チョコレートケーキとは|ザッハトルテの7年戦争と世界の種類一覧

チョコレートケーキとは、チョコレートやココアを生地やクリームに使ったケーキの総称です。ウィーンの誇りザッハトルテ、フランスのガトーショコラ、アメリカ生まれのブラウニーやデビルズフードケーキ——同じ「チョコのケーキ」でも、国ごとに姿も思想もまったく異なります。なかでもザッハトルテには、本家の座をめぐって7年も争われた「甘い戦争」の物語まであります。このページでは、世界のチョコレートケーキを、その物語とともに一覧で整理して解説します。
| 意味 | チョコレートやココアを使ったケーキの総称 |
|---|---|
| ウィーン | ザッハトルテ |
| フランス | ガトーショコラ、オペラ、フォンダンショコラ |
| アメリカ | ブラウニー、デビルズフードケーキ、ジャーマンケーキ |
| ドイツ | シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ |
ザッハトルテ|16歳の少年が生んだウィーンの至宝
1832年、宮廷の代役から
チョコレートケーキの王様と呼ばれるザッハトルテは、1832年のウィーンで生まれました。外交界の大物メッテルニヒ侯爵が「賓客のために特別なデザートを」と命じた日、あいにく料理長が病に伏せており、代役を任されたのが、まだ16歳の見習い料理人フランツ・ザッハーでした。少年が考案したチョコレート尽くしのトルテは喝采を浴び、彼の名を冠して「ザッハトルテ」と呼ばれるようになります。チョコレート生地にアンズジャムを効かせ、パリッとしたチョコの衣(グラズール)で包むのが伝統の姿です。
「甘い7年戦争」|ホテル・ザッハー対デメル
このケーキには、有名な法廷闘争の物語があります。フランツの息子エドゥアルトが開いた「ホテル・ザッハー」が財政難に陥った際、支援した老舗菓子店「デメル」がザッハトルテの販売権を得ました。ところが戦後、「オリジナル」の名をどちらが名乗るかをめぐって両者は裁判に突入。争いは7年におよび、「甘い7年戦争」と呼ばれました。判決は、いわば痛み分け。ホテル・ザッハーは「オリジナル・ザッハトルテ」を、デメルは「デメルのザッハトルテ」を名乗ることで決着します。いまもウィーンでは、ジャムを中にも挟むザッハー版と、表面だけに塗るデメル版、二つの”本家”を食べ比べできます。争いすら名物にしてしまう——それがウィーン菓子の底力です。
フランスのチョコレートケーキ
ガトーショコラ|日本で独自進化した定番
ガトーショコラは、フランス語で「チョコレートの焼き菓子」を意味する言葉です。じつは本国では特定のレシピを指す言葉ではなく、日本で「表面が割れた、しっとり濃厚な焼きチョコケーキ」として独自の定番像が育ちました。小麦粉を控え、チョコと卵の力で焼き上げる濃密さが身上。バレンタインの手作りお菓子の王道でもあります。
オペラ|職人技の多層建築
オペラは、コーヒーを効かせた薄いビスキュイ生地と、バタークリーム・ガナッシュを何層にも重ねたパリの銘菓です。定規で引いたような美しい層は、パティシエの技術力の証。金箔をあしらった気品ある姿は、チョコレートケーキの中でも別格の存在感を放ちます。
アメリカのチョコレートケーキ
ブラウニーとデビルズフードケーキ
アメリカ勢は、豪快さが持ち味です。天板で焼いて四角く切り分けるブラウニーは、1893年のシカゴ万博のために生まれたと伝わる「持ち歩けるケーキ」。そして「悪魔のように罪深いおいしさ」と名づけられたデビルズフードケーキは、真っ黒な生地にチョコクリームをたっぷり重ねた、甘党のためのケーキです。天使のように白いエンゼルフードケーキと対をなす、遊び心あるネーミングも愛されています。
ジャーマンケーキ|「ドイツ」ではない意外な由来
ココナッツとピーカンナッツのフィリングを重ねたジャーマンケーキも、じつはアメリカ生まれ。名前は国のドイツではなく、チョコレートを開発した人物の名「ジャーマン氏」に由来するとされます。日本では、アメリカ統治下の沖縄に伝わって根づいた、という歴史の面白さもあります。
世界のチョコレートケーキ一覧
| 名前 | 生まれ | 特徴 |
|---|---|---|
| ザッハトルテ | オーストリア | アンズジャムとチョコの衣 |
| ガトーショコラ | フランス→日本で定着 | しっとり濃厚な焼きチョコ |
| フォンダンショコラ | フランス | 中からチョコがとろける |
| オペラ | フランス | コーヒー香る多層仕立て |
| ブラウニー | アメリカ | 天板焼きの四角い携帯ケーキ |
| デビルズフードケーキ | アメリカ | 真っ黒でボリューム満点 |
| ジャーマンケーキ | アメリカ(沖縄で普及) | ココナッツ×ピーカン |
| シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ | ドイツ | さくらんぼと生クリームの黒い森 |
選び方のヒント
濃厚さを求めるならガトーショコラやザッハトルテ、軽やかさならシュヴァルツヴェルダーのような生クリーム系、話題性ならとろけるフォンダンショコラ——気分で選び分けるのがチョコレートケーキの楽しみです。コーヒーや赤ワイン、ウイスキーとの相性も抜群で、大人のデザートとしての奥行きもあります。
まとめ
チョコレートケーキは、16歳の少年が生んだザッハトルテから、7年の裁判、沖縄に渡ったジャーマンケーキまで、物語の宝庫です。国ごとの個性を知れば、一切れのチョコレートケーキがもっと味わい深くなります。それぞれの詳しい歴史は、本文中の個別記事でどうぞ。




