お菓子の原料はどこから来ているのか|米菓とビスケットの調達を統計で読む

せんべいの米は国産でしょうか。クッキーの小麦粉はどうでしょうか。
その答えの一部が、農林水産省の「食品産業動態調査 令和7年度年報」の巻末に載っています。統計表のひとつ「令和7年 米麦加工品製造業における原料使用実績」が、業種ごとに使った米や小麦粉の量を国内産と外国産に分けて示したものです。
読んでみると、米菓が使ううるち米の国内産比率は45.4%、ビスケットが使う小麦粉に占める国産小麦は4.5%でした。同じお菓子でも、原料の来歴はまるで違っていました。ここでは統計表から読み取れることを4つの動向に整理します。
この記事で読み解く資料
- 食品産業動態調査 令和7年度年報農林水産省 巻末の統計表「令和7年 米麦加工品製造業における原料使用実績」を使います
この統計は何を調べたものでしょうか
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回答した企業の合計であって、業界全体ではありません
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 資料名 | 食品産業動態調査 令和7年度年報 統計表 |
| 表の名称 | 令和7年 米麦加工品製造業における原料使用実績 |
| 公表 | 農林水産省大臣官房政策課食料安全保障室 |
| 実施 | 一般社団法人 食品需給研究センター |
| 集計の性格 | 回答企業の使用量を合計したもの |
| 単位 | トン、% |
いちばん大事な前提から確認しておきます。食品産業動態調査の統計表に並ぶ数字は、調査に回答した企業の使用量を足し上げたものです。日本全体で使われた原料の量ではありません。
表には業種ごとに回答社数と推計の市場シェアが添えられています。お菓子に関わる2業種は次のとおりです。
米菓製造業は市場のおよそ3割、ビスケット製造業はおよそ5割にあたる企業の数字ということになります。とくに米菓は3割ですから、業界全体の姿として読むと実態からずれるでしょう。
この調査の「菓子」はビスケットと米菓だけです
同じ食品産業動態調査には、部門別の生産指数を示す章もあります。そちらでも菓子部門の対象品目はビスケットと米菓の2つだけで、チョコレートもスナック菓子も飴菓子も含まれません。
調査の設計そのものについては生産指数から見た菓子の記事で詳しく取り上げました。
動向1:ビスケットの国産小麦は4.5%でした

| 業種 | 小麦粉等の使用量 | うち国産 | 国産の割合 |
|---|---|---|---|
| めん類製造業 | 9万6,856トン | 1万8,612トン | 19.2% |
| プレミックス類製造業 | 23万3,679トン | 2万1,026トン | 9.0% |
| パン製造業 | 50万1,742トン | 2万8,659トン | 5.7% |
| ビスケット製造業 | 2,863トン | 129トン | 4.5% |
| マカロニ製造業 | 15万8,027トン | 4,145トン | 2.6% |
小麦粉を使う業種を並べると、国産小麦の割合には7倍以上の開きがありました。ビスケット製造業は4.5%で、下から2番目です。
※マカロニ製造業の数値は、原料の大半を占めるデュラム・セモリナを除いた「その他小麦粉」に占める国内産の割合です。
めん類だけが2割近くに届いています
最も高いめん類製造業は19.2%でした。うどんやそばには国産小麦を使う商品が定着していますから、その事情が数字に出ている形といえます。
対するビスケットは4.5%、パンは5.7%。国内産の小麦は、めん類に優先して回っていると読めるでしょう。
ビスケットが使う小麦粉は2,863トンです

| 内訳 | 使用量 | 構成比 |
|---|---|---|
| 小麦粉 | 2,842トン | 97.9% |
| うち国産 | 129トン | 4.5% |
| プレミックス | 11トン | 0.4% |
| 新規米粉 | 6トン | 0.2% |
| 輸入小麦粉調製品 | 4トン | 0.2% |
| 小麦粉等 計 | 2,863トン | 100.0% |
ビスケット製造業16社が使った小麦粉等は合わせて2,863トンで、そのほとんどが小麦粉でした。プレミックスや輸入小麦粉調製品はごくわずかです。
数字の大きさに目を向けると、パン製造業の50万1,742トンとは180倍近い差があります。回答社数も対象の広さも違うので単純には比べられませんが、小麦粉を使う量そのものが、ビスケットではパンやめん類に比べてかなり小さいことが分かります。
動向2:米菓の米は、もち米とうるち米で調達先が違います

| 区分 | 使用量 | 国内産 | 外国産 | 米穀粉 | 輸入米粉調製品 |
|---|---|---|---|---|---|
| もち米 | 1万5,105トン | 75.6% | 9.2% | 4.6% | 10.6% |
| うるち米 | 3万1,594トン | 45.4% | 22.7% | 21.5% | 10.4% |
米菓製造業12社が使った米は、もち米が1万5,105トン、うるち米が3万1,594トンでした。うるち米のほうが2倍以上多く使われています。
もち米は4分の3が国内産です
もち米は国内産が75.6%を占めました。外国産は9.2%にとどまり、残りは米穀粉と輸入米粉調製品です。
あられやおかきの原料になるもち米は、国内で調達される割合が高いことになります。
うるち米は国内産が半分を切りました
いっぽうのうるち米は、国内産が45.4%と半分を下回りました。外国産が22.7%、米穀粉が21.5%、輸入米粉調製品が10.4%と、調達先が分散しています。
同じ米菓のなかでも、せんべいに使ううるち米のほうが海外や加工原料に頼る割合が高い、という構図が読み取れるでしょう。
米菓の数量が減った時期と重なります
全日本菓子協会の資料は、2025年の米菓について、令和6年産米も前年産に続いて特定米穀が大幅に減少し、主食用米の供給不足による価格高騰が加工原料米にも及んだと記しています。国産もち米は主食用うるち米への作付転換で減産も生じました。
結果として、もち米を使う「あられ」は1.2%減、うるち米を使う「せんべい」は0.2%減、米菓全体で0.6%減という数量になっています。
原料の調達がどう変わったのかまでは、動態調査の1年分の数字からは分かりません。それでも、うるち米の国内産比率が45.4%にとどまっている事実と、協会が記した原料米の事情は同じ時期の出来事です。
動向3:同じ米でも、業種によって国内産比率が変わります

| 業種と区分 | 回答社数 | 国内産の割合 |
|---|---|---|
| 加工米飯製造業(うるち米) | 10社 | 100.0% |
| 米穀粉製造業(うるち米) | 24社 | 80.3% |
| 米菓製造業(もち米) | 12社 | 75.6% |
| 米菓製造業(うるち米) | 12社 | 45.4% |
| 味噌製造業(米) | 17社 | 28.3% |
米を使う業種を並べると、国内産の割合は100.0%から28.3%まで開きます。
加工米飯は全量が国内産でした
パックご飯などをつくる加工米飯製造業は、もち米・うるち米ともに国内産100.0%、外国産0.0%でした。食べるときの形がご飯そのものである以上、国産へ寄るのは自然な結果といえます。
味噌は7割が外国産です
対照的なのが味噌製造業で、米は国内産28.3%・外国産71.7%でした。大豆にいたっては国内産12.9%で、米国が46.0%、カナダが40.5%を占めています。
同じ「米を使う食品」でも、米そのものを食べるものと、発酵させて別の形にするものとでは、調達の考え方が違うようです。
米菓は中間にあります
米菓のもち米75.6%、うるち米45.4%という数字は、加工米飯と味噌のあいだに位置します。原料の姿がある程度残る食品でありながら、価格の制約も受ける立場だと読めるでしょう。
ただし社数はいずれも10〜24社で、市場シェアも30%から66%まで幅があります。業種どうしを比べるときは、この違いも一緒に見ておく必要があります。
動向4:表のなかに、計算が合わない箇所があります
数字を確かめていくと、ビスケット製造業の表で2か所つじつまが合いませんでした。どちらかを選ばず、そのまま並べておきます。
| 確かめたこと | 結果 |
|---|---|
| 内訳の合計と「計」 | 2,842+11+4+6=2,863で一致 |
| 「計」の1社当たり | 2,863÷16社=178.9。表の記載は182 |
| 小麦粉の構成比 | 2,842÷2,863=99.3%。表の記載は97.9% |
| 国産の構成比 | 129÷2,863=4.5%。表の記載と一致 |
トン数どうしは合っています。合わないのは、そこから計算される1社当たりと構成比のうち2か所です。
どちらが正しいかは資料からは分かりません
「計」を2,903トンとすれば小麦粉の構成比97.9%と合いますが、今度は1社当たりが181になって182に届きません。2,912トンとすれば1社当たり182と合うかわりに、構成比が97.6%になります。どの値をとっても、2か所を同時に説明できませんでした。
この記事では、内訳の合計と一致する2,863トンを本文で使っています。国産の構成比4.5%も2,863トンで計算した値と一致するためです。
他の業種では計算が合います
念のため、同じ表の他の業種でも確かめました。めん類製造業の国産19.2%、パン製造業の5.7%、プレミックス類製造業の9.0%、マカロニ製造業の2.6%は、いずれも公表されているトン数から計算した値と一致します。
米菓製造業も、もち米・うるち米ともに内訳の合計・構成比・1社当たりのすべてが整合しました。つじつまが合わないのは、ビスケット製造業の2か所に限られます。
統計表を引用するときは検算をしておきましょう
公表されている数値だからといって、内部でつねに整合しているとは限りません。トン数と構成比の両方が載っている表なら、割り算で確かめられます。
同じ食品産業動態調査では、米菓の生産量が全日本菓子協会の数値と1万8千トン以上ずれるという例もありました。詳しくは生産指数から見た菓子の記事にまとめています。
業界団体の資料もあわせて見ておきましょう
原料の話は、業界団体が公表している情報とあわせると輪郭がはっきりしてきました。
米菓とビスケットには、それぞれ団体があります
全国ビスケット協会は、ビスケットの種類別に生産数量と生産金額を公表しています。動態調査が原料側から見た数字であるのに対し、こちらは製品側から見た数字です。
ビスケット市場の動きそのものについては2025年のビスケット市場の記事で取り上げました。
読むときに気をつけたい4つの点
原料の統計は、そのまま「日本のお菓子の原料」と読み替えられるものではありません。
回答した企業の合計です
米菓製造業12社(推計シェア約30%)、ビスケット製造業16社(同約55%)の実績を足し上げた数字です。回答していない企業の分は入っていません。とくに米菓は3割ですから、業界全体の姿とみなすことはできないでしょう。
業種どうしの比較には社数の差があります
回答社数はめん類製造業の66社からマカロニ製造業の8社まで開きがあり、推計シェアも36%から92%まで幅があります。国産比率だけを取り出して業種を並べるときは、この違いを添えておくのが安全です。
1年分の数字です
この記事で扱ったのは令和7年の実績だけです。国内産の割合が上がってきているのか下がってきているのかは、1年分からは判断できません。傾向を知りたい場合は、複数年の年報を並べる必要があります。
「うち国産」の定義は書かれていません
小麦粉の欄にある「うち国産」が、国内で製粉したものを指すのか、国産小麦を原料とするものを指すのかは、統計表の記載からは読み取れません。この記事では原資料の表記どおり「国産」として扱っています。
まとめ|お菓子の原料の来歴
読み取れる動向を、あらためて整理しました。
- ビスケット製造業が使う小麦粉等は2,863トンで、うち国産小麦は129トン(4.5%)
- 小麦粉を使う業種のなかでは、めん類製造業の19.2%が最も高く、マカロニ製造業の2.6%が最も低い
- 米菓製造業が使う米は、もち米1万5,105トン・うるち米3万1,594トン
- もち米の国内産は75.6%、うるち米は45.4%と、同じ米菓でも30ポイント開く
- 米を使う業種では、加工米飯製造業が100.0%、味噌製造業が28.3%と幅が大きい
- ビスケット製造業の表には、1社当たりと構成比の2か所につじつまの合わない箇所がある
- いずれも回答企業の合計で、米菓は市場の約30%、ビスケットは約55%にあたる
せんべいのうるち米は半分が海外や加工原料から、クッキーの小麦粉は95%以上が国産以外から。ふだん食べているお菓子の原料は、思っていたより遠くから来ていました。
原料の値段が動けばお菓子の値段も動きます。どこから来ているのかを知っておくと、値上がりのニュースの見え方も少し変わってくるのではないでしょうか。