子どもの英語教育を始めるタイミング
子どもに英語を学ばせたい親御さんにとって、いつから始めるべきかという問いは悩ましいものです。早ければ早いほど良いという意見もあれば、母国語が固まってからという意見もあります。この記事では、研究結果や専門家の見解を基に、英語教育を始める適切なタイミングについて解説します。
英語学習を始める年齢の考え方
外国語の学習に関しては、大きく分けて二つの見解が存在しています。研究者や教育者の間でも意見が分かれている背景には、言語学習に多くの条件が絡み合い、確実な検証が難しいという事情があります。言語習得には個人差、家庭環境、学習方法、学習時間など様々な要素が関わるため、一つの結論を導くことが容易ではないのです。
早期学習推進派の主張
外国語の学習は早い方が良いという立場です。幼少期は脳の可塑性が高く、新しい言語の音やリズムを自然に吸収できる時期だとされています。この時期を逃すと、後から学習する際により多くの努力が必要になるという考え方です。
早期学習慎重派の主張
母国語が固まっていないうちから第二言語を教育することが脳に混乱を招き、健全な思考力が育ちにくいという立場です。まずは母国語でしっかりとした言語の土台を作り、ある程度の年齢に達してから第二言語を学び始める方が、長期的には両方の言語を高いレベルで習得できるという考え方です。
言語能力が発達する時期
| 学習開始年齢 | 到達可能な英語レベル |
|---|---|
| 6歳から7歳まで | ネイティブレベルに近い習得が可能 |
| 12歳以下 | 外国人と難なくコミュニケーション可能 |
| 8歳から10歳 | 言語能力の発達が著しい時期 |
近年の研究では、第二言語として英語を習得する際の学習開始時期と到達レベルの関係が示されています。
ただし、これらの研究結果は統計的な傾向を示すものであり、個々の子どもによって習得のペースや到達レベルは異なります。
世界の英語使用状況
英語を話す人々の内訳を見ると、ネイティブスピーカーは少数派であることが分かります。
| 英語使用者の総数 | 約21億人以上 |
|---|---|
| ネイティブスピーカー | 約3億7千万人 |
| 第二言語として使用 | 約17億人 |
この数字から分かるように、世界で英語を使用している人の約8割は第二言語として英語を話しています。世界で活躍している人にもネイティブではない方が大勢います。
ネイティブレベルの必要性
ネイティブレベルの英語が本当に必要かどうかは、各家庭の価値観や目標によって異なります。どちらを選択するにしても、子どもの成長ペースや興味を尊重することが大切です。
ネイティブレベルを目指す場合
ネイティブレベルの英語があれば子どもの可能性が広がると考えるなら、6歳から7歳までに学習をスタートすることが選択肢となります。この年齢までに始めることで、アクセントや発音をネイティブに近いレベルまで高められる可能性が高まります。将来、英語圏での生活や高度な英語を使う職業を視野に入れている場合は、この目標設定が適しているかもしれません。
コミュニケーション重視の場合
発音などを気にせず英語でコミュニケーションが取れれば十分と考えるなら、焦って始める必要はありません。12歳以下であれば、外国人と難なくコミュニケーションを取れるレベルに到達できると言われています。実用的な英語力を身につけることを目標とする場合、母国語の発達状況を見ながら慎重に開始時期を選ぶことができます。
早期英語学習のデメリット
早期とは1歳くらいまでのことを指します。この時期は母国語である日本語習得の基礎を作っている段階です。
母国語の語彙力への影響
幼少期から外国語を学ぶことで、脳のキャパシティに対して習得できる語彙を二つの言語で分け合うため、母国語の語彙が少なくなってしまうことがあります。これが早期からの第二言語学習において指摘されているデメリットです。一つの言語に集中する場合と比べて、それぞれの言語で習得できる語彙数が減少してしまう可能性があるのです。
思考力との関係
人が後々他言語を学ぶようになっても、思考の基本は母国語です。母国語の語彙が少なかったり、微妙なニュアンスが曖昧だと、深い思考ができないと指摘されています。
子どもたちが社会に出てビジネスをする際、コミュニケーションをとる言語が何であれ、深い思考とロジックを組み立てる能力が必要です。多くの学者も、母国語の語彙不足が思考の過程に影響を与える可能性があると述べています。
英語がネイティブでなくても、素晴らしいアイディアと表現力で活躍している人はたくさんいますが、そうした人々も母国語の基礎はしっかりしていることが多いのです。
英語学習自体への影響
| 移住年齢 | 英語習得の傾向 |
|---|---|
| 7歳から9歳 | 成績が最も良い |
| 10歳から12歳 | 二番目に良い成績 |
| 3歳から6歳 | 最初は伸びるが、その後の伸びはゆっくり |
日本語学習をおろそかにすると、英語学習も行き詰まる可能性があるという指摘があります。
多くの学者が言及している研究として、海外に移り住む年齢によって英語の習得率が変わるというデータがあります。
この研究は移住した場合のケースですが、日本で英語を学ぶ場合も日本語の土台がしっかりしていることが英語学習に影響を与える可能性があると考えられます。幼少期にある程度の母国語の基礎ができてから第二言語を学び始めた子どもの方が、長期的には高い言語能力を獲得できる傾向が見られたのです。
早期英語学習のメリット
早期からの英語学習にはデメリットもありますが、メリットも報告されています。
発音の習得
幼少期から英語を学ぶことで、ネイティブの発音を身につけやすくなります。子供は言語を柔軟に学ぶ能力を持っているため、日本語にはない音を正確に聞き取り、発音する力が育ちやすい時期です。年齢が上がるにつれて、母国語にない音を習得することは難しくなる傾向があります。幼少期の耳は新しい音を区別する能力が高く、この時期に多様な音に触れることで、発音の正確さが向上すると言われています。
思考の柔軟性
バイリンガルの子供は、異なる言語や文化に触れることで柔軟な思考力を養うという報告があります。
一般的な4歳児は、一度決めたルールを変えられると新しいルールになかなか対応できないと言われます。しかし、3歳から5歳ぐらいのバイリンガルの子どもを対象に、一度決めたルールを変更する実験を行ったところ、スムーズに対応できている子が多いという結果が得られたそうです。さまざまな人や世界を見るため、自分の価値観と異なる事象にもスムーズに対応できる傾向が見られました。言語を切り替える経験が、思考の切り替えにも良い影響を与えている可能性があります。
認知能力の向上
複数の言語を使い分けることで、脳の柔軟性が高まるという研究結果があります。
バイリンガルの子の方が高い正答率を示した課題として、以下のようなものが報告されています。
- 色付きのブロックで作った模様を再現する
- 複数の数字を声に出して復唱する
- 言葉を定義する
- 頭の中で算数の問題を解く
これらの課題はいずれも、情報を一時的に保持したり、複数の情報を同時に処理したりする能力を測るものです。二つの言語を切り替える訓練が、こうした認知能力全般を高めている可能性が示唆されています。
コミュニケーション能力
言語を切り替えることで相手の立場に立って考える習慣が身につくという報告があります。言語を切り替えるということは、どの言葉が相手に伝わりやすいか考えて言葉を発しているということです。相手が理解できる言語を選んで話すという行動は、常に相手の状況を考慮していることを意味します。このような習慣が、コミュニケーション能力全般を高めることにつながると考えられています。相手の立場に立って考える力が育つことで、言語の壁を超えた円滑なやり取りが可能になるのです。
メンタルの切り替え
バイリンガルの子は2つ以上の言語を頭の中で切り替えるトレーニングを自然としているため、どんな状況でも自分の気持ちを整理して切り替えるのも上手になると言われています。言語の切り替えが、気持ちの切り替えにも応用されている可能性があるのです。
英語学習を成功させるポイント
早期から英語教育を始めても、全ての子どもが同じように成長するわけではありません。子どもの成長は個々に異なるため、深く考えすぎないことが大切です。
目的と環境の整備
英語学習には、明確な目的や環境が不可欠です。人は目的や環境がないと言語習得ができないという指摘があります。
英語を使わざるを得ない状況の例として、以下のようなものが効果的とされています。
- 定期的に英語で話す友達がいる
- 家族の中に英語しか話せない人がいる
- 海外に留学している
- 英語教室で毎週英語を話す時間がある
子どもに英語を学ばせたい親としては、どれだけそのような環境を整えてあげるかが鍵となります。教材を与えるだけでなく、実際に英語を使う必要がある場面を作ることが学習の継続と定着につながります。
対面でのコミュニケーション
| 学習方法 | 結果 |
|---|---|
| 週3回25分ずつ中国人と一緒に本読みや遊び | 1か月後に台湾で生まれた赤ちゃんと同程度に中国語の母音と子音を聞き分けられるようになった |
| 同じ内容をテレビやテープで実施 | ほとんど学ぶことができなかった |
赤ちゃんは特に生身の相手から学ぶのが効果的であるという研究結果があります。
ワシントン大学では、英語しか話さない両親の赤ちゃんを対象に実験を行いました。実際の人と触れ合いながら学んだ赤ちゃんは、わずか1か月で中国語の音を聞き分ける能力を獲得しましたが、映像や音声だけでは同じ効果が得られなかったのです。
少し大きくなるとスクリーンからも学べるようになりますが、実際の人とのコミュニケーションの方が効果が高いと言われています。これは言語学習が単なる音の習得ではなく、相手とのやり取りの中で育つものだからだと考えられます。
まとめ
子どもの英語教育を始めるタイミングは、家庭の価値観や目標によって異なります。ネイティブレベルを目指すのであれば6歳から7歳までに学習を開始することが推奨され、コミュニケーション重視であれば12歳以下を目安に考えることができます。
早期学習には母国語への影響というデメリットがある一方で、発音習得や思考の柔軟性といったメリットも報告されています。英語を使う環境と生身の相手とのコミュニケーションを重視しながら、お子さんの成長に合わせた適切なタイミングで英語教育を始めることが大切です。
全ての子どもが同じように成長するわけではないため、焦らず、お子さんの様子を見ながら進めていくことをお勧めします。





