タピオカドリンクといえば、黒くてもちもちの大きな粒が入った「タピオカミルクティー」を思い浮かべる人が多いでしょう。
ですが、タピオカが日本で人気になったのは、実は今から30年以上前の1990年代。
そのとき話題になったのは、今とはちがう「タピオカココナッツミルク」でした。
当時のブームを支えたこのドリンクには、どんな魅力があったのでしょうか?
その特徴や時代のようすを見ていきましょう。
タピオカココナッツミルクとは
タピオカココナッツミルクは、甘く味つけしたココナッツミルクに、小さな白いタピオカを入れたドリンクです。冷たくてやさしい甘さが特徴で、デザートのように楽しまれていました。
今人気のタピオカミルクティーに入っているのは黒くて大きなタピオカですが、1990年代のタピオカは「白くて小さい粒」でした。見た目も食感もまったくちがっていたのです。
そもそも『タピオカ』って何?
タピオカは「キャッサバ」という植物の根っこから作られます。
キャッサバは南米やアジアなどで育てられているいもに似た植物です。
このキャッサバから取り出したでんぷんを小さな粒に丸めて加熱したものが「タピオカパール」と呼ばれます。
1990年代のタピオカは白くてやわらかく、つるんとした食感が新鮮でした。
1990年代のタピオカ (タピオカパール) | 白 | 小さい | つるんとやわらかい |
---|---|---|---|
現在主流のタピオカ | 黒 | 大きい | もちもち |
もう一つの主役『ココナッツミルク』
タピオカココナッツミルクのもう一つの主役は「ココナッツミルク」です。ココナッツミルクは、ココナッツの実の中にある白い果肉をすりおろし、水といっしょにしぼって作ります。
このミルクは、自然な甘みとクリーミーな口当たりが特徴。クセのないタピオカパールとぴったり合って、やさしい味のデザートドリンクになりました。
当時は、ココナッツミルクに砂糖などを加えて甘さを調整し、冷やして提供するのが定番でした。
日本におけるタピオカブームのはじまり
日本でのタピオカ人気は、実は1990年代初頭に既に兆しを見せていました。
1992年に「タピオカココナッツミルク」が登場し、多くの人の注目を集めます。
この年が、後に「第一次タピオカブーム」と呼ばれる時代の幕開けとされています。
1990年代初頭の食文化背景
当時の日本では、海外の料理や食材が大きな話題となっていました。
特にアジアの味を楽しむ動きが活発で、いわゆる「エスニック料理ブーム」の真っ最中。
タピオカココナッツミルクも、その流れに乗って日本に紹介されたのです。
東南アジアで古くから親しまれてきたデザートが、新しい食体験として日本の消費者に受け入れられました。
タピオカココナッツミルクのブームは短い
1990年 | ティラミス(イタリア発祥) | コーヒーのほろ苦さとチーズの甘みが人気 |
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1991年 | クレーム・ブリュレ(フランス発祥) | キャラメリゼされた砂糖の食感が新鮮 |
1992年 | チェリーパイ(アメリカ発祥) タピオカココナッツミルク | 甘酸っぱい味わいで支持多数 タピオカは同年に市場に登場 |
1993年 | ナタデココ(フィリピン産) パンナコッタ(イタリア発祥) | ナタデココは独特の歯ごたえが人気 パンナコッタはとろける食感で注目 |
1990年代前半は、多くの新しいスイーツが次々と登場し、まさに「スイーツ戦国時代」と呼べる時代。
消費者の関心は毎年変わり、次々と新しいデザートがブームとなります。流行が短期間で入れ替わる特徴がありました。
さて、このような激しいスイーツ競争の中で登場したタピオカココナッツミルク。
やはり多くの注目を持続させることが難しく、ほかのスイーツと比べてみても爆発的なヒットにはつながりませんでした。
消費者の興味が次々と新しいものへ移ってしまい、人気は短期間で終わってしまいます。
1992年のこのブームは、多くの日本人にタピオカという食材を知ってもらう大切なきっかけとなりました。
独特のもちもちとした食感や名前が人々の記憶に残り、後の大規模なブームへとつながる土台を築いたのです。