サントノーレとは
サントノーレは、フランスで古くから作られている伝統的なお菓子です。
このお菓子は、円形のパイ生地を土台にし、その上に小さなシュークリームを並べて作られます。
全体が王冠のような華やかな形状をしています。
サントノーレの見た目
土台となるのは、円形の平たいパイ生地です。
そのパイ生地の縁には、光沢のあるカラメルでコーティングされた小さなシュークリームが輪状に並べられています。
土台の中央部分には、滑らかなクリームが絞り出されています。
サントノーレの食感と風味
一口食べると、パイ生地のサクサクとした軽い食感が感じられます。
同時に、シュークリームのもちもちとした食感も味わえます。
カラメルからは、ほろ苦い風味が加わります。
サントノーレの名前の由来
サントノーレという名前の由来には、いくつかの説があります。
一つは、1846年頃にこのお菓子が考案されたパリの「サントノーレ通り」の名前から取られたという説です。
もう一つは、パンや菓子を作る職人たちの守護聖人である「聖オノレ(サントノーレ)」に敬意を表して名付けられたという説です。
サントノーレに使われるクリーム
サントノーレの中央に絞り出されるクリームには、特別な名前が付けられています。
**「クレーム・ア・サントノーレ」または「クレーム・シブースト」**と呼ばれるこのクリームは、一般的なカスタードクリームとは製法が異なります。
クリームの製法
まず、カスタードクリームにゼラチンを加えます。
次に、イタリアンメレンゲ(卵白を泡立てながら熱いシロップを加えて作るメレンゲ)を別に作ります。
最後に、冷ましたカスタードクリームとイタリアンメレンゲを混ぜ合わせます。
この製法により、軽やかで形が崩れにくいクリームができあがります。
特殊なクリームが使われる理由
この特殊なクリームが使われるようになった背景には、当時の技術的な課題がありました。
19世紀中頃は、まだ電気冷蔵庫が普及していませんでした。
そのため、お菓子を新鮮な状態で保つことが困難でした。
初期のサントノーレは、ブリオッシュ生地にホイップクリームを詰めていましたが、時間が経つと生地が水分を吸収して不安定になる問題がありました。
この問題を解決するために、水分に強いパイ生地を土台に採用し、ゼラチンを加えた形が崩れにくいクリームが開発されました。
サントノーレの作り方
サントノーレの製造は、複数の工程に分かれています。
土台とシューの準備
まず、パイ生地を丸く伸ばし、焼いている間に膨らみすぎないようフォークで穴を開けます。
その上にシュー生地をリング状に絞り出し、別に小さな丸形のシューも作って、すべてオーブンで焼き上げます。
クリームとカラメルの準備
次に、クレーム・ア・サントノーレを作ります。
カスタードクリームを作り、熱いうちにゼラチンを加えて溶かします。
別の容器でイタリアンメレンゲを作り、冷めたカスタードクリームと混ぜ合わせます。
このカラメルは高温になるため、取り扱いには注意が必要です。
仕上げ
完成したクリームの半分を土台の中央に絞り出し、残りを小さなシューに詰めます。
小さなシューを一つずつカラメルにくぐらせてコーティングします。
カラメルが固まったら、これらのシューを土台の縁に並べて完成です。
現代のサントノーレ
現代では、伝統的なレシピにアレンジを加えた様々なサントノーレが存在します。
アレンジの例
フランボワーズ、オレンジ、マロン、ピスタチオなどの風味を取り入れたバリエーションがあります。
季節のフルーツを飾ったり、複数の種類のクリームを組み合わせたりすることもあります。
土台の高さを変えて立体感を出すなど、パティシエの工夫により多様な表現が可能です。
文化的な位置づけ
フランスでは、サントノーレは特別な日のお菓子として選ばれることがあります。
その華やかな見た目から、お祝いの席や記念日などに利用されています。
日本ではまだ一般的ではありませんが、フランス菓子を扱う店舗が増えたことで、目にする機会も増えてきました。
サントノーレは、パイ、シュー、クリーム、カラメルという異なる要素が、職人の技術によって調和したお菓子です。
19世紀から現代まで受け継がれてきた製菓技術の積み重ねにより完成された、フランスの菓子文化を代表するお菓子の一つといえます。