スーパーマーケット業界の再編|商品戦略の変化

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2025年、スーパーマーケット業界は大きな転換点を迎えています。グループ再編や新規エリアへの進出が相次ぎ、これまでの勢力図が塗り替わろうとしているのです。企業名や店舗ブランドが変わるだけではありません。物価上昇と競争激化を背景に、生鮮・惣菜を中心とした商品づくりそのものが変わりつつあります。

目次

企業の統合と子会社化の動き

2025年のスーパーマーケット業界では、企業統合や子会社化といった大規模な再編が目立ちました。各社の戦略は異なるものの、既存の商圏にとどまらず全国的な視野で提携先を探す姿勢が共通しています。

トライアルによる西友の子会社化

子会社化した企業西友
進出したエリア東京都を中心とした首都圏
導入した商品トライアル独自PB、惣菜
新しい業態トライアルGO(小型店)
店舗を変えた事例トライアル西友花小金井店(2025年11月末)

トライアルホールディングスは西友を傘下に収め、首都圏での展開を本格的に始めました。既存の西友店舗にトライアルの独自プライベートブランドや惣菜を導入するだけでなく、小型業態の出店も始めています。

この小型店では西友の既存店を供給基地として活用し、惣菜を品揃えの柱に据えました。花小金井店では多層階の西友店舗を刷新する試みが形になりました。

精肉売場では転換前には行っていなかったインストア加工を導入しました。塊肉などを陳列して売場にインパクトを出しています。

ユナイテッド・スーパーマーケットによる統合

項目統合前統合後
マックスバリュ関東の売上高400億円台2000億円台
グループ全体の売上高1兆円未満1兆円超
統合される企業ダイエーの関東事業、イオンマーケット

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスは、傘下のマックスバリュ関東にダイエーの関東事業とイオンマーケットを統合します。この統合によりマックスバリュ関東の売上高は一気に5倍規模に跳ね上がる見通しです。

ヤオコーによる持ち株会社の設立

新しいグループ名ブルーゾーンホールディングス
中心となる企業ヤオコー(関東)
傘下に加えた企業文化堂(関東)、デライトホールディングス(東海)
グループの方針個社ごとに地域で存在感を高める

ヤオコーは持ち株会社体制に移行してブルーゾーンホールディングスとなり、関東エリアの文化堂と東海エリアのデライトホールディングスを傘下に加えました。関東から離れた東海エリアの企業を獲得したのは、エリア拡大の新しい局面を示しています。

グループ方針としては個社ごとにそれぞれの地域で存在感を高めるというスタンスを維持しています。全国統一のブランドや運営方式を押し付けるのではなく、地域特性を活かした経営を続ける考えです。

その他の企業による動き

ヨーク・ホールディングススーパーマーケット事業を中核に再スタート
イトーヨーカ堂首都圏でのドミナント強化を志向
ヨークベニマル関東エリアでの拡大を検討課題とする
アークス2033年2月期の売上高1兆円に向けM&A戦略を位置付け
ライフコーポレーション成長戦略としてのM&Aに言及

ヨーク・ホールディングスは、スーパーマーケット事業を中核に再スタートを切りました。傘下のイトーヨーカ堂は首都圏でのドミナント強化を志向し、ヨークベニマルは関東エリアでの拡大を検討課題としています。

アークスは2033年2月期の売上高1兆円に向け、M&A戦略を成長の柱の一つと位置付けています。ライフコーポレーションの岩崎高治社長も、成長戦略としてのM&Aに言及しています。

売上高による順位の変化

売上高の規模で見ると、スーパーマーケット業界の上位構造は急速に変化しています。

首位グループの売上高の推移

2024年度のトップ8000億円台
近い将来のトップ(予測)1兆円台
2020年度の10位ライン4000億円台
2024年度の20位ライン4000億円台

2024年度の首位争いは8000億円台で行われていました。しかし、これまで見てきた再編の動きを考えると、遠からず1兆円台で競うことになる見通しです。

2020年度なら4000億円台でトップ10入りできていましたが、今では20位に入るかどうかのラインに変わっています。わずか4年でランキングに入る基準が大きく変わったことになります。

企業規模が大きくなるスピード

上位チェーンの巨大化ペースは加速しています。M&Aだけでなく、自力出店や既存店の売上増により、2020年代初頭のコロナ禍からインフレ局面にかけて高い成長率を持続した企業は少なくありません。

売上を伸ばす上位チェーンは当然ながら新規出店を進めています。既存エリア内のドミナント強化や隣接地域への拡大だけでなく、成長機会を求めて人口の多いエリアにジャンプするケースも出ています。

新しいエリアへの出店

売上を拡大する企業は、既存商圏にとどまらず新しいエリアへ出店しています。人口密集地での存在感を高める動きが目立ちます。

オーケーによる関西への出店

時期出店状況
1号店開設関西エリアへの初進出
1年後大阪・兵庫に6店開設
2026年中(予定)13店体制へ

オーケーは首都圏に続く展開エリアを関西に定めました。1号店から丸1年で大阪・兵庫に6店を開設し、2026年中には13店となるところまで公表しています。

オーケーの関西戦略は、進出前から関西チェーンの再編につながりました。そうして誕生した関西フードマーケットは、2026年4月にイズミヤ・阪急オアシスと関西スーパーマーケットが統合して再スタートを切ります。

OICグループによる多エリアへの出店

傘下の企業ロピア
2025年に進出したエリア新潟、群馬、長野
新潟での方式フランチャイズ契約を活用
2025年11月末時点の展開22都道府県

OICグループはロピアを傘下に持つ企業で、2025年に新潟、群馬、長野に進出しました。新潟ではフランチャイズ契約を活用しています。2025年11月末時点で国内の店舗展開は22都道府県に広がりました。

バローによる関東・関西への出店

エリア売上目標主な動き
関東500億円バロー横浜下永谷店開設(2025年11月)
関西1000億円次のターゲットとして掲げる

バローホールディングスは2025年11月にバロー横浜下永谷店を開設し、関東500億円構想に向けた動きを本格化させました。関西では次のターゲットとして1000億円構想を掲げるなど、人口密集エリアで存在感を高めつつあります。

有力チェーンの進出は、次第に地域の勢力図を変えていきます。競合環境が厳しくなる地域では、既存チェーン同士の統合や提携が進む可能性もあります。

目的地として選ばれる店づくり

スーパーマーケットの商品・売場づくりにおいて、現在の方向性は「目的来店型」です。他店を越えても目的地として選んでもらえるような店を目指す動きが広がっています。

わざわざ行きたい店を目指す考え方

バローのデスティネーション・ストア戦略が、このトレンドを象徴しています。デスティネーションとは目的地のことで、わざわざ足を運んでもらえる店づくりを意味します。

バローの場合、バローホールディングス傘下のタチヤ出身の森克幸社長の下、生鮮・惣菜の期待感を高める「尖った売場」を追求してきました。横浜下永谷店でも、鮮魚売場には発泡スチロールのトロ箱を積み上げ、貝は生けすで展開し、売場に排水溝まで設けて魚を魅せる売場を作っています。

見た目で印象を与える商品づくり

「魅せる」演出は、多くのチェーンが志向する方向性でもあります。売場づくりで魅せるだけでなく、商品そのものが見栄えを意識しています。

大きなサイズのパックの増加

商品の特徴大容量パック
陳列時の効果印象的な見た目
価格の見せ方ユニット単価で値頃感を出す
売場の変化平型冷蔵ケースを増設
想定する利用方法車での持ち帰り

陳列した際に印象的な大容量パックでの商品化が増えています。ユニット単価で値頃感を打ち出す手法でもあり、通常タイプのスーパーマーケットを含め、生鮮のトレンドになっています。

大容量パックを魅せるために、最近の新店では鮮魚や精肉売場で平型冷蔵ケースを増設する傾向も見られます。

立地による違い

大容量パックは、基本的に車利用での持ち帰りを前提としたものです。立地特性によってはこのトレンドに合わない店舗もあるでしょう。それでも、異業種を含めた競合の中で自店を選んでもらうため、スーパーマーケットならではの生鮮・惣菜でインパクトを強める必要はあります。

生鮮食品売場の変化

生鮮強化で広域からの集客を図る場合、以前なら鮮魚部門がそのポイントとされてきました。その位置付けは今も変わりませんが、加えて精肉部門も同様の役割を担って売場強化が図られています。

鮮魚と精肉の売上の比較

部門売上構成比(2024年度)
水産(鮮魚)8.4%
畜産(精肉)11.2%(水産より34%高い)

日本スーパーマーケット協会、全国スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会の3団体の統計によると、2024年度の売上に占める水産の割合は8.4%、対して畜産は11.2%です。売上高で比べれば、畜産の方が34%も高くなっています。

消費量の差は明らかで、商圏拡大策としても精肉の充実は欠かせません。

マミーマートによる精肉の専門性の向上

業態名生鮮市場TOP!
過去の取り組みラム肉のカテゴリー育成
今期の取り組み生牛タンのカテゴリー展開
生牛タンの特徴加工段階で一度も凍結していない
その他の商品開発味付け肉(鶏肉、モツ)

マミーマートは生鮮市場TOP!業態で精肉の専門性を磨いています。ラム肉のカテゴリー育成で成果を上げた後、今期は牛タンを加工段階で一度も凍結していない「生牛タン」としてカテゴリー展開を本格化しました。

また、味付け肉も鶏肉やモツに商品開発を広げています。

イオンによる精肉売場の強化

売場名ミートパーク
導入店舗イオンスタイル伊丹
売場の特徴精肉のインストア加工比率を大幅に高める
陳列方法平型ケースを増設して大容量パックを並べる
他店への展開イオンスタイル市川コルトンプラザでも要素を取り入れる

イオンリテールは強化型の精肉売場「ミートパーク」をイオンスタイル伊丹に導入しました。精肉のインストア加工比率を大幅に高め、平型ケースを増設して大容量パックを並べます。

イオンスタイル市川コルトンプラザでは、ミートパークとは違うとしながらも、そこで展開する商品や売場づくり、店内加工オペレーションといった要素を取り入れています。

マルエツによる売場の拡大

店舗名BLiX茅ヶ崎店
店舗の位置付け500坪(1650平方メートル)型の次世代モデル
売場の変化鮮魚・精肉売場を拡大
陳列方法平型ケースで魅せる商品づくり
精肉の仕入れブランド牛を一頭買いして品揃えの幅を広げる

マルエツは500坪(1650平方メートル)型の次世代モデルと位置付けるBLiX茅ヶ崎店で、鮮魚・精肉売場を拡大し、平型ケースで魅せる商品づくりに取り組んでいます。精肉はブランド牛を一頭買いして品揃えの幅を広げます。

惣菜の名物商品づくり

目的来店型の店舗が目指す惣菜の開発テーマは、店の名物商品を作ることです。

店内で焼くピザの展開

企業名展開状況
マミーマート生鮮市場TOP!で展開、オープン時に品出しが間に合わない状況も
複数のチェーン店の名物商品として位置付け

店内焼成ピザは、複数のチェーンで名物商品の役割を担っています。マミーマートの生鮮市場TOP!では、オープン時にピザの品出しが間に合わない状況も目にします。

トライアルによるメニューの開発

代表的な商品ロースかつ重
位置付け西友店舗や新業態の主力商品
特徴自社開発のオリジナルメニュー

トライアルホールディングスは「ロースかつ重」をはじめとする自社開発のオリジナルメニューを、西友店舗や新業態の主力商品と位置付けています。

中食や外食との競争

競合の範囲中食や外食も含む
高価格帯の挑戦専門店のニーズ獲得を狙う
従来価格帯の維持商品化の工夫により可能
売上拡大のポイント来店動機となる強い単品を増やす

惣菜部門は、中食や外食も食シーンを取り合う競合ととらえています。幅広いカテゴリーを扱えるスーパーマーケットにとってはやりがいのある部門で、専門店のニーズ獲得を狙い高価格帯へのチャレンジにも意欲的です。

価格帯のバリエーション

一方、コメなど原材料価格が上昇する中でも、商品化の工夫により従来の価格帯を維持する余地もあります。価格帯や品揃えのバリエーションが広がる惣菜部門では、来店動機となるような強い単品を増やしていくことが売上を一段と伸ばすために必要です。

広域商圏への対応

目的来店型の商品戦略は、競合を超えても来店してもらえることを目指すため、必然的に広域商圏に対応した商品開発が多くなります。

ブランド商品と自社商品の動き

目的来店型の店づくりにおいて、メーカーのブランド商品(ナショナルブランド)の品揃えは価格で勝負する以外に、他店を越えて来店してもらう方法がありません。

ブランド商品の絞り込み

商品の絞り込み売場管理のオペレーションコスト削減
1品当たりの販売数量増加仕入れ条件の改善
日配やグロサリーでの価格訴求広域型店舗での競争力確保

広域型の店舗の場合、日配やグロサリーでは必然的に価格訴求が必要になります。売場管理のオペレーションコストを抑えるために、商品を絞り込む動きも見られます。

品揃えを集約して1品当たりの販売数量を増やし、仕入れ条件の改善につなげたいという意図もあります。

自社商品の拡大

拡大傾向にある商品プライベートブランド、留め型
差別化の効果競合店にない商品が来店動機になる
粗利確保の効果利益率を高められる
課題魅力のある商品を充実させることは容易ではない

プライベートブランドや留め型は拡大の傾向にあります。競合店にないプライベートブランドが来店動機になるのであれば、差別化としても粗利確保の上でも利点があります。

ブランド商品の競争環境

魅力のあるプライベートブランドを充実させることも容易ではありませんが、小売チェーンにとっては取り組む価値のある挑戦です。売場ではプライベートブランド傾斜が進んでおり、棚を確保するナショナルブランドの競争環境は厳しさを増しています。

まとめ

スーパーマーケット業界は2025年を転換点として、企業再編と商品戦略の両面で変わろうとしています。M&Aによる規模拡大と新規エリアへの進出が進み、業界ランキングは1兆円台での競争に突入する見通しです。

店舗づくりでは「目的来店型」が方向性となり、生鮮・惣菜で顧客を引きつけるインパクトを重視するようになりました。鮮魚に加えて精肉の強化が進み、大容量パックや平型ケースを活用した魅せる売場が広がっています。惣菜では店の名物商品づくりが開発テーマとなり、中食や外食との競争を意識した品揃えが進んでいます。

ナショナルブランドは集約の傾向にある一方、プライベートブランドは拡大しています。棚の競争環境は厳しさを増しており、各社は差別化と粗利確保の両立を目指しています。

物価上昇と競争激化の中で、スーパーマーケット各社は生き残りをかけて戦略を磨いています。この先も業界の勢力図は変わり続けるでしょう。

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