2025年のお菓子市場を統計で読み解く|4兆円の裏側で起きていたこと

2025年の菓子の小売金額は4兆996億円
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2026年の春、お菓子に関するデータが相次いで公表されました。ひとつは全日本菓子協会がまとめた「令和7年 菓子の生産数量・生産金額等(推定)」、もうひとつは矢野経済研究所による「和・洋菓子、デザート類市場に関する調査を実施(2026年)」です。

見出しになったのは「小売金額が初めて4兆円を超えた」という数字でした。ところが全日本菓子協会の資料には、生産数量が2年続けて減ったことも、家計の菓子支出が物価の影響を除くとマイナスだったことも記されています。金額と数量が逆方向に動いたこの一年に何が起きていたのか、2つの資料を突き合わせながら詳しく見ていきましょう。

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目次

この記事で扱う2つの統計

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2つの統計の守備範囲と前提条件の違い

同じ「お菓子」を扱う統計でも、全日本菓子協会のデータと矢野経済研究所の調査は守備範囲がほとんど重なりません。数字を読む前に、まずそこを押さえておきます。

対象が重なるのは和菓子・洋菓子の領域だけです

全日本菓子協会のデータは、菓子、チョコレート、チューインガムせんべいビスケット米菓、和生菓子、洋生菓子スナック菓子、油菓子、その他という11ジャンルで構成されています。アイスクリームヨーグルトプリンは含まれません。

対する矢野経済研究所の調査は、和菓子洋菓子、デザート類(ヨーグルトプリンゼリー・その他チルドデザート類)、アイス類(アイスクリーム氷菓)の4分野が対象です。チョコレートスナック菓子は入っておらず、これらは同社が別途実施している「流通菓子市場」の調査で扱われています。

つまり重なりうるのは和菓子洋菓子の領域に限られ、そこでも区分の切り方は完全には一致しません。

協会のジャンルには何が含まれるのでしょうか

協会の資料には凡例が付いており、各ジャンルの中身が示されています。

ジャンル 含まれる主な品物
菓子 キャンディ類、キャラメル、ドロップ、グミ、錠菓、清涼菓子、ゼリーマシュマロ
チョコレート チョコレート製品(Ⅰ)(Ⅱ)、チョコレート菓子
チューインガム ガム、粒ガム、風船ガム、シュガーレスガム
せんべい 小麦粉せんべい
ビスケット ビスケットクッキークラッカー、プレッツェル、乾パンパイ、サンドビスケット
米菓 あられ(もち米製)、せんべい(うるち米製)
生菓子 ようかん、まんじゅう、その他
生菓子 ケーキカステラドーナツ、その他
スナック菓子 ポテト系、コーン系、小麦粉系、米粉系
油菓子 かりんとう など
その他 豆菓子、甘納豆、玩具菓子、おこし、砂糖漬菓子 など

せんべい」と「米菓」が別々に立っている点には注意が必要でしょう。協会の区分では、小麦粉を原料とするものが「せんべい」、米を原料とするものが「米菓」です。

集計の単位と金額の基準も揃っていません

項目 全日本菓子協会 矢野経済研究所
集計の単位 暦年(1〜12月) 年度(4〜翌3月)
金額の基準 生産金額・小売金額 メーカー出荷金額
数値の性格 推定値 推計値・予測値
公表日 2026年4月1日 2026年3月25日

期間の区切り方が「暦年」と「年度」で異なるうえ、金額をどの流通段階でとらえるかも違います。協会のデータには小売段階まで含む推定値がある一方、矢野経済研究所はメーカーの出荷段階で市場規模を算出しました。

2つの数字は足し合わせられません

前提がこれだけ違えば、両者の金額を合算したり大小を比べたりはできません。それぞれ別の角度から市場を切り取った資料として読むのが適切といえるでしょう。なお矢野経済研究所の調査では、2024年度までのアイス類の市場規模は一般社団法人日本アイスクリーム協会から引用されています。


動向1:小売金額が初めて4兆円を超えました

指標 2023年 2024年 2025年 2025年の前年比
生産数量 199万6,702トン 198万4,654トン 196万8,100トン 0.8%減
生産金額 2兆6,774億円 2兆7,886億円 2兆9,403億円 5.4%増
小売金額 3兆6,835億円 3兆8,785億円 4兆996億円 5.7%増

2025年の菓子小売金額は4兆996億円となり、4兆円の大台に初めて到達しました。生産金額も2兆9,403億円まで積み上がっています。

菓子の小売金額と生産数量の推移

金額は5年連続のプラス、数量は2年連続のマイナスです

全日本菓子協会の資料はこの結果を「生産数量は2年連続のマイナス、生産金額や小売金額は5年連続のプラス」と表現しました。数量と金額が別々の方向を向いた状態が、2年続いたことになります。

小売金額と生産数量の前年比推移

前年比で並べると、小売金額と生産数量の差が開いた時期がはっきりします。生産数量は2023年まで前年を上回っていましたが、2024年に0.6%減、2025年も0.8%減と2年続けて前年割れとなりました。その間も小売金額は5%台の伸びを保っています。

コロナ禍前と比べるとどうでしょうか

2025年の生産数量196万8,100トンは、2019年の201万6,162トンに届いていません。全国菓子工業組合連合会が伝えた協会の説明でも、2019年と比較して生産数量は依然として及ばないものの、生産金額や小売金額は価格改定などを背景に同水準を超えたとされています。数量の回復と金額の回復が、別々の時間軸で進んでいるわけです。

ひとつ補っておくと、2019年が直近のピークだったわけではありません。協会の資料では2018年(平成30年)が203万4,337トンで、2019年をさらに上回っています。2019年はあくまで「コロナ禍の直前の年」として比較に使われている、と捉えておくのが正確でしょう。

なお2018年や2021〜2022年といった過去の数値は、令和7年の資料には載っていません。協会が年ごとに公表している「菓子データ」から、それぞれの年のPDFを参照しています。この記事のグラフに使った過去の数値も同じ資料によるものです。

過去の数値は後から書き換わることがあります

同じ年の数字でも、公表された時点によって値が変わる場合があります。2023年(令和5年)がその例です。

指標 令和5年公表時の値 令和7年の資料での値
生産数量 199万6,411トン 199万6,702トン
生産金額 2兆6,701億円 2兆6,774億円
小売金額 3兆6,835億円 3兆6,835億円

この記事では新しいほうの値を採用しました。過去の記事や報道と数字が合わない場合、こうした遡及改定が理由になっていることもあります。


動向2:値上がりの幅は物価全体を大きく上回りました

2025年の物価と家計の動き

菓子類は8.9%、チョコレートは35.7%上がりました

指標 2025年の前年比 補足
企業物価指数 3.2%上昇 126.7(2020年平均=100)、5年連続のプラス
消費者物価指数(生鮮食品を除く) 3.1%上昇 111.2、4年連続のプラス
菓子類の消費者物価 8.9%上昇
チョコレートの消費者物価 35.7%上昇
実質賃金 1.3%減少 12月まで12カ月連続のマイナス、通年で4年連続のマイナス

物価全体が3%台の上昇にとどまるなかで、菓子類は8.9%上がりました。チョコレートにいたっては35.7%の上昇です。原材料費・物流費・人件費の上昇分を各社が販売価格に転嫁した結果といえます。

実質賃金は4年連続のマイナスです

値上がりの一方で、実質賃金は通年1.3%減となり、4年続けてマイナスとなりました。12月まで12カ月連続でマイナスが続いています。買う側の財布は前年より軽くなったところに、菓子の値札だけが8.9%上がった格好です。

消費は二極化しました

全日本菓子協会の資料では、この状況下で消費の二極化が見られたと説明されています。節約のためにコストパフォーマンスの良い大袋商品が選ばれる一方、ライフスタイルに合わせた商品や健康・機能性を訴求した付加価値の高い商品も購入されました。安いものだけが売れたわけではなく、支出のメリハリがついた、と読むほうが実態に近いのではないでしょうか。


動向3:家計は「名目で増、実質で減」でした

指標 2025年の前年比
1世帯当たりの菓子支出金額(名目) 5.9%増
1世帯当たりの菓子支出金額(実質) 2.8%減
家計消費支出全体(実質) 0.9%増
食料支出(実質) 1.2%減

家計調査の結果は、金額と数量のねじれをさらにはっきり示しています。1世帯当たりの菓子支出金額は名目で5.9%増えました。ところが物価の影響を除いた実質では2.8%減と、前年に続いてマイナスです。

全日本菓子協会の資料では、賃上げが不十分ななかで食品全体の値上げが進み、消費者の節約志向が高まったことなどから、嗜好性のある菓子の購入数量が影響を受けているとみられる、と説明されています。

伸びが最も小さかったのはチョコレートでした

家計の菓子支出は品目で伸びに差がありました

1世帯当たりの年間支出は11万526円。品目別に見ると伸び幅に差があり、他の菓子が10.1%増、ビスケットが9.8%増と大きく伸びた一方、チョコレートは1.6%増にとどまりました。

物価が35.7%上がった品目の支出額が1.6%しか増えていない。この対比は、購入数量がかなり絞られたことをうかがわせます。

ちなみに2025年の家計消費支出に占める食料の割合は30.2%、その食料のうち菓子が占める割合は9.7%でした。

品目ごとの内訳や、月による支出の山と谷については家計から見た菓子の買われ方の記事で詳しく取り上げています。


動向4:11ジャンルの明暗が分かれました

ジャンル 生産数量 生産金額 小売金額 数量の前年比 生産金額の前年比 小売金額の前年比
菓子 17万9,702トン 2,417億円 3,309億円 1.9%増 4.5%増 5.3%増
チョコレート 21万736トン 4,867億円 7,105億円 9.0%減 13.0%増 12.6%増
チューインガム 1万8,700トン 534億円 790億円 3.1%減 0.8%増 0.6%増
せんべい 5万8,783トン 612億円 893億円 7.7%増 9.3%増 10.0%増
ビスケット 24万7,100トン 3,170億円 4,730億円 微増 6.0%増 7.3%増
米菓 21万9,982トン 3,147億円 4,220億円 0.6%減 1.3%増 1.3%増
生菓子 28万2,000トン 4,357億円 5,356億円 1.7%減 5.0%増 4.0%増
生菓子 18万5,080トン 3,210億円 4,394億円 0.2%減 前年並み 1.4%増
スナック菓子 28万9,359トン 4,272億円 6,042億円 0.1%減 4.8%増 3.9%増
油菓子 5万8,383トン 357億円 663億円 2.7%増 2.6%増 9.6%増
その他 21万8,275トン 2,460億円 3,494億円 1.2%増 7.3%増 7.3%増
合計 196万8,100トン 2兆9,403億円 4兆996億円 0.8%減 5.4%増 5.7%増
ジャンル別に見た2025年の前年比

数量・金額がそろって伸びた5ジャンル

菓子、ビスケットせんべい、油菓子、その他の5ジャンルは、生産数量・生産金額・小売金額のすべてで前年を上回りました。

このうちビスケットの生産数量は24万7,000トンから24万7,100トンへの増加で、資料に載っている対前年増減率は100.0と表示されています。増えた幅がごくわずかなため、全日本菓子協会は本文で「微増」と表現しました。上の表でもその表記に合わせています。

数量が減っても金額が伸びた6ジャンル

残るチョコレート、チューインガム米菓、和生菓子、洋生菓子スナック菓子の6ジャンルでは、生産数量が前年を下回りました。それでも小売金額はいずれも前年を超えています。なお洋生菓子の生産金額については、全日本菓子協会の資料に「前年並みの水準となった」と記されています。

数量シェアと金額シェアのズレが商品ごとの価格差を映します

生産数量と小売金額でシェアはどう変わるか

同じ11ジャンルを、生産数量の構成比と小売金額の構成比で並べ替えてみましょう。すると別の姿が浮かび上がってきました。

ジャンル 生産数量の構成比 小売金額の構成比
チョコレート 10.7% 17.3% 6.6ポイント
チューインガム 1.0% 1.9% 0.9ポイント
生菓子 9.4% 10.7% 1.3ポイント
スナック菓子 14.7% 14.7% 増減なし
生菓子 14.3% 13.1% △1.2ポイント
ビスケット 12.6% 11.5% △1.1ポイント
米菓 11.2% 10.3% △0.9ポイント
菓子 9.1% 8.1% △1.0ポイント
せんべい 3.0% 2.2% △0.8ポイント
油菓子 3.0% 1.6% △1.4ポイント
その他 11.1% 8.5% △2.6ポイント

チョコレートは重量ベースでは全体の10.7%にすぎませんが、小売金額では17.3%を占めます。同じ重さでも売り上げに換算したときの大きさが違う、ということです。逆に油菓子やその他は、重量に比べて金額のシェアが小さくなりました。

半生菓子は参考値として別に集計されています

協会の資料には、参考値として半生菓子(一般に水分が10〜30%のもの)の数値も載っています。小物ようかん、小最中、小まんじゅう、カステラ、カップケーキバウムクーヘンなどが該当する区分です。

指標 2023年 2024年 2025年 2025年の前年比
生産数量 3万435トン 3万315トン 3万1,224トン 3.0%増
生産金額 349億円 351億円 365億円 4.0%増
小売金額 552億円 583億円 603億円 3.4%増

数量は2024年にいったん0.4%減ったあと、2025年に持ち直しました。小売金額のほうは552億円から603億円へ3年続けて増えています。11ジャンルの合計と同じく、金額が先に伸びる形です。

半生菓子は11ジャンルの合計に足せません

この数値は全国半生菓子協会が調べたもので、協会の11ジャンルとは別の集計です。しかも凡例を見比べると、区分が重なっていることが分かります。

区分 凡例に挙げられている品物
生菓子 ケーキカステラドーナツ、その他
生菓子 ようかん、まんじゅう、その他
生菓子(参考) 小物ようかん、小最中、小まんじゅう、カステラ、カップケーキバウムクーヘン など

カステラは洋生菓子にも半生菓子にも登場します。ようかんとまんじゅうも同様です。両者がどう切り分けられているのか、資料に説明はありません。

ですから半生菓子の603億円を、菓子全体の4兆996億円に足すことはできません。参考として並べられた別の物差し、と受け取っておくのが安全でしょう。


動向5:ジャンルごとの事情を読み解きます

ここからは全日本菓子協会の資料に記されたジャンル別の説明を、順に確認していきます。

飴菓子|グミの好調で生産ラインの増設もありました

グミ市場はブームを背景に好調で、生産ラインを増設する企業もありました。のどを中心としたハードキャンディー類も、健康志向を受けて比較的堅調に推移しています。円安による原材料価格の高止まりや人件費・物流費の高騰でコストは上がりましたが、価格転嫁に努めた結果、数量は微増、金額は伸長という着地になりました。

チョコレート|数量9.0%減・小売金額12.6%増でした

指標 2024年 2025年 前年比
生産数量 23万1,477トン 21万736トン 9.0%減
生産金額 4,307億円 4,867億円 13.0%増
小売金額 6,312億円 7,105億円 12.6%増

11ジャンルのなかで、チョコレートだけが数量と金額の両方で二桁の変化を記録しました。協会の資料自身が「例年にない大きな対前年増減率」と記しています。

数量が落ちた理由として挙げられているのは、カカオ原料の調達不足による生産調整と、度重なる価格改定による販売数量の伸び悩みです。インバウンドによる土産需要は貢献したものの、それを上回る下押し要因が働きました。

製品Ⅰから製品Ⅱへの移行が起きました

協会の凡例では、チョコレート製品(Ⅰ)はチョコレート生地100%の板チョコや粒チョコ、製品(Ⅱ)は生地60〜100%未満のナッツチョコなどを指します。

価格上昇を抑えるため、製品(Ⅰ)から製品(Ⅱ)へ移行する動きが見られました。この結果、分類上は製品(Ⅰ)の生産数量が落ち込む一方、価格改定もあって販売金額は前年を上回っています。製品(Ⅱ)は移行分もあって生産数量が前年を維持しました。カカオ豆を減らした商品開発や植物油脂への代替も進んでいます。

なおチョコレートの価格改定は、そのジャンルの中だけで完結しませんでした。協会の資料では、他の商品ジャンルの購買行動にも影響を与えたと説明されています。

チューインガム|機能性が市場を引っ張りました

数量は前年に比べ減少したものの、生産金額や小売金額は微増となりました。生活者の健康意識の高まりを背景に、ガムが持つ口腔ケアやエチケットという機能的価値が再認識された一年です。

市場規模の大きい「歯の健康を保つ」機能性表示食品や特定保健用食品が牽引役となりました。対面によるコミュニケーションの増加を受けて、口臭除去・清涼感を目的としたニーズも再び高まっています。輸出は、数量・金額ともに大きかったアラブ首長国連邦や中国での減少が影響し、全体として前年を下回りました。

せんべい(小麦粉)|万博効果が大阪で出ました

生産数量・生産金額・小売金額のすべてが順調に伸びました。原材料価格や資材価格、エネルギー費、物流費、人件費の高騰でほとんどの事業者が価格転嫁したものの、利益は圧迫される状況が続いています。人手不足を背景としてか、他社に応援を仰ぐ加工賃が増えた点も特徴でした。

販売面では大阪・関西万博の開催によって大阪での伸びが大きく、北陸全体やその他の地区も順調に推移しています。

ビスケット|大袋商品とチョコ系が伸びました

生産数量は、製品価格の改定や規格改定が続くなかで微増となりました。内訳ではハードビスケットが前年を下回った一方、ソフトビスケットクッキー)とクラッカーは引き続き増加しています。パイ加工品は増加に転じました。乾パンについては、前年の南海トラフ地震臨時情報発表による需要増の反動減があったと記されています。

節約志向が高まるなかでも販売は比較的堅調でした。ベーシックなロングセラー商品への回帰が続き、コストパフォーマンスの良い大袋商品も伸びています。チョコレート価格が上昇するなかで、チョコレートコーティングビスケットチョコレートサンドビスケットの販売が好調だった点も見逃せません。

米菓|原料米の不足が響きました

米菓の数量が減った背景には、原料の事情がありました。令和6年産米も前年産に続いて特定米穀が大幅に減少し、主食用米の供給不足による価格高騰が加工原料米にも及んでいます。国産もち米は主食用うるち米への作付転換で減産も生じました。

各社は価格改定や規格変更に加え、もち米商品からうるち米商品への販売構成の変更、もち米商品の終売といった対策を講じています。結果として、もち米を使う「あられ」は1.2%減、うるち米を使う「せんべい」は0.2%減、全体で0.6%減という数量になりました。生産金額と小売金額は、価格改定が行われたもののわずかな伸びにとどまっています。

和生菓子|贈答需要の落ち込みが続きます

生産数量については、中元・歳暮に代表される贈答品需要と法人の進物需要の減少傾向に歯止めがかかっていません。手土産需要は順調に推移し、家庭内消費も底堅い需要を維持していますが、全体としては弱い状況が続き前年を下回りました。

生産金額は原材料費・エネルギー費・人件費の増加により上昇しました。ただし製品値上げについては、価格引き上げができない小規模事業者が散見され、生産金額の上昇に見合う小売金額となっていないことが課題として挙げられています。インバウンドについては、訪日外国人の和生菓子への関心の高さは見受けられたものの、その関心が購入に結びついていない状況でした。

洋生菓子|猛暑と人手不足が重なりました

卵、チョコレート、バター、油脂類、乳製品といったあらゆる原材料の価格が上昇し、包材費・物流費・光熱費も軒並み上がりました。多くの企業は商品のアイテム数や生産量の削減を余儀なくされています。

そこに人手不足による生産能力の低下、夏の猛暑による焼き菓子の売れ行き不振に伴う生産調整、価格改定による需要減退が重なりました。いっぽうで、原材料の工夫による新製品投入や機械化・省力化で生産数量を増やした企業もあり、こうした動きが相殺し合った結果、全体の生産数量はわずかな減少にとどまったと分析されています。

インバウンドについては、訪日外国人が年間4,000万人を超える規模に達したとされるものの、その効果は主に土産用菓子や流通菓子が中心とみられ、洋菓子を扱う店舗や企業で顕著な効果は確認されませんでした。

スナック菓子|ポテトの不作を成型ポテトが補いました

実質賃金のマイナスが続くなか、消費者の購買力低下の影響を受けました。金額では価格改定もあって前年比5%近い伸びを確保した一方、数量はコロナ禍以降の横ばいが長期にわたって続いています。この頭打ち傾向には、秋以降のインバウンド需要の低下も影響しているとみられています。

スナック菓子の過半を占めるポテトチップスは、2024年および2025年産ばれいしょの不作と生産を取り止めたメーカーの存在から、金額はやや増加したものの数量は前年並みにとどまりました。これを補うように、輸入ポテトフレークの高騰にもかかわらず成型ポテトが数量・金額ともに大きく伸びています。

ポテトチップスに次ぐコーン系は、円安による原料とうもろこしの価格高騰に悩まされ、数量は横ばい、金額は大きな伸びという結果になりました。

スナック菓子には別の統計もあります

スナック菓子については、日本スナックシリアルフーズ協会も「スナック菓子の年別出荷数量及び金額」を公表しています。集計する団体が違うため、数字は一致しません。

項目 全日本菓子協会 日本スナックシリアルフーズ協会
2025年の数量 28万9,359トン(生産数量) 27万1,033トン(出荷数量)
2025年の金額 生産4,272億円/小売6,042億円 出荷4,147億円

いっぽうで、両者が示す方向は一致しています。スナック協会のデータでもポテトチップスの数量は99.1%と前年をわずかに下回り、成型ポテトは106.1%と伸びました。別々の統計が同じ現象を裏づけている格好です。区分別の詳細はスナック菓子の出荷データの記事にまとめています。

油菓子|数量・金額ともに伸びました

原材料費・エネルギー費・人件費・物流費の高止まりあるいは上昇が続き、経営環境は厳しさを増しました。そのなかで関係先の理解を得つつ価格改定や規格変更が行われ、小売金額は9.6%増と11ジャンル中3番目の伸びとなっています。節約志向や低単価志向が強まるなかで一部製品の販売数量は減ったものの、全体では数量もわずかに増加しました。

その他|玩具菓子が押し上げました

豆菓子は生産数量が前年並みにとどまり、生産金額や小売金額は価格改定もあって前年より伸びました。

ここ数年伸長している玩具菓子は、製造コストの上昇が続くなかでも各社がカード系やシール系への注力を維持しています。売上上位の企業では、複数購入やリピート購入を促す玩具や雑貨を添付する商品展開によって販売量の底上げが図られました。以上から、全体では数量・金額ともに前年を上回っています。


動向6:輸出と訪日需要は過去最高を更新しました

指標 2025年 前年比
菓子の輸出額 505億円 6.0%増(過去最高)
菓子の輸入額 1,105億円 11.6%増(過去最高)
訪日外国人数 約4,268万人 過去最多
訪日外国人の菓子購入額 約4,700億円(推計) 過去最高
菓子の輸出額・輸入額の推移

輸出は505億円、輸入は1,105億円です

円安傾向を追い風に、菓子の輸出額は505億円と過去最高を更新しました。品目別ではキャンディー類が134億円(7.7%増)、一部のチョコレート菓子が108億円(23.9%増)、その他砂糖菓子が61億円(8.6%増)の順です。

いっぽう輸入額は1,105億円で、輸出額の2倍を超える規模でした。こちらも過去最高です。品目別では一部のチョコレート菓子が299億円(8.5%増)、ビスケットクッキークラッカー砂糖を加えたもの)が188億円(2.3%増)、キャンディー類が174億円(15.4%増)となっています。

輸出品の平均単価は輸入品を上回っています

輸出品の平均単価は輸入品を上回っています

通関実績の数量と金額から算出した平均単価は、2025年で輸出1,701円/kg、輸入1,083円/kg。輸出のほうが1.57倍高く、この差は3年間ほぼ変わっていません。重量あたりの単価が高い菓子を出し、安い菓子を大量に入れているという構図です。

相手国は輸出と輸入で顔ぶれが違います

菓子の輸出先・輸入元の上位5カ国

輸出先はアメリカ(19.6%)を筆頭に香港・中国台湾韓国が続き、上位5カ国・地域で全体の73.2%を占めます。対する輸入元は中国(18.8%)に加えてイタリアベルギーフランスドイツと欧州が並びました。

品目ごとの相手国の違いや、輸出入の単価が品目でどう変わるかについては菓子の輸出入データを読み解く記事で詳しく取り上げています。

米国の関税措置の影響が数字に出ています

対米輸出額の前年比
2023年 15.8%増
2024年 26.1%増
2025年 6.3%増

米国の関税措置について、全日本菓子協会は2025年の対米輸出額の伸びが6.3%増にとどまった点を挙げ、影響を受けていることが見てとれると指摘しています。前の2年が二桁の伸びだったことを踏まえると、変化の大きさがわかるでしょう。

インバウンドの恩恵は一様ではありません

訪日外国人数は約4,268万人と過去最多になり、購入単価の上昇も加わって菓子の購入額は約4,700億円と推計されました。ただしこの恩恵は、すべてのジャンルに等しく及んだわけではありません。

生菓子の項では、効果は主に土産用菓子や流通菓子が中心とみられ、洋菓子を扱う店舗や企業で顕著な効果は確認されなかったと記されています。和生菓子でも、訪日外国人の関心は高いものの購入に結びついていない状況が報告されました。スナック菓子の項にいたっては、秋以降のインバウンド需要の低下が数量の頭打ちに影響しているとの指摘があります。

輸出データの読み方に注意点があります

協会が公表する輸出入のデータは、協会が独自にタリフライン(輸出入統計品目番号)ベースで品目を選定して集計したものです。そのため農林水産省が公表するデータとは一致しません。

公表元 2025年の菓子類輸出額 前年比
全日本菓子協会 505億円 6.0%増
農林水産省 433億円 5.9%増

同じ「2025年の菓子輸出額」でも、70億円あまりの開きがあります。協会の資料自身がこの点を明記していますので、引用する際は公表元をあわせて示すのが安全でしょう。


動向7:買う場所が量販店とコンビニに寄っています

和・洋菓子、デザート類の流通チャネル別構成比

ここからは矢野経済研究所の調査に視点を移します。同社によると、2024年度の和・洋菓子、デザート類総市場を流通チャネル別に見た場合、量販店が35.5%で最大の受け皿となりました。コンビニエンスストアが19.0%、百貨店が16.3%と続きます。

流通チャネル 2024年度の構成比
量販店 35.5%
CVS(コンビニエンスストア) 19.0%
百貨店 16.3%
その他(法人需要等を含む) 9.5%
専門店・路面店 5.8%
通販 5.0%
駅関連 4.0%
空港 3.9%
SA・PA 1.0%

専門店・路面店だけが前年を下回りました

市場全体が前年度比4.0%増となったなかで、チャネルごとの伸びには濃淡が生まれました。同調査では、専門店・路面店(ショッピングセンター内の専門店を含む)だけがわずかに前年割れとなり、それ以外のチャネルは前年を超えたと報告されています。背景として挙げられたのが、節約志向の広がりによる目的来店の減少です。

専門店の経営環境については、帝国データバンクの倒産データとあわせて洋菓子店の倒産動向の記事で詳しく取り上げました。


2026年はどうなるのでしょうか

全日本菓子協会は価格改定の継続を見込んでいます

全日本菓子協会の資料では、2026年について次のような見通しが示されました。

項目 協会の見方
コスト 円安の高止まりや賃上げなどのなかで、原材料費・エネルギー費・物流費・人件費の高い状態が続く
価格 菓子の価格改定も一定程度見込まれる
国内需要 実質賃金のプラス化は見込まれるが、物価への影響次第では節約志向が続き、菓子需要全体への影響が懸念される
輸出 米国の関税措置の不透明感はあるものの、引き続き増加が見込まれる
インバウンド リスク要因はあるものの、全体としては好調な流れを維持することが期待される

国内は慎重、海外は前向きという構図です。協会は、こうした内外の要因と菓子需要への影響を注視していく必要があると結んでいます。

矢野経済研究所の予測は2兆5,839億円です

和・洋菓子、デザート類の総市場規模

矢野経済研究所は、和・洋菓子、デザート類の2025年度の総市場規模を前年度比2.5%増の2兆5,839億円と予測しました。和菓子類・洋菓子類・デザート類・アイス類の4カテゴリーすべてが前年を上回る見通しですが、市場の拡大は主に単価の上昇によるもので、販売数量の伸びは限定的だとしています。

方向 内容
押し上げる要因 大阪・関西万博による需要増、残暑の長期化によるアイス需要
抑える要因 物価上昇を背景とした節約志向の強まり

大阪・関西万博は2025年4月13日から10月13日まで開催されており、会期は年度でいえば2025年度に収まります。協会の資料でも、せんべいの項で万博による大阪での販売の伸びが触れられました。2つの資料が同じ出来事を別の角度から拾っている格好です。

なお矢野経済研究所は、物価上昇を背景に消費者が日常支出を抑えつつ旅行やイベント時には支出する、いわゆるメリハリ消費の傾向を強めているとも指摘しています。協会が挙げた「消費の二極化」と同じ方向を向いた見立てといえるでしょう。

参考:国際博覧会|経済産業省

読むときに気をつけたい4つの点

数字がひとり歩きしやすいテーマだけに、読み取りの前提も確認しておきましょう。

金額の最高値は「たくさん売れた」ことを意味しません

小売金額4兆円という数字は目を引きます。ただ、その裏側では生産数量が2年続けて前年を下回り、家計の菓子支出も実質ではマイナスでした。金額の増加と需要の増加を同じものとして扱うと、実態を見誤ることになります。

統計ごとに守備範囲と前提が異なります

冒頭で整理したとおり、全日本菓子協会と矢野経済研究所の2つの資料は、対象も期間も金額の基準も違います。協会の資料自身も、家計調査については「生産数量・生産金額及び小売金額(推定)」とは調査方法に違いがあることに留意が必要だと注意を促しました。数字を引用するときは、それがどの資料のどの指標なのかを添えておくと誤解が生じにくくなるでしょう。

同じ品目でも、公表元によって数字が変わります

項目 全日本菓子協会の値 別の資料の値 差が出る背景
2025年の菓子輸出額 505億円 農林水産省 433億円 協会は独自にタリフラインで品目を選定
2025年のスナック菓子の数量 28万9,359トン(生産数量) 日本スナックシリアルフーズ協会 27万1,033トン(出荷数量) 集計団体が異なり、生産と出荷でも段階が違う
2025年の米菓の数量 21万9,982トン 食品産業動態調査 20万1,642トン 両資料に説明がなく、理由は特定できません
2025年のビスケットの数量 24万7,100トン 食品産業動態調査 24万7,075トン 25トン差でほぼ一致
アイスクリームの扱い 11ジャンルに含めない 食品産業動態調査は畜産食料品に分類 統計の目的そのものが違う

輸出額は70億円あまり、米菓は1万8千トンあまりの開きがあります。同じ言葉を使っていても、指しているものが資料ごとに違うわけです。

どれかが誤っているという話ではありません。集計の設計がそれぞれ違うだけですから、数字を引くときは公表元と指標名をあわせて示しておくと、読み手の誤解を防げるでしょう。

参考:資料ダウンロード|日本スナックシリアルフーズ協会

いずれも推定値・予測値です

協会のデータには「推定」と明記されており、矢野経済研究所の2025年度の数値は予測値です。確定値ではないという前提のうえで、傾向を読み取る材料として扱うのが適切といえます。


まとめ|2025年の菓子市場から見えてきたこと

全日本菓子協会と矢野経済研究所、2つの資料から読み取れる動向をあらためて整理しました。

  • 全日本菓子協会と矢野経済研究所の統計は守備範囲がほとんど重ならないため、数字を合算したり比べたりはできない
  • 2025年の菓子小売金額は4兆996億円で初めて4兆円を超え、生産金額とともに5年連続のプラスとなった
  • 生産数量は196万8,100トンで2年連続のマイナス。2019年の水準にはまだ届いていない
  • 菓子類の消費者物価は8.9%、チョコレートは35.7%上昇した一方、実質賃金は4年連続のマイナスだった
  • 家計の菓子支出は名目5.9%増だが、実質では2.8%減。買えた量は減っている
  • 11ジャンル中6ジャンルで数量が減り、そのすべてで小売金額は前年を上回った
  • チョコレートは数量9.0%減・小売金額12.6%増と、他のジャンルにない大きさで動いた
  • 輸出505億円、輸入1,105億円、訪日外国人の菓子購入額約4,700億円はいずれも過去最高を更新した
  • インバウンドの効果は土産用菓子や流通菓子に集中し、和菓子店・洋菓子店には届きにくかった
  • 販売の場は量販店とコンビニエンスストアに寄り、専門店・路面店は前年を下回った

金額の数字だけを追えば、菓子市場は好調そのものに映ります。けれども数量と実質支出に目を移すと、価格の上昇が金額を押し上げる一方で、実際に手に取られている量は細っているという別の姿が見えてきました。

2026年もコスト高と価格改定は続く見通しです。金額と数量のどちらが動いているのかを分けて追いかけることが、この市場を読むうえでますます欠かせなくなりそうですね。

2025年の菓子の小売金額は4兆996億円

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この記事を書いた人

【あいさつ】
こんにちは、ゴンザレス美と申します。お菓子ライブラリの運営者です。
お菓子・食品関連業界の事業会社にて新規事業の立ち上げに携わる、お菓子業界の現役従事者です。Webコンテンツ制作・SEO対策・販促物制作・営業活動・食品展示会の出展準備と運営など、業界の事業活動を実務として日々経験しています。

【これまでの経歴】
大学卒業後、外食産業にて店舗運営に従事し、調理・接客・スタッフマネジメント・売上管理など、現場運営の基礎を積みました。その後Web業界へ転身し、SEOコンサルティング会社にてWebライティング・編集・進行管理に携わったのち、美容・健康分野のWebマーケティングを担当。検索意図の読み解きからコンテンツ設計・データ改善までを一貫して経験してきました。
現在はお菓子・食品関連業界に身を置き、新規事業の立ち上げに参画した他、Web制作・SEO記事執筆・販促カタログ制作・営業支援・食品展示会への出展準備と運営など、お菓子・食品業界の事業活動を多面的に経験しています。

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