昭和50年代の日本のお菓子文化【スイーツの歴史】

昭和50年代は、日本の菓子文化が大きく変化した時代です。戦後の経済成長により、消費者の嗜好が多様化し、従来の和菓子文化に加えて洋菓子が広く受け入れられるようになったと考えられます。特にフランスやアメリカからの影響を受けた新しいスイーツが登場し、それまでにはなかったスタイルの菓子が市場を席巻しました。

本記事では、昭和50年代における菓子文化の変遷を詳しく掘り下げるとともに、現代への影響についても考察します。

目次

昭和50年代前期のお菓子文化

大型カットケーキの登場

昭和50年代に入ると、大型のアメリカンタイプのカットケーキが人気を集めるようになりました。これまで日本では、小型で繊細なフランス菓子が主流だった反動なのか、大きなサイズでボリューム感のあるケーキが受け入れられるようになったのです。スポンジケーキにたっぷりのクリームやフルーツを使用したケーキは、見た目のインパクトと満足感かで大人気。日本の消費者にとって新鮮な選択肢となりました。

トリュフチョコレートの流行

この時期には、一口サイズのチョコレート菓子が注目を浴びました。特に人気を集めたのが「トリュフチョコレート」と呼ばれる、ガナッシュを使用した柔らかい食感のチョコレートです。本来、トリュフチョコレートにはさまざまなバリエーションが存在しますが、日本市場では「ガナッシュ入りのチョコレート」が定番化し、この流れが独自の発展を遂げました。

たい焼きブームの再燃

昭和50年代前期には、和菓子の分野でも変化が見られました。特に「およげ!たいやきくん」の大ヒットによって、たい焼きが再び注目されるようになり、一時的なブームが起こりました。これにより、伝統的な和菓子が見直され、たい焼きを提供する店が急増しました。

昭和50年代中期のお菓子文化

ヌーヴェル・パティスリーの流入

昭和50年代中期には、フランスから「ヌーヴェル・パティスリー(新しい洋菓子)」の流れが日本に持ち込まれました。これは、従来のバターやクリームを多用した濃厚なケーキとは異なり、ムースを主体とした軽い食感の菓子です。また、ショックフリーザー(急速冷凍機)の技術革新によって、大量生産が可能となり、全国各地で均一な品質のケーキが提供されるようになりました。

トロピカルフルーツを使った菓子の流行

この時期には、南国フルーツを活用したスイーツが急増しました。マンゴーやパッションフルーツなど、日本では馴染みの薄かった果物を取り入れたムースケーキやタルト、伝統的なシャルロットケーキをアレンジした商品が次々と登場し、消費者の関心を集めました。日本のスイーツ文化において、より多彩なフレーバーが定着します。

バレンタインデーの商戦とホワイトデーの誕生

昭和50年代中期には、バレンタインデーの商戦が本格化しました。女性が男性にチョコレートを贈るという習慣が定着し、それに伴いチョコレート市場が大きく拡大しました。この動きに呼応する形で、昭和55年(1980年)には「ホワイトデー」が誕生。バレンタインデーにチョコレートをもらった男性が、キャンディーやクッキーなどのお菓子をお返しする日として確立され、菓子業界にとって新たな商機が生まれました。

昭和50年代後期のお菓子文化

焼きたて菓子の登場

昭和50年代後期になると、日本の製菓業界はフランスやヨーロッパの技術を十分に取り入れた上で、新たな展開を模索し始めました。その中で特に注目されたのが、焼きたてのクッキーやパイなど、その場で提供する形態の菓子です。これは、従来の袋詰めや缶入りの商品とは異なり、作りたての新鮮な状態で提供するという新しいコンセプトでした。消費者は出来立ての風味を楽しむことができ、店頭販売の新たな形態が広がりました。

デザートの多様化

また、デザートの提供方法にも工夫が加えられました。ホテルやレストランでは、ビュッフェスタイルのデザートコーナーが充実し、アイスクリームシャーベット、美しく盛り付けられたデザートプレートなどが登場。見た目にもこだわった商品が次々と生まれ、スイーツが単なる食べ物ではなく、視覚的にも楽しめる文化へと進化しました。

アイスクリーム市場の拡大

昭和50年代後期には、日本のアイスクリーム市場も大きく成長しました。低価格帯では「ガリガリ君」などの大衆向け商品が登場し、一方で「ハーゲンダッツ」などの高級アイスクリームも市場に参入しました。アイスクリーム業界は低価格と高級志向、消費者の選択肢がさらに広がりました。

まとめ

昭和50年代の菓子文化の変遷は、現代のスイーツ業界にも多大な影響を与えています。昭和50年代は、海外の技術や味を積極的に取り入れながら、日本独自のアレンジを加えるという手法も多く生み出されました。洋菓子と和菓子の融合、新たな製造技術の導入、イベント商戦の定着など、この時期に確立された多くの要素が、現在の日本の菓子文化の礎となっています。こうした昭和50年代に生まれた文化や市場の変化は、今もなお日本の菓子業界において重要な役割を果たし続けています。

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