【2024年~2025年】カカオショックとチョコレート市場の変化

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チョコレート市場が歴史的な転換期を迎えています。カカオ豆の価格が過去最高水準まで高騰し、「カカオショック」と呼ばれる事態が2024年から2025年にかけて続いているのです。この影響で、高カカオチョコレートが苦戦する一方、チョコレートコーティングされたビスケットなど周辺商品が活況を呈しています。市場全体では価格改定により金額は成長したものの、販売数量は減少するという複雑な状況が生まれています。

目次

カカオショックの実態

カカオ豆の価格推移

時期価格(1トンあたり)備考
2023年1月約2,620ドル通常価格帯
2024年4月約9,877ドル過去最高値を記録
2025年1月約10,709ドルさらに記録更新
2025年12月約5,780ドル一時下落も通常の2倍

カカオ豆の国際価格は、2023年後半から急激に上昇し始めました。国際ココア機関(ICCO)のデータによると、2022年までは1トンあたり2,000ドル台で安定していた価格が、2024年には9,000ドルを超える事態となったのです。

2025年に入ってからはさらに価格が上昇し、1月には1トンあたり10,709ドルという過去最高値を記録しました。これは数年前の約4倍という水準です。その後、2025年下半期には価格が下落し始めましたが、それでも12月時点で約5,780ドルと、カカオショック前の2倍近い水準にとどまっています。

カカオ豆が高騰した理由

カカオ豆の価格高騰は、複数の要因が重なって発生しました。世界のカカオ生産の約7割を占める西アフリカ、特にコートジボワールとガーナでの異常気象が大きな要因です。

2023年から2024年にかけて、この地域では干ばつと大雨が交互に襲いました。降雨量が例年より40%以上増加した時期があった一方で、一部地域では深刻な干ばつが発生し、カカオの木が弱体化したのです。

さらに、「スウェリングシュート病」と呼ばれるウイルス感染症がアブラムシを媒介として広がり、感染した木は数年のうちに枯死してしまいました。コートジボワールの2023/2024収穫年度の生産量は、異常気象の影響で前年比25%減少したと報告されています。

カカオ農家が抱える構造的問題

カカオ栽培の利益は小さく、農家が手にする生産者価格は末端価格の6%程度といわれています。カカオの木の老化で収穫量が継続的に落ち込んでおり、植え替えや生産の効率化が求められている中、低収入と貧困のために農家には十分な投資をする余裕がありません。

ガーナのカカオ農家を対象にした調査では、約70%がカカオ以外の作物栽培を考え、約44%が農業以外の仕事を考えていることが明らかになりました。収益性の高い天然ゴムへの転作や、後継者不足も深刻化しているのです。

木を植え替えたとしても、カカオが実をつけるようになるには4~6年かかります。このため、短期間での生産回復は難しい状況となっています。

2024年のチョコレート市場

市場全体の動向

指標数値前年比データ元
小売金額6,312億円+4.5%全日本菓子協会
生産数量23万1,477トン-3.6%全日本菓子協会
販売金額4,374億円+5.6%インテージSRI+

全日本菓子協会によると、2024年のチョコレート市場は小売金額で前年比4.5%増の6,312億円となりました。一方で、生産数量は3.6%減の23万1,477トンとなっています。金額が伸びる一方で数量が減るという、一見矛盾した動きが起きているのです。

この現象は、価格改定により単価が上昇したことで金額は成長したものの、値頃感を失ったことで販売数量は減少したためです。インテージSRI+のデータでも、2024年の販売金額は5.6%増の4,374億円を記録しており、市場全体として価格主導の成長となっていることが確認できます。

高カカオチョコレートの失速

時期高カカオ販売金額前年比
2024年通年312億円+14.2%
2025年1-10月244億円-5.2%

2024年の高カカオチョコレート市場は、当初14.2%増の312億円に達し、チョコレート市場全体を牽引していました。しかし、2024年6月以降に失速し始めたのです。

この背景には、コストプッシュによるさらなる価格改定が実施されたことがあります。高カカオチョコレートや無垢チョコレートは、カカオ原料の使用比率が高く、植物油脂での代替が難しいため、カカオ豆高騰の影響をもろに受けやすいカテゴリです。

インテージの市場アナリストである木地利光氏は「急激な値上げにより割高感から買い控えが起き販売が大きく落ち込んでいることがうかがえる」と分析しています。2025年1月から10月のデータでは、高カカオは5.2%減の244億円と落ち込む結果となりました。

チョコレート周辺商品の活況

カカオ使用量を抑えた商品の台頭

高カカオチョコレートが苦戦する一方で、カカオ原料の一部を植物油脂で代替するなどしてカカオマスとココアバターの使用量を抑えた商品が注目を集めました。チョコレートがけのビスケットなど、チョコレート周辺カテゴリが活性化したのです。

インテージSRI+によると、2025年1月から10月のチョコレート販売金額は8.1%増の3,779億円でした。カテゴリ別では、高カカオが5.2%減の244億円と落ち込む反面、高カカオ以外は9.1%増の3,535億円と拡大しています。

ビスケット&クラッカー市場の成長

商品カテゴリ2024年販売金額前年比
ビスケット&クラッカー全体2,662億円+6.1%
チョココンビ490億円+2.2%(2019年比36.5%増)

ビスケットチョコレートをコーティングしたチョココンビも拡大傾向にあります。2024年のチョココンビ販売金額は、2019年比36.5%増、前年比2.2%増の490億円となりました。

ビスケット&クラッカー全体の販売金額は近年右肩上がりで成長しており、2024年は前年比6.1%増の2,662億円を記録しています。2025年1月から10月には9.6%増の2,374億円となり、成長が加速しているのです。

成長を牽引した商品カテゴリ

2025年1-10月の主要カテゴリ前年比
ビスケット&クラッカー全体+9.6%(2,374億円)
チョココンビ+11.8%
サンドビスケット+14.0%
パイ+12.5%
マキセン+29.0%

2025年1月から10月のカテゴリ別では、チョココンビ(11.8%増)、サンドビスケット(14%増)、パイ(12.5%増)、ビスケット・クリーム生地を巻いたマキセン(29%増)が牽引役となりました。

木地氏は「サンドビスケットパイ、マキセンでもチョコやココアのクリームを活用した商品の寄与がみられた。とりわけ好調なマキセンは、サクサクとした食感含めて支持されている」と説明しています。

消費者の購買行動の変化

値上げによる買い控え

2024年は、多くのチョコレートメーカーが相次いで価格改定を実施しました。明治の「チョコレート効果」を例に取ると、2025年3月に価格改定を実施し、大袋タイプの店頭価格は1,000円台を突破するなど、店頭価格が大幅に値上がりしたのです。

この急激な値上げにより、一部のライト・ミドルユーザーが離反しました。ただし、ロイヤルユーザーは販売数量・販売金額ともにプラスで推移しており、健康志向に対応した高ポリフェノールの中身がリピートされやすい点が支持されています。

カジュアルギフト需要の台頭

バレンタインデーを中心とした需要にも変化が見られます。かつてのように本命チョコレートと義理チョコレートという明確な区分ではなく、気軽に手渡せるカジュアルギフトという新しい波が生まれているのです。

友人同士で交換し合ったり、日頃お世話になっている人に感謝の気持ちを伝えたりする際に、気負わずに選べる商品の需要が広がっています。一人あたりが買う個数が増え、市場全体が膨らむ結果となりました。

手作りチョコ需要の高まり

2024年のバレンタイン市場では、ギフト・自己消費関連の商品が苦戦する一方で、製菓用チョコレートなど「手作りチョコ」の需要が高まり、売上伸長が起きました。ECモールのデータでは、製菓用カテゴリが好調に推移していることが確認されています。

ただし、手作りチョコ需要が20-30代で30%台に達する一方で、材料費高騰により半数が負担感を感じているという調査結果も出ています。

メーカーの対応策

容量帯の工夫

明治は「チョコレート効果」で、買いやすい価格帯を実現するためにサイズ展開を行う戦略を打ち出しています。2024年9月30日には「チョコレート効果カカオ72%袋」を発売しました。

この商品は”箱タイプでは物足りないけど、大袋タイプでは多すぎる”と感じる人が手に取りやすいように、22枚入りにした点が特徴です。ライト・ミドルユーザーの獲得を目指した施策となっています。

新しい食感の提案

2024年10月に販売開始した「チョコレート効果カカオ72%カカオクランチ大袋」は、ノンユーザーの獲得と既存ユーザーの異なる食シーンの獲得の2つを目的に投入されました。

ノンユーザーにはブランドに対する苦い味わいのイメージが強く、既存ユーザーは新しいものに関心を示しにくいことから足踏みしていますが、デザインを変更するなどして粘り強く提案し続ける方針です。

ロイヤルユーザーへの働きかけ強化

明治は、強みであるロイヤルユーザーをさらに増やしていく活動に注力しています。営業現場では、栄養士資格者による高齢者施設や自治体への訪問・啓発活動を強化していく計画です。

健康志向の高まりを背景に、高カカオチョコレートの健康機能を訴求することで、新たなロイヤルユーザーの獲得を目指しているのです。

今後の見通し

カカオ価格の動向

2025年下半期に入り、カカオ価格は一時下落しましたが、それでも通常の2倍近い水準にとどまっています。短期間でカカオ価格が大きく下落する可能性は低いとの見方が強まっているのです。

その理由の一つが、カカオの生産回復に時間がかかる点です。カカオの木は苗木を植えてから安定的に収穫できるまで数年を要します。また、世界的なチョコレートの需要が急激に減少することも考えにくい状況です。

近年の気候変動の進行なども考えると、カカオショックは一時的な価格高騰ではなく、中長期的な構造問題として続く可能性が高いとされています。

高カカオ・無垢チョコレートの可能性

足踏み状態にある高カカオチョコレートや無垢チョコレートも、健康志向や贅沢ニーズに対応して一部で善戦の動きがみられます。ロイヤルユーザーの支持が厚いことから、最需要期に向けて、買いやすい容量帯の商品や高付加価値商品の投入によって市場を再び賑わす可能性があります。

明治のグローバルカカオ事業本部カカオマーケティング部の吉田彰部長は「物量減が深刻なブランドに対しては手を打つ。価格を上げ過ぎて、少し需要が落ちているものについては物量を上げて利益を取りにいく」と語っています。

周辺カテゴリへの展開

チョコレートスナックや小粒チョコレートが無垢チョコの受け皿となり拡大傾向にある中、メーカー各社はカカオの使用量を抑えた商品開発に力を入れています。焼き菓子や半生菓子といった商品展開により、原料価格高騰の影響を緩和しながら市場を維持する戦略です。

ただし、長期的にはビスケットなどが台頭しカテゴリ間の順位が変動する可能性も指摘されています。チョコレートカテゴリは近年、菓子の中で大きな販売金額を占めており、嗜好品でありながら生活に根付いている側面があります。しかし、値上げが続けば消費者の支持を失う可能性もあるのです。

まとめ

チョコレート市場は、カカオ豆の歴史的な価格高騰という厳しい環境の中で、各社の知恵と工夫により売場を維持しています。2024年は価格改定により金額成長した反面、値頃感を失ったことで販売数量は減少しました。

高カカオチョコレートや無垢チョコレートが苦戦する一方で、カカオ使用量を抑えた商品やチョコレートがけのビスケットなど周辺カテゴリが活性化しています。消費者の購買行動も、カジュアルギフト需要や手作りチョコ需要の高まりなど、変化が見られます。

カカオ価格の高止まりが続く見通しの中、メーカー各社は容量帯の工夫、新しい食感の提案、ロイヤルユーザーへの働きかけ強化など、様々な対応策を講じています。最需要期に向けて、買いやすい容量帯の商品や高付加価値商品の投入により、市場を再び活性化させることができるかが注目されています。

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