食育基本法ができて20年。なぜ「食育」が必要になった?おまけ付きお菓子の問題からのあゆみ
学校や地域で耳にする「食育」。この言葉が法律に書き込まれたのは、2005年のことでした。この記事では、農林水産省が2026年6月に公表した「令和7年度 食育白書」の特集「食育基本法のあゆみ」をもとに、食育基本法ができた背景と、その後の20年を整理します。
この記事で分かること
- 食育基本法は2005年6月に成立して7月に施行され、2025年に20年の節目を迎えている
- 法律ができた背景には、栄養の偏りや肥満・生活習慣病の増加、食の安全への不安などがあった
- 1980年代には、おまけ付きお菓子のおまけだけを取り出し、お菓子を捨てる行為が社会問題になった
「食育」という言葉の始まり
「食育」という言葉は、明治時代の本にすでに登場していた
食育白書によると、「食育」という言葉は明治時代の2冊の本で使われていました。ただ、一般には広まらず、1980年代に本や論文の題名に使われる例はあったものの、食育と名のつく取り組みが広がることはなかったとされています。
参考:令和7年度 食育白書(第1部 特集 食育基本法のあゆみ)|農林水産省
食育基本法ができるまで
戦後の食料不足から、物があふれる「飽食の時代」へ
| 時期 | 食をめぐる主な出来事 |
|---|---|
| 第二次世界大戦中・終戦直後 | 食料が不足し、多くの人が低栄養の状態になる |
| 1947年 | 救援物資により、都市部から学校給食が再開される |
| 1954年 | 学校給食法ができる |
| 高度経済成長期 | 肉や乳製品の消費が増え、レトルトカレー、インスタントラーメン、冷凍食品などが登場する |
| 「飽食の時代」 | 生活習慣病などの新しい課題が生まれる |
戦後の日本は、食べ物が足りない時代から、食べ物があふれる時代へと大きく移り変わりました。核家族化や女性の社会進出も重なり、便利な加工食品が食卓に広がっています。食育白書は、豊かになった食生活の中で、生活習慣病のような新しい課題が生まれたと説明しています。
参考:令和7年度 食育白書(第1部 特集 食育基本法のあゆみ)|農林水産省
1980年代には、おまけ付きお菓子の問題が起きた
昭和の終わりが近づいた1980年代には、おまけ付きお菓子のおまけだけを抜き出し、お菓子の本体を捨ててしまう行為が社会問題になりました。食育白書は、この出来事を食育基本法ができるまでの流れの1つとして取り上げています。食べ物を大切にする心が問われた出来事だったといえるでしょう。
※食育白書には、問題になったお菓子の商品名は書かれていません。最後の一文は当サイトの読み方です。
参考:令和7年度 食育白書(第1部 特集 食育基本法のあゆみ)|農林水産省
2000年代には、食の安全への関心が一気に高まった
2000年代に入ると、BSE問題や食品の偽装事件が相次ぎ、食の安全・安心への関心が高まりました。法律ができる直前の2004年ごろには、次のような課題が挙げられていたと食育白書は説明しています。
- 栄養の偏りや、不規則な食事
- 肥満や生活習慣病の増加
- 過度に痩せようとする志向
- 食の安全の問題や、食料を海外に頼る問題
参考:令和7年度 食育白書(第1部 特集 食育基本法のあゆみ)|農林水産省
食育基本法の成立と、計画の移り変わり
食育基本法は2005年6月に成立し、7月に施行された
| 手続き | 日付 |
|---|---|
| 参議院本会議で可決・成立 | 2005年(平成17年)6月10日 |
| 公布(法律第63号) | 2005年(平成17年)6月17日 |
| 施行 | 2005年(平成17年)7月15日 |
食育基本法は、国民が健全な心と体を培い、豊かな人間性をはぐくむための食育を進めることを目的とした法律です。国は毎年、食育の推進のために行った施策を国会に報告しており、これが食育白書にあたります。
参考:令和7年度 食育白書(第1部 特集 食育基本法のあゆみ)|農林水産省
参考:令和7年度 食育白書(はじめに 食育推進施策の基本的枠組み)|農林水産省
4次にわたる計画で、重点は「知ってもらう」から「実践」へ広がった
| 計画 | 期間 | 主な考え方・重点 |
|---|---|---|
| 第1次 | 2006~2010年度 | 心身の健康、食への感謝、食文化や農山漁村への配慮など7つの基本的な方針 |
| 第2次 | 2011~2015年度 | 「周知」から「実践」へ。生活習慣病の予防、家庭での共食など |
| 第3次 | 2016~2020年度 | 「実践」の環を広げよう。若い世代、健康寿命、食文化の継承など |
| 第4次 | 2021年度~おおむね5年間 | 生涯を通じた心身の健康、持続可能な食、「新たな日常」やデジタル化への対応 |
計画は5年ごとに見直され、そのときどきの社会の課題に合わせて重点が変わってきました。第2次計画では、食育を「知ってもらう」段階から「実践してもらう」段階へと進めることが掲げられています。第4次計画では、環境に配慮した持続可能な食や、デジタル化への対応も加わりました。
参考:令和7年度 食育白書(第1部 特集 食育基本法のあゆみ)|農林水産省
2026年には法律が改正され、第5次計画が始まった
食育白書の公表後、改正された食育基本法が2026年5月27日に公布・施行されました。この法律にもとづき、6月24日には2026年度からおおむね5年間の「第5次食育推進基本計画」が決まっています。重点には、学校での食や農の学びの充実、「大人の食育」、食卓と生産現場の距離を縮める取り組みが並びました。
参考:「第5次食育推進基本計画」の決定について|農林水産省
データを読むときに気をつけたい3つの点
- 背景として挙げた出来事は、食育白書の特集でまとめられたものです。 食育基本法ができた理由のすべてを網羅したものではありません。
- おまけ付きお菓子の問題は、食育白書では1文で触れられているだけです。 どの商品で、どのくらいの規模の問題だったかは、白書からは分かりません。
- 2026年の法改正の中身は、この記事では詳しく扱っていません。 改正の内容は、農林水産省などの発表で確かめる必要があります。
まとめ
食育基本法は、食料不足の時代から「飽食の時代」へと移り変わるなかで生まれた法律です。1980年代のおまけ付きお菓子の問題や、2000年代の食の安全をめぐる出来事などを経て、2005年に「食育」が法律に書き込まれました。
その後の20年で計画は4回つくられ、2026年には法改正と第5次計画のスタートを迎えています。お菓子を含めた毎日の食べ物とどう向き合うかは、これからも食育の大切なテーマであり続けそうです。
この記事で使った資料
資料の一覧と、数字の数え方を見る
| 資料名 | 令和7年度 食育白書 |
|---|---|
| 発信元 | 農林水産省 |
| 公表日 | 2026年6月16日 |
| 集計の対象 | 特集「食育基本法のあゆみ」(食育基本法ができた背景と、食育推進基本計画の移り変わり) |
| 集計の単位 | ― |
| 資料名 | 「第5次食育推進基本計画」の決定について |
|---|---|
| 発信元 | 農林水産省 |
| 公表日 | 2026年6月24日 |
| 集計の対象 | 第5次食育推進基本計画の重点事項と計画期間、改正食育基本法の公布・施行日 |
| 集計の単位 | ― |
年号は、食育白書の表記(和暦)をもとに当サイトが西暦を併記しました。
