洋菓子店の倒産が2年連続で過去最多に|2025年度データから読み解く「街のケーキ屋さん」の現在地

近所にあったケーキ屋さんが、いつの間にか閉まっていた。そんな経験をした方は少なくないのではないでしょうか。
帝国データバンクが2026年5月2日に発表した「「洋菓子店」の倒産動向(2025年度)」によると、2025年度の倒産件数は65件に達し、2年連続で過去最多を更新しました。数字の裏側では、原材料の値上がりと売り場の競争という二つの圧力が同時に強まっています。
この記事では、帝国データバンクの倒産データに加え、全日本菓子協会の生産統計と矢野経済研究所の市場調査もあわせて、洋菓子店に何が起きているのかを順を追って整理していきます。
この記事で読み解く資料
- 「洋菓子店」の倒産動向(2025年度)帝国データバンク|2026年5月2日公表
- 「飲食料品小売」の倒産動向(2025年度)帝国データバンク
- 令和7年 菓子の生産数量・生産金額等(推定)全日本菓子協会|2026年4月1日公表
- 和・洋菓子、デザート類市場に関する調査を実施(2026年)矢野経済研究所|2026年3月25日公表
2025年度の洋菓子店倒産データの全体像
この記事で読み解く資料
- 「洋菓子店」の倒産動向(2025年度)帝国データバンク|2026年5月2日公表
- 「飲食料品小売」の倒産動向(2025年度)帝国データバンク
- 令和7年 菓子の生産数量・生産金額等(推定)全日本菓子協会|2026年4月1日公表
- 和・洋菓子、デザート類市場に関する調査を実施(2026年)矢野経済研究所|2026年3月25日公表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査元 | 株式会社帝国データバンク |
| 発表日 | 2026年5月2日 |
| 集計対象 | 負債1000万円以上・法的整理による倒産(菓子製造小売業) |
| 2025年度の件数 | 65件 |
| 前年度(2024年度)の件数 | 51件 |
| 増減 | 14件増(約3割増) |
まず押さえておきたいのは、この65件という数字が何を指しているかという点です。対象となっているのは、負債1000万円以上かつ法的整理による倒産に限られます。つまり、静かに店を畳んだ廃業や休業はこの数に含まれていません。売り場から姿を消した店の実数は、65という数字よりも多いと考えられます。
なお帝国データバンクが別途公表した「飲食料品小売」の倒産動向では、同じ65件が「菓子小売業(製造小売)」として計上されており、和菓子店なども含む区分になっています。洋菓子店だけを厳密に切り出した数字ではない点は、読み取るうえでの前提として頭に入れておきたいところです。
倒産件数は65件で過去最多を更新
2025年度(2025年4月〜2026年3月)の倒産件数は65件。前年度の51件から14件増え、2年続けて過去最多を塗り替えました。
前年度の51件も、その時点ですでに記録的な水準でした。それまで最も多かったのは2019年度の44件で、2024年度はこれを7件上回っています。記録更新が2年連続で起きた形です。
5年間の推移で見る増加のスピード

| 年度 | 倒産件数 | 前年度からの増減 |
|---|---|---|
| 2021年度 | 22件 | - |
| 2022年度 | 22件 | ±0件 |
| 2023年度 | 32件 | +10件 |
| 2024年度 | 51件 | +19件 |
| 2025年度 | 65件 | +14件 |
推移を並べると、増加が一時的なものではないことがはっきりします。2021年度と2022年度は22件で横ばいでしたが、2023年度から3年続けて増加。2021年度と比べると、4年でおよそ3倍の水準になりました。
グラフの点線は、それまでの最多だった2019年度の44件を示しています。2024年度以降は、その水準を大きく超えたところで推移していることが見て取れるはずです。
20件台だった時期に何があったのか
2021年度と2022年度が20件台にとどまっていた背景には、コロナ禍における資金繰り支援があったとみられます。実質無利子・無担保のいわゆるゼロゼロ融資などによって、本来なら行き詰まっていた店舗も事業を継続できた時期でした。
その支援が一巡した2023年度以降、抑えられていた分が表面化したという見方ができます。ここは公表資料に明記された分析ではなく、件数の推移と当時の政策からの推測になりますが、増加の起点が2023年度にあることはデータからも読み取れます。
食品小売全体のなかでの位置づけ

2025年度の飲食料品小売の倒産は358件で、前年度の321件から11.5%増えました。4年連続の増加であり、過去最多だった2013年度の375件に次ぐ、過去2番目の水準になります。
業態別に見ると、弁当や総菜などの「料理品小売」が104件で首位。菓子小売業(製造小売)の65件はこれに次ぐ2番目の多さです。パン小売業(製造小売)の21件と比べても、菓子の製造小売の件数は際立っています。食品小売全体が厳しいなかでも、増加が目立つ業態だったといえるでしょう。
倒産が増えた3つの要因
- 原材料と運営コストの上昇
- 中価格帯スイーツでの競争激化
- コストを価格に反映できない板挟みの状態
帝国データバンクは、この3つが重なったことを増加の背景として挙げています。それぞれを順に見ていきましょう。
要因1:原材料と運営コストの上昇
小麦粉、バターやクリームといった乳製品、そしてカカオ。洋菓子づくりに欠かせない材料が、軒並み記録的な高値で推移しています。
上がっているのは材料だけではありません。箱やリボンなどの包装資材、スタッフの人件費、オーブンや冷蔵ショーケースを動かす水道光熱費も同時に上昇しました。ケーキ1個をつくって売るまでにかかる費用が、あらゆる方向から押し上げられている状態です。
ケーキの原価は5年でどれだけ上がったのか
2025年4月に公表された前年度のレポートでは、より具体的な数字が示されています。帝国データバンクが店頭価格データなどをもとに算出した「ケーキ原価」によると、ホール18cm丸型のショートケーキの原価は、公表時点までの5年間で2割超上昇。チョコレートケーキの原価も、カカオ不足を背景に同じ5年間で約3割上がりました。
売価を据え置いたまま原価が2〜3割上がれば、利益はそのぶん削られます。数字にすると、値上げを避けることの重さが見えてくるのではないでしょうか。
別の統計でも同じ原材料高が確認できます
全日本菓子協会が2026年4月に公表した「令和7年 菓子の生産数量・生産金額等(推定)」でも、洋生菓子について同じ状況が記されています。卵、チョコレート、バター、油脂類、乳製品といったあらゆる原材料の価格が上昇し、包材費・物流費・光熱費も軒並み上がったという内容です。多くの企業が商品のアイテム数や生産量の削減を余儀なくされたとされています。
なかでもチョコレートの上がり方は際立ちました。同資料によると、2025年のチョコレートの消費者物価は前年比35.7%の上昇。菓子類全体の8.9%、消費者物価全体(生鮮食品を除く)の3.1%と比べると、桁が違う水準です。チョコレートケーキの原価が5年で約3割上がったという帝国データバンクの試算とも、方向が重なります。
要因2:中価格帯スイーツでの競争激化
もう一つの圧力は、売り場そのものの変化です。
かつて街の洋菓子店が得意としていた中高価格帯に、コンビニスイーツが本格的に進出しました。専門店に匹敵する品質の商品が、コンビニの棚に並ぶようになったわけです。帝国データバンクは、400〜600円前後の中価格帯で価格と顧客の獲得競争が激しくなっていると指摘しています。
さらに、店舗網を広げる大手洋菓子チェーンとの競争も加わりました。仕入れや製造をまとめてコストを下げられる大手に対し、個人経営や中堅規模の店は同じ土俵で戦いにくいという構造があります。
買う場所が量販店とコンビニに寄っています

この競争は、売り場のシェアにも表れています。矢野経済研究所が2026年3月に公表した調査によると、2024年度の和・洋菓子、デザート類市場を流通チャネル別に見た場合の構成比は次のとおりでした。
| 流通チャネル | 2024年度の構成比 |
|---|---|
| 量販店 | 35.5% |
| CVS(コンビニエンスストア) | 19.0% |
| 百貨店 | 16.3% |
| その他(法人需要等を含む) | 9.5% |
| 専門店・路面店 | 5.8% |
| 通販 | 5.0% |
| 駅関連 | 4.0% |
| 空港 | 3.9% |
| SA・PA | 1.0% |
量販店とコンビニエンスストアだけで、市場の半分を超える54.5%を占めています。専門店・路面店(ショッピングセンター内の専門店を含む)は5.8%。市場全体が前年度比4.0%増となったなかで、このチャネルだけがわずかに前年割れとなりました。それ以外はすべて前年を超えています。
「目的来店」が減ったという背景
同調査では、節約志向が広がるなかで専門店・路面店への目的来店が減少したと分析されました。専門店・路面店には個人経営の店が多く含まれます。日常的に買うお菓子は量販店やコンビニで済ませ、専門店へはわざわざ足を運ばなくなった、という行動の変化です。
売り場そのものが縮んでいるところに、コストの上昇が重なった。倒産件数の増加は、この2つが同時に起きた結果と見ることができるでしょう。
別の調査でも専門店の割合は下がっています
| 資料 | 指標 | 2025年(2024年度) | 前年 |
|---|---|---|---|
| モンテール スイーツ白書2026 | スイーツを購入する場所として「専門店」を挙げた割合 | 19.6% | 21.6% |
| 矢野経済研究所 | 和・洋菓子、デザート類の専門店・路面店の金額構成比 | 5.8% | ― |
洋生菓子メーカーのモンテールが公表した「スーパー・コンビニ スイーツ白書2026」でも、スイーツを買う場所として専門店を挙げた人は19.6%で、前年の21.6%から2.0ポイント下がりました。同じ調査でスーパーは64.0%、コンビニは46.2%です。
ただし2つの数字は測っているものが違います。モンテールは「買ったことがある場所」を複数選択で聞いたもの、矢野経済研究所は市場を金額で分けた構成比。並べて大小を比べることはできません。
いっぽうで方向は一致しています。専門店の割合が下がり、量販店とコンビニに寄っている。異なる設計の2つの調査が、同じ向きの結果を示した格好です。
なおモンテールの調査では、専門店を挙げた割合は年代が上がるほど高く、60代で31.7%、10代では10.6%でした。専門店を使う層が高齢に偏っている可能性を示す数字といえるでしょう。
要因3:コストを価格に反映できない板挟み
コストは上がる。けれど値上げすれば客足が遠のくかもしれない。この二つに挟まれた状態が、収益を直接圧迫しました。
節約志向が強まるなかで、消費者は価格に敏感になっています。客離れを恐れて値上げを見送った結果、粗利率が悪化した店舗が少なくありませんでした。地域で複数店舗を展開する中堅の洋菓子店で、利益を確保できずに市場から退出するケースが多く発生したと報告されています。
小さな店ほど値上げできていません
この板挟みが、店の規模によって差を生んでいることを示す記述が、全日本菓子協会の資料にあります。和生菓子の項に、価格引き上げができない小規模事業者が散見され、生産金額の上昇に見合う小売金額となっていないことが課題だと明記されているのです。
つくるのにかかる費用は上がったのに、売値に反映できていない。この状態が続けば利益は削られ続けます。営業利益率が平均0.7%まで落ち込んだという帝国データバンクの数字は、その帰結を別の角度から示したものといえるでしょう。
倒産した企業の9割近くは従業員10人未満です
| 区分 | 2025年度の件数 | 全体(358件)に占める割合 |
|---|---|---|
| 負債5,000万円未満 | 225件 | 62.8% |
| 従業員10人未満 | 320件 | 89.4% |
この数字は洋菓子店に限ったものではなく、飲食料品小売全体358件の内訳です。それでも、倒産の中心が小規模企業に寄っていることは読み取れます。帝国データバンクも、運営コストの急激な高騰分を価格転嫁できない小規模企業が経営難に直面していると分析しました。
規模が小さいほど仕入れの条件は不利になり、値上げの判断も客との距離が近いぶん重くなります。協会の資料にあった「価格引き上げができない小規模事業者」という記述と、同じ方向を向いた数字といえるのではないでしょうか。
数字に表れた洋菓子店の経営状態
| 指標 | 2025年度の数値 | 補足 |
|---|---|---|
| 営業利益率(平均) | 0.7% | 前年度から悪化。上下10%の刈り込み平均値 |
| 当期純利益が赤字の割合 | 約3割超 | ― |
| 業績悪化(赤字・減益)の割合 | 6割に迫る水準 | レポート掲載のグラフでは58.4% |
倒産件数だけでなく、業界全体の経営指標にも変化が表れました。なお損益に関する数値は2026年4月時点のもので、一部に推定値が含まれます。
営業利益率は平均0.7%まで低下
2025年度の洋菓子店の営業利益率は、平均で0.7%。売上高1万円あたりの営業利益が70円という計算になります。
この水準は、食品をはじめとする物価が急上昇した2022年度以来の低さです。言い換えると、2023年度と2024年度のどちらよりも低い数字。原材料高への対応が、3年たっても解消されていないことを示しています。
業績悪化の割合は6割に迫る

最終損益が赤字となった洋菓子店は約3割超。減益となった店を含めた「業績悪化」の割合は6割に迫りました。
つまり、倒産に至らなかった店のうち6割近くが、前の年より苦しい決算を迎えていたことになります。65件という数字は、業界全体で進んでいる収益悪化の一部が表面化したものと見るのが自然でしょう。
前年度からは下がっている点にも注意
グラフを見ると、業績悪化の割合は2024年度の62.1%から2025年度は58.4%へと、わずかに下がっています。悪化が加速し続けているわけではありません。
とはいえ、2022年度以降は60.9%、58.4%、62.1%、58.4%と、6割前後の水準が4年続いています。6年のなかで最も低いのは2021年度の51.5%で、コロナ禍の資金繰り支援があった時期にあたります。数字が改善に向かっているというより、厳しい状態のまま高止まりしていると捉えるほうが実態に近いのではないでしょうか。
2020年度の数値は資料によって違います
同じ帝国データバンクのレポートでも、2020年度の値は0.2ポイント違います。この記事のグラフは2025年度版にそろえました。集計対象の企業が後から補正されたのか、読み取り方の違いなのかは、両レポートの記述からは分かりません。
実質値上げが裏目に出たケースも
値上げを避けるかわりに、商品のサイズを小ぶりにして対応した店もありました。いわゆる実質値上げです。
ところが、この対応が顧客満足度の低下を招き、かえって客離れにつながった例も報告されています。値上げしても、しなくても難しい。経営判断の難しさが浮かび上がる部分です。
倒産に至らなかった店にも起きていたこと
倒産件数と経営指標だけを見ていると、廃業した店の話に見えてしまいます。ただ、業界統計に目を移すと、営業を続けている店にも同じ圧力がかかっていたことが分かります。
生菓子は市場全体の伸びに追いついていません

2025年の菓子小売金額は4兆996億円となり、初めて4兆円を超えました。全体では5.7%の伸びです。ところが洋生菓子(ケーキ、カステラ、ドーナツなど)の伸びは1.4%にとどまりました。市場全体が伸びるなかで、生菓子だけが取り残されている構図。
洋菓子店では減産と品目の絞り込みが起きました
全日本菓子協会の資料は、洋生菓子の生産数量が減った理由として次の点を挙げています。
- 人手不足による生産能力の低下
- 夏の猛暑による焼き菓子の売れ行き不振に伴う生産調整
- 価格改定による需要の減退
いっぽうで、原材料の工夫による新製品投入や機械化・省力化によって生産数量を増やした企業もあり、これらが相殺し合った結果、全体の減少幅はわずかにとどまったと分析されました。減っていないから安泰、とは読めない中身です。
なお洋生菓子の生産金額は、前年並みの水準でした。原材料費が上がったぶんは価格に乗せたものの、数量が減ったことで金額が伸びなかった、という読み方ができるでしょう。
和菓子店も同じ構図にあります
倒産件数の65件は「菓子小売業(製造小売)」として集計されており、和菓子店なども含む区分です。では和菓子側はどうだったのでしょうか。
協会の資料によると、和生菓子は中元・歳暮に代表される贈答品需要と法人の進物需要の減少傾向に歯止めがかからず、生産数量が前年を下回りました。手土産需要は順調に推移し、家庭内消費も底堅い需要を維持しているものの、全体としては弱い状況が続いています。
贈答が減り、手土産は残る。矢野経済研究所が指摘した「目的来店の減少」と、同じ方向を向いた変化といえます。
インバウンドの恩恵は届いていません
2025年の訪日外国人数は約4,268万人と過去最多になり、外国人による菓子の購入額は約4,700億円と推計されました。数字だけを見れば追い風です。
ところが協会の資料では、洋生菓子について、その効果は主に土産用菓子や流通菓子が中心とみられ、洋菓子を扱う店舗や企業で顕著な効果は確認されなかったと記されています。同じ資料の和生菓子の項にも、訪日外国人の関心は高いものの購入までは結びついていないとの報告があります。
インバウンドで潤ったのは、空港や土産物売り場に並ぶ日持ちする菓子であって、街のケーキ屋さんではなかった。統計はそう示しています。
実際に事業継続を断念した店の例
| 企業名 | 所在地 | 事業の状況 | 挙げられた要因 |
|---|---|---|---|
| グランドルチェ | 千葉 | ショッピングセンターなど7店舗を展開 | 原材料価格の高騰、人件費の上昇 |
| 白鳥菓子工房 | 埼玉 | フランス菓子の店として知られていた | もともと収益性が低く、原材料価格の高騰が追い打ちに |
レポートでは、2025年度に事業継続を断念した具体的な企業名も示されています。
複数店舗を展開していた中堅店の例
千葉のグランドルチェは、ショッピングセンターなどで7店舗を展開していました。一定の規模がありながら、原材料価格の高騰と人件費の上昇に耐えきれず、事業の継続を断念しています。
店舗数が多ければ安泰、とは限らないことを示す例ではないでしょうか。むしろ複数店舗を抱えるぶん、固定費の増加がそのまま重荷になったとも考えられます。
支持を集めていた専門店の例
埼玉の白鳥菓子工房は、フランス菓子の店として知られた存在でした。もともと収益性が高くなかったところに原材料価格の高騰が重なり、事業の継続が困難になっています。
知名度や評判があっても、収益構造が薄ければ持ちこたえられない。数字が示しているのは、そういう現実です。
厳しい環境でも利益を保っている店の動き
- ブランド力と品質への支持を土台に、値上げを受け入れてもらう
- InstagramなどSNSを活用して集客につなげる
- ケーキを完全予約制にして廃棄ロスをなくす
一方で、利益水準を維持、あるいは拡大している店もあります。レポートではその共通点として、上の3点が挙げられました。
値上げを納得してもらえる関係づくり
独自のブランド力と品質への支持を得ている店では、原材料費の高騰を理由とした値上げが受け入れられています。価格そのものより、その価格に見合う理由が伝わっているかどうかが分かれ目になっているようです。
情報発信と受注方法の見直し
SNSでの発信は、広告費をかけずに来店動機をつくる手段になります。完全予約制については、売れ残りをゼロに近づけられる点が大きいところです。廃棄ロスは、そのまま利益を削る要素だからです。
ただし、こうした取り組みができる店は限られるとも指摘されています。日々の製造と販売に追われる小規模店にとって、発信や仕組みの変更に割ける余力は多くありません。
今後の見通し
帝国データバンクの見方
帝国データバンクは、カカオなどの原材料価格が引き続き高い水準で推移すると見込んでおり、利益を確保できずに淘汰される洋菓子店は今後も高水準で推移するとの見方を示しました。
飲食料品小売全体についても、小規模企業を中心に淘汰が進み、倒産件数は高水準で推移すると予想されています。いずれも2026年5月時点の見通しであり、今後の原材料相場や価格転嫁の進み具合によって変わりうる点は押さえておきたいところです。
お菓子好きの立場から見えること
ケーキの価格が上がったと感じる場面は、この数年で増えました。データを追うと、その値上げが利益を伸ばすためのものではなく、上がった原価を追いかける形での対応だったことが分かります。
行きつけの店が値上げをしたとき、それは店を続けるための判断かもしれません。予約して買う、シーズン商品を楽しみに出かける。そうした行動が、街のケーキ屋さんを支える側面もあるのではないでしょうか。
読むときに気をつけたい4つの点
倒産件数は目を引く数字だけに、何を数えたものなのかを押さえておきましょう。
廃業・休業はこの65件に入っていません
集計対象は負債1000万円以上かつ法的整理による倒産です。借入が少ないまま静かに店を畳んだケースや、後継者がいないまま営業をやめたケースは含まれません。売り場から姿を消した店の数は、65件よりも多いと考えるのが自然でしょう。
「洋菓子店」だけを切り出した数字ではありません
帝国データバンクの「飲食料品小売」レポートでは、同じ65件が「菓子小売業(製造小売)」として計上されています。和菓子店なども含む区分ですから、洋菓子店に限った件数として読むと実態からずれます。
損益データは時点と算出方法に条件があります
営業利益率0.7%は上下10%を除いた刈り込み平均値です。また損益に関する数値は2026年4月時点のもので、一部に推定値が含まれると明記されています。業績悪化割合の58.4%も、レポート掲載のグラフから読み取った数値です。
コロナ禍の資金繰り支援の話は推測です
2021年度と2022年度が22件にとどまった背景として、この記事ではゼロゼロ融資などの資金繰り支援を挙げました。ただし、これはレポートに書かれた分析ではありません。件数の推移と当時の政策から導いた推測であることを、あらためて申し添えておきます。
まとめ|洋菓子店の倒産動向から見えたこと
2025年度の洋菓子店倒産データから読み取れる点を整理します。
- 倒産件数は65件で、2年連続の過去最多更新
- 前年度の51件から14件増。2021年度の22件と比べると4年でおよそ3倍に
- 背景には原材料・包装資材・人件費・光熱費の同時上昇がある
- 400〜600円前後の中価格帯で、コンビニスイーツや大手チェーンとの競争が激化
- 営業利益率は平均0.7%まで低下し、業績悪化の割合は6割に迫った
- 売り場のシェアは量販店とコンビニで54.5%を占め、専門店・路面店は5.8%。このチャネルだけが前年割れとなった
- 菓子市場全体の小売金額が5.7%伸びたなかで、洋生菓子は1.4%増にとどまった
- 訪日外国人の菓子購入額は約4,700億円と過去最高だが、その効果は土産用菓子や流通菓子が中心で、洋菓子店には届いていない
- 値上げできるブランド力、SNS活用、完全予約制といった対応で持ちこたえる店もある
数字が示しているのは、街のケーキ屋さんが置かれた環境の変化です。原材料が上がり、売り場のシェアが量販店とコンビニに移り、インバウンドの恩恵からは外れている。3つの資料が、それぞれ別の角度から同じ方向を指しています。
おいしいケーキが当たり前に買える状況は、決して自動的に続くものではありません。
菓子市場全体の動きについては、2025年のお菓子市場を統計で読み解く記事であらためて詳しく取り上げています。
参考:「洋菓子店」の倒産動向(2024年度)|帝国データバンク
参考:「飲食料品小売」の倒産動向(2025年度)|帝国データバンク
参考:令和7年 菓子の生産数量・生産金額等(推定)|全日本菓子協会
参考:和・洋菓子、デザート類市場に関する調査を実施(2026年)|矢野経済研究所