アロエブームとは|ブームを起こした人物と方法

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アロエブームとは

1990年代中頃、日本では「アロエブーム」と呼ばれる一大健康食品ブームが巻き起こりました。きっかけとなったのは、1995年ごろから登場したアロエ入りのドリンクやヨーグルト、ゼリーなどの食品です。これらの商品は、スーパーやコンビニの棚を埋め尽くし、瞬く間に全国に浸透していきました。

その背景には、消費者の健康志向の高まりがありました。脂っこい食事や運動不足が話題となる中、「体に良い成分を摂りたい」というニーズが拡大していたのです。アロエはそのイメージにぴったり合致し、まさに時代の流れに乗った形で社会現象的な人気を博しました。

アロエとは

アロエとは、ツルボラン亜科アロエ属に分類される多肉植物の総称です。世界には約500種類以上が存在し、主にアフリカ大陸やマダガスカル、アラビア半島の乾燥地域に自生しています。

アロエの大きな特徴は、葉が肉厚で水分をたっぷりと含んでいることです。葉の縁には小さなトゲが並んでおり、これは外敵から身を守るための自然な進化と考えられています。また、アロエの葉の中には「ゲル状」の透明なゼリーがあり、この部分に多くの有用成分が含まれています。

このゲルには保湿・消炎作用があり、皮膚への塗布や飲用として古くから利用されてきました。

アロエの歴史

アロエの歴史は数千年におよび、人類との関わりも非常に深いものです。最も古い記録では、古代エジプトの時代にまでさかのぼります。エジプトではアロエが「不老不死の植物」と呼ばれ、女王クレオパトラも美容のために使用していたと伝えられています。

古代ギリシャやローマでは、アロエが傷の治療や胃腸の不調に効く薬草として重宝されていました。アレクサンダー大王は、軍の医薬品としてアロエを携帯していたという逸話も残されています。

また、東洋でもアロエは長い間、薬草として用いられてきました。中国の明代に編纂された『本草綱目』には、アロエが「蘆薈(ろかい)」の名で登場し、皮膚病や胃腸疾患の治療に効果があると記載されています。

日本におけるアロエの活躍

日本では、江戸時代からアロエが薬草として親しまれてきました。特にキダチアロエは「医者いらず」という別名で呼ばれ、民間療法として多くの家庭で栽培されていました。

葉の汁を飲めば便秘や胃の不調に効くとされ、切り傷や火傷には葉をそのまま当てて治療に使われました。このように、アロエは日本人の生活の中に深く根付いた存在だったのです。

戦後になると、アロエの外用効果が再評価され、美容クリームや軟膏としての活用が進みました。そして1990年代には、食品としての可能性が大きく広がっていきます。

日本で使用されている主なアロエの種類

キダチアロエ日本の家庭で広く栽培されてきた品種。「医者いらず」とも呼ばれる。外用・内服の両方に利用される。茎が木のように立つのが特徴。
アロエベラ食品や化粧品に多く使われる品種。葉が大きく、ゲル状の部分が多い。苦味が少ないため、加工しやすい。

日本国内で一般的に使われているアロエには、主に上記の2種類があります。

とくに食品業界で使われるのはアロエベラが主流です。大量栽培が可能で、味も比較的マイルドなため、ドリンクやゼリーなどへの加工に適しています。

アロエブームを起こした人物とは?(市島章三)

市島章三(いちじま しょうぞう)氏は、1990年代に食品業界で数々のヒット商品を生み出した名プロデューサーです。1993年には「ナタデココブーム」を仕掛け、日本中に旋風を巻き起こしました。

その成功の後、彼が次に着目したのが「アロエ」でした。当時まだ一般にはそれほど知られていなかったアロエを、現代的な商品に昇華させるという挑戦に取り組んだのです。

彼の優れたマーケティング感覚と食品開発への情熱が、のちに「アロエブーム」という一大現象を生み出す原動力となりました。

アロエブームを起こした方法(食品に昇華)

市島氏がアロエを単なる「健康植物」としてではなく、魅力的な「食品商品」として昇華させた点が、ブーム成功のカギでした。

アロエには元々味も香りもほとんどなく、食品としてそのまま提供しても消費者には響きません。そこで、市島氏はアロエに“甘酸っぱい味”と“さわやかな香り”を加えることにしました。これには、果汁や香料をバランス良くブレンドする高度な技術が用いられました。

この工夫により、アロエ独自の健康イメージを損なうことなく、飲みやすく親しみやすい商品に仕上がったのです。

また、アロエ入りヨーグルトやゼリーといった、日常的に手に取りやすい食品に加工することで、消費者層の拡大に成功しました。さらに、テレビCMなどを駆使して「アロエ=健康で美味しい」というイメージを広め、商品の認知度と信頼性を高めていったのです。

アロエの現在の人気

アロエブームの最盛期は1990年代でしたが、その後もアロエは健康食品や美容製品の素材として一定の人気を維持しています。

スキンケア分野では、アロエの保湿・鎮静効果を活かしたローションやクリームが広く使用され、肌トラブルのケアに役立っています。

健康食品としてはアロエドリンクやサプリメント、ヨーグルトなどが販売され、消化促進や免疫力向上を目的とした商品が支持されています。

化学成分を避けたい消費者の間では、アロエを活用した自然派製品が注目されており、ナチュラル志向の市場で根強い人気を誇っています。

一時のブームほどの爆発的な流行はないものの、「体に良い成分」としてのアロエの地位は確立されており、今後も多様な形で活用され続けるでしょう。

まとめ

1990年代に日本で巻き起こった「アロエブーム」は、健康志向の高まりとともに、アロエ入りの食品が広く普及したことで社会現象となりました。アロエは古代エジプトやギリシャ・ローマ時代から薬草として利用され、日本でも江戸時代から「医者いらず」として親しまれてきました。特に食品業界では、市島章三氏のマーケティング戦略により、アロエが飲みやすく加工され、ヨーグルトやゼリーなどの形で広く受け入れられました。現在ではブームほどの勢いはないものの、スキンケアや健康食品の分野で根強い人気を維持し、自然派志向の消費者にも支持されています。アロエは「体に良い成分」としての地位を確立し、今後も多様な形で活用され続けるでしょう。

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