マフィンとは|二つのマフィンの違いと歴史【童謡マフィンマンも】

マフィンとは、ひとことで言えば「二つの顔を持つ焼き菓子」です。カップ型でこんもり焼き上げる甘いアメリカンマフィンと、平たい円盤形でもちっとした食パンのようなイングリッシュマフィン——名前は同じでも、姿も食べ方もまったく違います。イギリスには「マフィン売りのおじさん」を歌った古い童謡があり、アメリカのマフィンはベーキングパウダーの発明が生んだ「時短の焼き菓子」でした。このページでは、二つのマフィンの違いと、それぞれの歴史・食べ方を詳しく解説します。
| アメリカンマフィン | イングリッシュマフィン | |
|---|---|---|
| 形 | カップ型・山形 | 平たい円盤形 |
| 膨らませ方 | ベーキングパウダー | イースト(発酵) |
| 味 | 甘い(お菓子寄り) | ほぼ無糖(パン寄り) |
| 食べ方 | そのままおやつ・朝食に | 割ってトーストし、具をのせる |
二つの「マフィン」が生まれた順番
先に生まれたのはイングリッシュマフィンです。イギリスでは18〜19世紀ごろから、イースト発酵の平たいパンとして親しまれていました。一方のアメリカンマフィンは、19世紀にベーキングパウダー(膨張剤)が普及したことで生まれた、比較的新しいお菓子。発酵を待たずにすぐ焼ける「クイックブレッド」の代表として、アメリカの家庭に広まりました。つまり二つのマフィンは、親子でも兄弟でもなく、「名前を受け継いだ別人」のような関係なのです。
イングリッシュマフィン|童謡に歌われた「マフィン売り」
「マフィンマン」の時代
イギリスには「Do you know the muffin man?(マフィン売りのおじさんを知ってる?)」という童謡があります。19世紀のロンドンでは、焼きたてのマフィンをお盆にのせ、ベルを鳴らしながら街を売り歩く「マフィンマン」が実在しました。ティータイムに、バターをたっぷり塗った温かいマフィンを食べるのが、当時の庶民の楽しみだったのです。童謡は、そんな暮らしの情景を今に伝えています。
食べ方|「割って、焼いて、のせる」
イングリッシュマフィンは、ナイフではなくフォークや手で水平に割るのが流儀。断面の凸凹にバターがしみ込み、トーストすると外はカリッ、中はもちっとした食感になります。目玉焼きやベーコン、チーズをのせれば立派な朝食に。卵とハムをのせてオランデーズソースをかけた「エッグベネディクト」の土台としても、世界中で愛されています。表面にまぶされたコーングリッツ(トウモロコシの粗挽き粉)の香ばしさもおいしさのうちです。
アメリカンマフィン|ベーキングパウダーが生んだ朝の定番
「すぐ焼ける」が正義
アメリカンマフィンの本質は、手軽さにあります。粉・卵・牛乳・油を混ぜてカップに流し、オーブンへ——イースト発酵のパンと違い、思い立ってから30分ほどで焼きたてが食べられます。混ぜすぎないことがふんわり仕上げるコツで、生地に多少のダマが残っていてよい、という大らかさもアメリカ流。朝食やブランチの定番として、家庭にもカフェにも根づいています。
ブルーベリーからチョコチップまで
アメリカンマフィンの楽しさは、混ぜ込む具の自由さです。定番のブルーベリーをはじめ、バナナ、チョコチップ、ナッツ、コーン、ベーコンチーズのような塩系まで、何でも受け止めます。ブルーベリーマフィンはアメリカで特別に愛されており、州の公式マフィンに定めている州もあるほど。日本でもカフェやコンビニの定番になり、手作りお菓子の入門メニューとしても人気です。
名前の由来
「マフィン(muffin)」の語源には諸説あり、古いフランス語やドイツ語の「柔らかいパン・小さなケーキ」を指す言葉に由来するといわれています。はっきりしているのは、イギリスで「マフィン」と呼ばれていたパンの名前が海を渡り、アメリカで新しいお菓子に受け継がれたこと。のちにアメリカ式が世界に広まると、イギリスの元祖は区別のため「イングリッシュマフィン」と呼ばれるようになりました。
似ている焼き菓子との違い
カップケーキとアメリカンマフィンはよく似ていますが、カップケーキはスポンジケーキ寄りのきめ細かい生地に、クリーム(フロスティング)で飾るのが基本。マフィンは生地がざっくりして甘さ控えめ、飾らないのが基本形です。どっしり系のパウンドケーキや、天板で焼くブラウニーとも作り方の思想が異なります。それぞれの違いは、個別記事で詳しく紹介しています。
まとめ
マフィンは、童謡に歌われた19世紀ロンドンの「マフィンマン」の平たいパンと、ベーキングパウダーが生んだアメリカの手軽な焼き菓子——二つの物語を持つ言葉です。エッグベネディクトの土台になるのがイングリッシュ、ブルーベリー入りでカフェに並ぶのがアメリカン。名前の混乱ごと楽しめば、マフィンはもっとおいしくなります。

