生産指数で見る菓子|農林水産省の統計が示す「5年で4.9%減」の中身

農林水産省の「食品産業動態調査 令和7年度年報」が公表されました。米や小麦、大豆などを原料とする加工食品の生産量を毎月調べ、年度末に動向を分析している調査です。調査の企画から分析までを一般社団法人食品需給研究センターが請け負って実施しています。
この年報には「菓子」という部門があり、令和7年の生産指数は95.1でした。令和2年を100とした数字ですから、5年で4.9%下がった計算になります。ただしこの「菓子」が指す範囲は、他の統計とはかなり違いました。何が含まれ、何が含まれないのか。数字の中身から読み解いていきます。
この記事で読み解く資料
- 食品産業動態調査 令和7年度年報 第2章農林水産省
この調査の「菓子」は2品目だけです
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- 食品産業動態調査 令和7年度年報 第2章農林水産省
はじめに、いちばん大事な前提を確認しておきます。
対象はビスケットと米菓のみです
年報の「利用者のために」には、菓子部門の調査対象品目としてビスケットと米菓の2つだけが挙げられていました。チョコレートもスナック菓子も飴菓子も、この部門には入っていません。
部門のウェイトも、ビスケット246.8と米菓193.9の合計で440.7。つまり食品産業動態調査の「菓子」は、ビスケットと米菓を合わせたものを指しているわけです。
アイスクリームは畜産食料品に分類されています
もうひとつ意外なのが、アイスクリームの扱いです。この調査ではアイスクリームは菓子部門ではなく、畜産食料品部門の乳製品として集計されています。ウェイトは248.7で、米菓の193.9を上回る大きさです。
さらに冷凍菓子は、調理食品部門の収集品目として扱われました。「お菓子」と呼ばれるものが、3つの部門に散らばっていることになります。
なぜこうなるのでしょうか
この調査は菓子業界の実態を調べることを目的としたものではなく、食品製造業全体の生産動向を12の部門に分けて追うものです。原料や製法にもとづく分類が優先されるため、乳製品を主原料とするアイスクリームは畜産食料品に入る、という整理になっています。
菓子の市場全体を知りたい場合は、2025年のお菓子市場を統計で読み解く記事で扱った全日本菓子協会のデータのほうが適しているでしょう。
動向1:菓子の生産指数は5年連続で下がりました

| 年 | 菓子(部門計) | ビスケット | 米菓 |
|---|---|---|---|
| 令和2年 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
| 令和3年 | 100.0 | ― | ― |
| 令和4年 | 97.9 | 98.7 | 96.8 |
| 令和5年 | 95.7 | 97.9 | 92.9 |
| 令和6年 | 95.3 | 97.5 | 92.5 |
| 令和7年 | 95.1 | 97.6 | 91.9 |
※令和3年のビスケットと米菓は、この記事で参照した表に品目別の数値が載っていないため「―」としました。
令和3年以降、減少傾向が続いています
令和7年の菓子部門の生産指数は95.1で、対前年比0.2%減。年報は「前年並み」と判定しています。年報自身も、平成27年以降は横ばい傾向だったが令和3年以降は減少傾向で推移している、と記しました。
令和2年の水準と比べると4.9%低い位置にあります。1年ごとの下げ幅は小さいものの、5年かけて積み重なった格好です。
ビスケットは横ばい、米菓は下げ続けています
品目別に見ると、動きが分かれました。
ビスケットは令和5年以降97台で横ばい、令和7年はわずかに戻しました。対する米菓は令和4年の96.8から91.9まで下がり続けています。令和2年比では8.1%減です。
年報の「前年並み」には定義があります
食品産業動態調査の年報では、増減の表現が数値で定義されています。引用するときに便利なので載せておきます。
| 表現 | 対前年増減率 |
|---|---|
| 前年並み | ±1%未満 |
| わずかに | ±1〜3%未満 |
| やや | ±3〜6%未満 |
| かなりの程度 | ±6〜11%未満 |
| かなり大きく | ±11〜16%未満 |
| 大幅に | ±16%以上 |
菓子の0.2%減もビスケットの0.0%も米菓の0.6%減も、すべて「前年並み」の範囲に収まる数字。年報の文章に「前年並み」とあっても、まったく動いていないという意味ではない点に注意が必要でしょう。
動向2:12部門のなかで菓子は動きが小さいほうでした

| 部門 | 令和7年の生産指数 | 対前年増減率 |
|---|---|---|
| 水産食料品 | 90.5 | 8.3%増 |
| 食用油・同加工品 | 94.5 | 2.4%増 |
| その他食品 | 102.4 | 2.1%増 |
| 製穀粉・同加工品 | 102.5 | 1.4%増 |
| 菓子 | 95.1 | 0.2%減 |
| 砂糖 | 102.0 | 0.7%減 |
| 調味料 | 100.1 | 0.8%減 |
| 畜産食料品 | 96.8 | 1.4%減 |
| 調理食品 | 115.2 | 1.8%減 |
| 飲料 | 95.6 | 4.5%減 |
| 農産食料品 | 88.8 | 5.8%減 |
| 酒類 | 109.5 | 11.8%減 |
| 食品製造業(総合) | 101.9 | 2.7%減 |
食品製造業全体は2.7%減でした
令和7年の食品製造業(総合)の生産指数は101.9で、対前年比2.7%減。年報は「わずかに低下」としています。令和3年から6年までは上昇傾向でしたが、7年は低下に転じました。
大きく下げたのは酒類(11.8%減)で、年報は令和7年9月末以降の大手メーカーによる酒類の出荷停止の影響によるものと考えられる、と記しています。総合指数の下げ幅2.7%のうち2.2ポイントは酒類による寄与です。
菓子はほとんど動いていません
そのなかで菓子は0.2%減。総合指数への寄与も小さく、動きの少ない部門でした。飲料や酒類のような大きな変動要因がなかった一方で、回復の材料もなかった、という位置づけになります。
なお炭酸飲料が31.0%減と大幅に低下し、飲料部門を押し下げました。カレーも21.5%減となっています。
動向3:アイスクリームは菓子と逆の動きでした

令和2年比で12.0%上回っています
アイスクリームの令和7年の生産指数は112.0で、対前年比0.1%増。年報の区分では「前年並み」ですが、水準そのものが菓子部門とはまったく違います。令和2年を100とした位置で見ると、アイスクリームは112.0、菓子は95.1。17ポイントの開きです。
令和6年に111.9まで上がった水準を、令和7年も維持しました。
乳製品部門は全体的に上向きです
| 品目 | 令和7年の生産指数 | 対前年増減率 |
|---|---|---|
| バター | 107.7 | 7.4%増 |
| 脱脂粉乳 | 115.1 | 5.3%増 |
| アイスクリーム | 112.0 | 0.1%増 |
| チーズ | 93.5 | 0.6%増 |
| クリーム | 110.2 | 0.4%増 |
乳製品全体の生産指数は106.8で1.3%増でした。ただし畜産食料品部門としては1.4%減で、食肉加工品(3.8%減)や飲用牛乳等(1.3%減)が下押ししています。
アイスの消費者調査とも符合します
日本アイスクリーム協会の「アイスクリーム白書2025」では、10種類のスイーツのうち食べる機会が増えたと答えた人が減った人を上回ったのは、アイスクリームとヨーグルトの2つだけでした。生産側の数字と消費者側の実感が、同じ方向を向いていることになります。
集計方法も対象もまったく異なる2つの資料が似た絵を描いた、という点は押さえておく価値があるでしょう。詳しくはアイスクリーム白書2025の記事で取り上げました。
動向4:お菓子の材料は品目ごとに動きが分かれました

菓子部門以外にも、お菓子づくりに関わる品目が数多く収録されています。
| 品目 | 令和7年の対前年増減率 |
|---|---|
| バター | 7.4%増 |
| 脱脂粉乳 | 5.3%増 |
| ショートニング | 4.3%増 |
| 調製粉乳 | 3.8%増 |
| マーガリン | 2.6%増 |
| 上白糖 | 1.8%増 |
| チーズ | 0.6%増 |
| クリーム | 0.4%増 |
| 加糖れん乳 | 0.9%減 |
| グラニュ糖 | 2.1%減 |
| 三温糖 | 3.3%減 |
| 白双糖 | 8.9%減 |
| 中双糖 | 9.8%減 |
油脂と乳製品は増え、砂糖は種類で分かれました
バターは7.4%増で、年報の区分では「かなりの程度上昇」。ショートニングも4.3%増と上向きです。加工油脂全体では3.8%増となりました。
いっぽう砂糖部門は全体で0.7%減。上白糖だけが1.8%増と伸び、グラニュ糖は2.1%減、白双糖は8.9%減、中双糖は9.8%減となりました。菓子づくりに使われることの多いグラニュ糖が減っている点は、目を引きます。
菓子パンは横ばいでした
パン全体は1.8%増となりましたが、菓子パンだけが0.0%で横ばいでした。伸びたのは「その他パン」(4.0%増)と食パン(2.0%増)です。
動向5:同じ品目でも統計によって数字が違います
この記事で扱った品目のうち、ビスケットと米菓は全日本菓子協会も数値を公表しています。突き合わせてみると、2つの品目で結果がはっきり分かれました。
ビスケットはほぼ一致しています
ビスケットは25トンの差しかなく、実質的に同じ数字です。同じ元データを使っている可能性が高いと考えられます。
米菓は1万8千トンの開きがあります
対する米菓は、両者に1万8,340トンの差がありました。割合にすると9%ほどです。
この差がどこから生じているのかは、両資料の記載からは特定できません。品目の定義や集計対象の違いによるものと推測されますが、確かなことは言えないため、同じ「米菓」という言葉でも中身が一致するとは限らないという事実として受け止めておくのが適切でしょう。
数字を引用するときは公表元を添えましょう
この記事のシリーズでは、これまでにも同じ問題に何度か行き当たりました。2025年の菓子輸出額は全日本菓子協会が505億円、農林水産省が433億円。スナック菓子の2025年の数量は全日本菓子協会が28万9,359トン、日本スナック・シリアルフーズ協会が27万1,033トンです。
どれかが誤っているわけではなく、集計の設計が違うだけです。数字を引くときは、それがどの資料のどの指標なのかを必ず添えておくと、読み手の誤解を防げます。
読むときに気をつけたい4つの点
「菓子」の範囲がとても狭い統計です
繰り返しになりますが、食品産業動態調査の菓子部門はビスケットと米菓の2品目だけです。「菓子の生産指数が下がった」という文だけを取り出すと、菓子全体が下がったように読めてしまいます。
数値は暫定値です
年報の菓子部門の指数には「暫定値」と明記されています。砂糖と酒類については一部推定を含む暫定値です。確定値ではないという前提で読む必要があります。
標本調査の回答率は約53%です
菓子部門のデータは標本調査によるものです。調査対象550社に対し回答は293社で、回答率は約53.3%でした。全数調査ではありません。
指数は令和2年が基準です
生産指数は令和2年の月平均生産数量を100とした数値です。令和2年は新型コロナウイルスの影響が大きかった年にあたるため、基準年そのものが平常時と異なる可能性があります。年報も、指数は5年ごとに基準時を移行する必要があるとしています。
まとめ|生産指数から見た菓子
読み取れる動向を、あらためて整理しました。
- 食品産業動態調査の「菓子」はビスケットと米菓の2品目だけを指す
- アイスクリームは畜産食料品、冷凍菓子は調理食品に分類されている
- 菓子部門の令和7年の生産指数は95.1で、令和2年比4.9%減。令和3年以降減少が続く
- ビスケットは横ばい(97.6)、米菓は下げ続けて91.9まで低下した
- アイスクリームは112.0で、菓子部門とは17ポイントの開きがある
- 材料ではバター7.4%増、ショートニング4.3%増の一方、グラニュ糖は2.1%減
- ビスケットの生産量は全日本菓子協会とほぼ一致するが、米菓は1万8千トンの差がある
指数で見ると、菓子は派手に動いた部門ではありません。けれども5年かけて5%近く下がり、そのまま戻っていない。一方でアイスクリームは1割以上高い水準を保っている。同じ「甘いもの」でも、置かれている状況はかなり違うようです。
金額の統計と数量の統計、そして指数の統計。それぞれ見えるものが違いますから、目的に合わせて使い分けていきたいですね。