクトということです。
現在、2つのプロジェクトが先導プロジェクトとして認定されています。
ウラノス・エコシステム挑戦プロジェクト
2つ目は、ウラノス・エコシステム挑戦プロジェクトです。
これは、将来的にサービスとして提供することを目指して、現在準備を進めている取り組みを指します。挑戦とは、新しいことに取り組むという意味です。
現在、2つのプロジェクトが挑戦プロジェクトとして認定されています。
- ・製品含有化学物質・資源循環情報プラットフォームプロジェクト
製品にどんな化学物質が含まれているかという情報を、サプライチェーン間で共有する取り組みです。
- ・自動車LCAプラットフォームプロジェクト
自動車の製造から使用、廃棄までの全過程での二酸化炭素排出量を計算する仕組みを作っています。電池だけでなく、自動車全体のライフサイクルでの環境負荷を把握しようという取り組みです。
認定制度がもたらす効果
これらのプロジェクトを優良事例として公表することで、他の業界や企業も参考にして、同じような取り組みを始めやすくなります。
認定されたプロジェクトは、ある種の品質保証を受けたことになるので、参加を検討している企業も安心して加わることができます。
また、ウラノス・エコシステムの考え方が、いろいろな分野に広がっていくことが期待されています。
ウラノス・エコシステムの実際の動き
ウラノス・エコシステムは、すでにいくつかの分野で実際に動き始めています。具体的な例を見ていきましょう。
電池トレーサビリティプロジェクト
実際に動き始めている電池のトレーサビリティの仕組みを見てみましょう。
2024年2月に、日本の自動車メーカーや電池メーカー、部品メーカーなどの業界団体が集まって、一般社団法人自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センターという組織を作りました。
この組織が作られた背景には、欧州電池規則という厳しい規制があります。
ヨーロッパで電気自動車を販売するには、電池を作る過程で出た二酸化炭素の量を正確に報告しなければなりません。しかし、電池は多くの会社が関わって作られるため、一つの会社だけでは対応できません。
そこで、業界全体で協力して対応する組織が必要になったのです。
ブロックチェーン技術の活用
一般社団法人自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センターが中心になって、電池についての情報を会社同士でやり取りできるシステムを開発し、2024年5月からサービスの提供を始めました。
このシステムは、サプライチェーンに関わるすべての会社が使えるように設計されています。
このシステムでは、ブロックチェーンという技術が使われています。
仕組みを簡単に説明すると、情報をブロックという箱に入れて、そのブロックを鎖のようにつなげていきます。
一度つながったブロックの中身を変えようとすると、その後ろにつながっているすべてのブロックを変えなければならず、実質的に不可能になります。これにより、データの改ざんを防ぎ、信頼性を確保しています。
データの暗号化による秘密保護
電池のトレーサビリティでは、このブロックチェーン技術を使って、各会社のデータを暗号化しています。
たとえば、A社が電池の材料を作った時に出た二酸化炭素の量を記録します。
この情報は暗号化されているので、A社が許可しない限り、他の会社は詳しい内容を見ることができません。でも、B社がその材料を使って電池を作る時、カーボンフットプリントの計算には使えるようになっています。つまり、秘密は守られたまま、必要な計算だけができる仕組みです。
この仕組みにより、企業は自社の機密情報を守りながら、規制対応に必要なデータ共有を実現できます。これこそが、データ主権を尊重したウラノス・エコシステムの具体的な形なのです。
初の公益デジタルプラットフォーマー認定
2024年9月には、この一般社団法人自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センターが、公益デジタルプラットフォーム運営事業者として初めて認定されました。この認定は、システムの安全性、相互運用性、事業安定性が認められたことを示しています。
電力データ提供プロジェクト
電力のデータについても、ウラノス・エコシステムの仕組みを活用した取り組みが始まっています。
皆さんの家には、電気がどのくらい使われているかを測るメーターがあります。
スマートメーターは、30分ごとに自動でデータを記録して、インターネット経由で電力会社に送ります。
日本全国には約8000万台のスマートメーターが設置されています。これだけの数のメーターから、30分ごとにデータが集まってくるのですから、その量は膨大です。
データの集約と提供
一般社団法人電力データ管理協会という組織が、これらのメーターから集まる膨大なデータを整理して、必要とする会社や組織に提供するサービスを、2025年3月から順次開始しました。
このサービスも、ウラノス・エコシステムの趣旨に合致したデータ連携の仕組みとして認定されています。
電力データの多様な活用可能性
こうした電力データは、いろいろなことに使えます。
たとえば
- ・電気使用量の把握
ある地域でいつ電気がたくさん使われるかが分かれば、電力会社は効率よく発電計画を立てられます。需要が多い時間帯に合わせて発電量を増やし、少ない時間帯には減らすことで、無駄な発電を減らせます。
- ・太陽光発電を設置している家の電気使用量の把握
太陽光発電を設置している家がどのくらい電気を作っているかが分かれば、再生可能エネルギーの普及状況を把握できます。将来、電気自動車が普及したら、いつどこで充電されているかというデータも大切になるでしょう。電力網への負荷を分散させるために、充電のタイミングを調整するような仕組みも考えられます。
プライバシー保護の重要性
ただし、こうしたデータを扱う時には、個人のプライバシーを守ることが非常に大切です。
どの家がいつ電気を使っているかという情報は、その家の生活パターンを示すものです。
朝7時に電気の使用量が増えれば起きた時間が分かり、夜10時に減れば寝る時間が分かります。長期間電気が使われていなければ、旅行に行っているかもしれません。
こうした情報が悪用されたら大変です。
空き巣が留守宅を狙ったり、個人の行動パターンが監視されたりする恐れがあります。
ですから、データを扱うシステムには、厳しい安全基準が必要になります。個人を特定できないように加工したり、アクセス権限を厳しく管理したりする仕組みが組み込まれています。
ウラノス・エコシステムの国際連携
ウラノス・エコシステムは、国内だけでなく、海外との連携も進めています。なぜなら、今の世界では、一つの製品を作るのに、たくさんの国が関わっているからです。
複雑に国境を越えてつながっているサプライチェーンでは、データのやり取りも国境を越えて行う必要があります。
もし日本のシステムとヨーロッパのシステムがつながらなかったら、データを手作業で変換したり、二重に入力したりする必要が出てきます。これでは非効率ですし、ミスも起きやすくなります。
カテナエックスの相互接続
ヨーロッパには、カテナエックスという自動車業界向けのデータスペースがすでに実際に動いています。
カテナエックス協会という組織が、共通の運用ルールや通信方式、各分野ごとのデータモデルの標準仕様などを定めて、ウェブサイトで公開しています。
相互接続実証に成功
ウラノス・エコシステムでは、このカテナエックスと日本のシステムをつなげる実験を行いました。
2025年3月、バッテリートレーサビリティプラットフォームとカテナエックスとの相互接続実証に成功したと発表されました。
この実験では、日本のシステムに登録されたデータが、カテナエックスのシステムからも参照できることを確認しました。逆に、カテナエックスのシステムに登録されたデータを、日本のシステムから参照することもできました。
システムの設計思想や技術的な基盤が異なっていても、適切なプロトコルを設計すれば相互接続できることが実証されたのです。
この成功は大きな意味を持ちます。
日本の会社がヨーロッパの会社と取引する時、それぞれが違うシステムを使っていると、データのやり取りが面倒でした。でも、ウラノス・エコシステムとカテナエックスがつながれば、スムーズにデータを共有できます。
これは、日本とヨーロッパだけでなく、世界中のデータスペースがつながっていく第一歩です。
ウラノス・エコシステムの研究開発体制
ウラノス・エコシステムの技術や仕組みを実際に開発して、ちゃんと動くか確かめるために、NEDOという組織が事業を進めています。
2025年度から、ウラノス・エコシステムの実現のためのデータ連携システム構築・実証事業という名前で、本格的な開発と実験が始まりました。
ウラノス・エコシステムの重点分野
この事業では、いくつかの重点分野が定められています。
- ・データスペースの基盤となる技術の開発
異なるシステム同士をつなげるための共通の仕組みや、誰がどのデータにアクセスできるかを管理する認証認可の仕組みなどを開発しています。
- ・産業界で実際に必要とされている分野での実証
特に、蓄電池と化学物質情報の分野が選ばれています。これらは、欧州の規制への対応が急がれている分野だからです。実際のビジネスニーズがある分野で実証を行うことで、実用的なシステムを開発できます。
採択された研究開発テーマ
2025年6月には、9つのテーマが選ばれて、それぞれの分野で研究開発が始まりました。
たとえば、NTTデータグループという会社と、一般社団法人自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センターが共同で、データスペース基盤の開発・実証・普及促進事業に取り組んでいます。
この事業では、基盤となる相互接続機能や認証認可機能などの技術開発を行うとともに、産業界の実際のニーズに即したシステムの開発・実証を進めています。また、データスペースの構築者や利用者に向けたガイドラインの作成も行われています。
オープンソース戦略
開発されたプログラムは、できるだけオープンソースソフトウェアとして公開される予定です。
もし、特定の会社だけがプログラムを持っていて、他の人が中身を見られなかったら、その会社に依存することになります。その会社がサービスをやめたら、使えなくなってしまいます。料金を高く設定されても、他に選択肢がなくなってしまいます。
でも、オープンソースにすれば、多くの人がプログラムを見て、問題があれば指摘したり、改善案を出したりできます。いろいろな会社がそのプログラムを使ったり、発展させたりすることで、より良いものに育っていきます。また、特定の企業に依存しない中立的な基盤として機能するため、多くの企業が安心して採用できます。
ウラノス・エコシステムでは、データ流通に関心のある企業や組織を広く巻き込んで、みんなで意見を出し合いながら、継続的に改善していく方針を取っています。こうすることで、データを組み合わせて生まれる新しいビジネスの市場を育てていこうとしています。
オープンソースのコミュニティでは、世界中の開発者が協力して、より良いソフトウェアを作り上げていきます。ウラノス・エコシステムも、こうしたオープンな協力の仕組みを活用することで、急速に進化する技術に対応していく予定です。
ウラノス・エコシステムの推進体制
ウラノス・エコシステムを推進しているのは、経済産業省だけではありません。
デジタル技術の世界では、変化のスピードが非常に速いため、官民が協力して機敏に動くことが必要です。たとえば、新しい技術が出てきたり、海外で新しい規制ができたりした時、すぐに対応策を考えて、技術開発を始めて、実証実験をして、実際に使えるようにするまでを、短期間で進めなければなりません。
ウラノス・エコシステムの推進体制は、こうした速さを実現するために設計されています。政策立案者、技術設計者、開発者、利用者が密に連携することで、現場のニーズを素早く政策に反映し、政策の意図を正確に技術に落とし込むことができます。
DADCが技術的な設計を担当
独立行政法人情報処理推進機構、略してIPAのデジタルアーキテクチャ・デザインセンター、略してDADCという専門組織が、技術的な設計を担当しています。
DADCには、産業界、大学、研究機関から高度な専門知識を持つ人材が集まっています。
アーキテクチャ、つまりシステムの設計を専門とする人々が、ウラノス・エコシステムの技術的な基盤を作っています。設計だけでなく、実装を支援する役割も担っています。
国、研究機関、民間企業が一体となり進めている
また、新エネルギー・産業技術総合開発機構、略してNEDOが、研究開発と実証事業を進めています。
さらに、いろいろな業界団体が協力しています。自動車業界、電池業界、化学業界、電力業界など、幅広い産業が関わっています。
この推進体制の特徴は、国、研究機関、民間企業が一体となって、政策の立案から設計、開発、実装、普及まで、一連の流れを素早く進められることです。
ウラノス・エコシステムの今後の展開
今後の展開についても、具体的な計画があります。
- ODS-RAMで示されているプロトコル、つまり通信の手順や約束事について、より詳しい仕様書が作られる予定
- また、その仕様を実際のプログラムで実現したオープンソースソフトウェアのコンポーネント、開発者が使いやすいようにまとめたソフトウェア開発キット、詳しい説明書などが順次公開される予定
ウラノス・エコシステムのガイドブックと資料
さらに、実際にシステムを作る人や、システムを使う企業の担当者に向けて、ODS構築・運用ガイドブックや、ODS導入ガイドブックといった手引書も作られる予定です。
ガイドブックには、どんな手順で進めればいいか、どんな点に注意すればいいか、よくある問題とその解決方法などが書かれます。たとえば、どんな準備が必要か、どのようにシステムを設計すればいいか、テストはどう行えばいいか、運用開始後のメンテナンスはどうすればいいかなど、実務に即した情報が提供されます。
ウラノス・エコシステムの活用が期待される分野
今後、ウラノス・エコシステムが活用される分野は、さらに広がっていく見込みです。いくつかの例を見てみましょう。
化学物質管理
化学物質管理の分野では、製品にどんな化学物質がどのくらい含まれているかという情報を、川上の化学品メーカーから川下の製品メーカーへと伝えることが考えられています。
ヨーロッパには、REACH規制という化学物質に関する厳しい規則があり、これに対応するためにはサプライチェーン全体での情報共有が必要です。製品に含まれる化学物質の情報が適切に伝わらないと、規制に違反してしまい、製品を販売できなくなる恐れがあります。
鉄道分野
鉄道の分野では、リアルタイムの列車の位置や遅れの情報を共有することが考えられています。たとえば、電車が遅れている時、乗り換えるバスやタクシーの会社にもその情報が伝われば、スムーズな連携ができます。
いろいろな交通機関のデータがつながることで、移動全体が便利になります。
- 利用者
- 乗り換えのタイミングを調整
- 混雑時に別のルートを探索
- 交通事業者側
他の交通機関の状況を見ながら運行を調整
人流データ
人の流れの分野では、携帯電話の基地局から得られる位置情報などを活用して、どこにどのくらい人がいるかを分析することが考えられています。個人が特定されないように配慮しながら、商業施設の計画や観光地の整備、交通網の改善などに役立てることができます。
たとえば
- ある観光地に人が集中しすぎている時、別の観光スポットを案内することで、混雑を分散
- 商業施設の開発では、どの地域にどんな店舗が必要かを、人の流れのデータから判断できる
スマートビル
スマートビルの分野では、監視カメラ、センサー、ロボット、ドローン、エレベーターなど、建物内のいろいろな設備からのデータを統合して活用することが考えられています。
施設の警備を効率化したり、災害時に支援が必要な人を見つけたり、混雑状況を予測したりすることができます。
たとえば、エレベーターの利用状況とイベントのスケジュールを組み合わせれば、混雑を予測して最適な運行計画を立てられます。
ウラノス・エコシステムの残された課題
もちろん、こうした大きな取り組みには、課題もあります。完璧なシステムというものは存在せず、実装や普及を進める中で、さまざまな問題に直面します。
技術的課題
技術的な課題としては、セキュリティをどう確保するか、異なるシステムをどうつなげるか、大量のデータをどう効率的に処理するかなどがあります。
セキュリティ
特にセキュリティは重要です。多くの企業の重要なデータが流れるシステムですから、サイバー攻撃から守る必要があります。暗号化や認証といった技術を適切に組み合わせて、強固なセキュリティを実現しなければなりません。また、一つのシステムが攻撃を受けても、全体に影響が広がらないような仕組みも必要です。
システム間の相互接続
異なるシステムをつなげることも技術的な挑戦です。それぞれのシステムは異なる技術で作られており、異なるデータ形式を使っています。これらをスムーズにつなげるには、標準化された通信プロトコルや、データ変換の仕組みが必要です。
大量データの処理
また、日本全国、さらには世界中のシステムがつながれば、やり取りされるデータの量は膨大になります。このデータを効率的に処理し、必要な時に素早く取り出せるようにするには、高度なデータベース技術やネットワーク技術が必要です。
制度的課題
制度的な課題としては、データの所有権や利用権をどう定めるか、個人情報をどう保護するか、国際的なルールとどう調和させるかなどがあります。
データの権利関係
データの所有権については、法律的にも複雑な問題があります。データを作った会社に権利があるのか、データの元になった情報を提供した会社にも権利があるのか、データを加工した会社はどうなのか、といった問題です。これらを明確にしないと、企業がデータを提供することをためらってしまいます。
個人情報保護
個人情報の保護も重要な課題です。特に電力データや人流データのように、個人の行動に関わる情報を扱う場合、プライバシーを守る仕組みが不可欠です。個人を特定できないように加工する技術や、データの利用目的を制限する仕組みが必要です。
国際的なルール作り
国際的なルールとの調和も課題です。ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど、地域によってデータ保護に関する考え方が異なります。日本のシステムが海外のシステムとつながる時、それぞれの国の法律を守りながら、データをやり取りする必要があります。
中小企業の参加支援に対する課題
また、すべての会社や組織が同じペースで参加できるわけではありません。大企業は資金や人材が豊富なので、新しいシステムを導入しやすいですが、中小企業や個人事業主にとっては、負担が大きく感じられるかもしれません。
導入コスト
システムを導入するには、お金がかかります。ソフトウェアを購入したり、サーバーを用意したり、社員を教育したりする費用が必要です。大企業ならこうした投資ができますが、中小企業にとっては大きな負担になります。
そうした企業でも参加しやすいように、使いやすいアプリケーションを提供したり、導入を支援したりする取り組みも必要です。たとえば、低コストで利用できるクラウドサービスを提供したり、導入のためのコンサルティングを無料で行ったり、補助金を出したりといった支援が考えられます。
人材育成に対する課題
さらに、人材の育成も大切です。データを扱う技術、システムを設計する技術、セキュリティを確保する技術など、専門的な知識を持つ人材が必要です。
デジタルスキルを持つ人材の必要性
ウラノス・エコシステムを活用するには、ある程度のデジタルスキルが必要になります。データの読み方、システムの使い方、トラブルが起きた時の対処方法などを理解している人材がいないと、せっかくのシステムも宝の持ち腐れになってしまいます。
IPAでは、デジタルスキル標準という指針を作って、人材育成や試験制度を整備しています。どのようなスキルが必要か、どのように学べばいいか、どのレベルに達しているかを評価する仕組みを作ることで、企業が必要な人材を育成しやすくしています。
ウラノス・エコシステムのこれまでの進展
ウラノス・エコシステムは、2023年4月に正式に名前が付けられて以来、着実に進展しています。比較的新しい取り組みですが、すでに具体的な成果が出始めています。
2024年の主な動き
2024年には、先行ユースケースである蓄電池のトレーサビリティシステムが実際に動き始めました。
- 5月
5月にサービス提供が開始され、自動車メーカーや電池メーカーが実際にシステムを使い始めています。これは、構想から実装、そして実際の運用まで進んだという意味で、大きな一歩です。
- 9月
また、9月には一般社団法人自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センターが、公益デジタルプラットフォーム運営事業者として初めて認定されました。認定制度そのものも実際に機能し始めたということです。
2025年の主な動き
2025年には、電力データの提供サービスも始まり、さらに多くの分野での開発が進んでいます。
- 3月
3月には電力データ管理協会がサービスを開始し、ウラノス・エコシステムの適用範囲が広がりました。
同じく3月には、バッテリートレーサビリティプラットフォームとヨーロッパのカテナエックスとの相互接続実証にも成功しています。国内だけでなく、国際的な連携も進んでいることが実証されました。
- 6月
6月には、NEDOの事業で9つのテーマが採択され、より多くの分野で研究開発が本格化しています。蓄電池や化学物質情報だけでなく、さまざまな産業分野への展開が始まっています。
このように、ウラノス・エコシステムは段階的に発展しています。まず先行ユースケースで実証を行い、そこで得られた知見を元に他の分野にも展開していく、という着実なアプローチを取っています。
ウラノス・エコシステムの将来展望
今後、5年後、10年後を考えると、ウラノス・エコシステムが社会のインフラの一部として、当たり前に使われるようになっているかもしれません。
交通・物流の利便性向上
今は自動運転やドローン配送が実証実験の段階ですが、これらが普及した時、その裏側ではウラノス・エコシステムがデータをやり取りして、安全な運行を支えているでしょう。自動運転の車が街を走り、ドローンが空を飛び、ロボットが配達をする。そんな未来が、ウラノス・エコシステムによって支えられています。
製品情報の見える化
製品を買う時、その製品がどのくらい環境に配慮して作られたかを、簡単に確認できるようになっているかもしれません。スマートフォンでバーコードを読み取れば、その製品のカーボンフットプリントや、サプライチェーンでの人権配慮の状況が表示されます。消費者は、環境や社会に配慮した製品を選ぶことができるようになります。
災害対応
災害が起きた時、被害状況が瞬時に把握され、必要な支援が素早く届けられるようになるでしょう。ドローンが被災地を調査し、自動運転の車が支援物資を運び、AIが最適な救助ルートを計算する。そのすべてが、ウラノス・エコシステムでつながったデータによって実現されます。
地方創生
過疎地域でも、自動運転の車やドローンによって、移動や物流のサービスが維持されます。お年寄りが病院に行くのも、買い物をするのも、困らなくなります。都市と地方の格差が縮まり、どこに住んでいても快適に暮らせる社会が実現するかもしれません。
ウラノス・エコシステムの取り組みの本質
この取り組みが目指しているのは、単に技術を進歩させることではありません。技術を使って、社会の課題を解決し、人々の暮らしを良くし、環境を守り、経済を成長させることです。
多様な目標の同時達成
物流の問題を解決し、災害への対応を強化し、環境を保護し、経済を成長させる。一見、矛盾するようなこれらの目標を、同時に実現しようとしています。
従来なら、経済成長のために環境を犠牲にする、あるいは環境保護のために経済成長を抑える、といった選択を迫られました。
しかし、ウラノス・エコシステムは、データとシステムの連携によって、効率を上げることで、すべての目標を同時に達成しようとしています。
無駄を省き、最適化することで、環境にも経済にも良い結果をもたらす。それがウラノス・エコシステムの目指す姿です。
共存共栄の実現
企業や組織の垣根を超えて、日本全体、そして世界とつながって、共存共栄していく未来を作ろうとしているのです。
一つの企業だけが利益を独占するのではなく、参加するすべての企業が恩恵を受けられる。大企業も中小企業も、それぞれの強みを活かして協力できる。そんなエコシステムを作ろうとしています。
ウラノス・エコシステムの発展に必要なもの
ウラノス・エコシステムは技術の進歩に合わせて、継続的に改善していく予定です。
AIや量子コンピューターなど、新しい技術が登場すれば、それらをウラノス・エコシステムにも取り入れていきます。また、サイバー攻撃の手法も進化するため、セキュリティ対策も常に更新していく必要があります。
社会のニーズも変化します。今は想像もしていないような新しいサービスが生まれるかもしれません。そうした変化にも柔軟に対応できるよう、ウラノス・エコシステムは進化し続けます。
みんながウラノス・エコシステムに関われる社会づくり
ウラノス・エコシステムは、まだ発展途上の取り組みです。これから多くの企業や組織が参加し、多くの人々が知恵を出し合って、より良いものに育てていく必要があります。
私たち一人ひとりが、こうした取り組みに関心を持ち、理解を深めていくことが、より良い社会を作る第一歩になるでしょう。
ウラノス・エコシステムは、専門家だけのものではありません。すべての人が、直接的または間接的に関わる社会の基盤です。それぞれの立場で、ウラノス・エコシステムに関わっていくことができます。
消費者として、環境に配慮した製品を選ぶ。企業で働く人として、データ連携の取り組みに参加する。
市民として、デジタル社会のあり方について考える。
みんなで、より良い未来を作るために、協力していく。
それがウラノス・エコシステムの本質であり、Society5.0という新しい社会を実現するための道筋なのです。
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