バターや脱脂粉乳は2035年に値上がり?国際価格の見通しから読むお菓子の原料

バター、脱脂粉乳、植物油。どれも焼き菓子やチョコレートなど、多くのお菓子に欠かせない原料です。この記事では、農林水産政策研究所が2026年3月に公表した「2035年の世界食料需給の見通し」をもとに、お菓子の原料に関わる国際価格の見通しを整理しました。
この記事で分かること
- 2035年の国際価格は、物価の影響を除いても脱脂粉乳が18.4%、バターが13.3%上がる見通し
- 植物油やチーズも上がる一方で、小麦・大豆・米などは横ばいからわずかに下がる
- 植物油の需要には、インドの輸入の増加やバイオ燃料の利用が関わっている
国際価格の見通しの全体像
2035年に値上がりが見込まれるのは、乳製品や植物油

穀物や大豆の価格が弱含む見通しなのに対して、乳製品や植物油、肉類の多くは上がる見通しです。とくにバターと脱脂粉乳は、ほかの品目より大きな値上がりが見込まれています。同じ「食料」でも、品目によって価格の方向が分かれる形です。
※実質価格は、全体の物価の上昇分を除いた価格です。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
乳製品の価格の見通し
バターと脱脂粉乳は、ほかの品目より大きく上がる見通し
| 品目 | 2022-24年 | 2035年(見通し) |
|---|---|---|
| 脱脂粉乳 | 313ドル/100kg | 370ドル/100kg |
| バター | 547ドル/100kg | 619ドル/100kg |
| チーズ | 461ドル/100kg | 475ドル/100kg |
バターは焼き菓子の風味づけに、脱脂粉乳はミルクチョコレートやアイスクリームなどに使われる原料です。国際価格が上がれば、こうした原料を輸入に頼る国のお菓子づくりにも影響が出る可能性があります。チーズの上がり幅は、バターや脱脂粉乳に比べると小さくとどまる見通しです。
※報告書には、乳製品の価格が上がる具体的な理由は書かれていません。原料の用途は一般的な説明で、お菓子づくりへの影響は当サイトの見方です。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
植物油の価格と需要の見通し
植物油は、大豆とは反対に値上がりする見通し
| 期間 | 植物油の国際価格(実質) |
|---|---|
| 2022-24年 | 1,312ドル/トン |
| 2035年(見通し) | 1,369ドル/トン |
大豆の国際価格はわずかに下がる見通しですが、植物油の価格は上がると見込まれています。植物油は、スナック菓子を揚げる油や、チョコレート・ビスケットの原料などに幅広く使われています。
※植物油の用途は当サイトによる一般的な説明です。植物油には、大豆のほかパーム油や菜種油なども含まれます。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
インドの植物油の輸入は、20年ほどで約3倍に増えた
インドの植物油の輸入量は、2000年代前半の500万トンほどから、2010年代後半には3倍ほどまで増えました。とくにパーム油の輸入が多く、輸入量の半分以上を占めています。国内での生産の伸びは消費に追いついておらず、輸入に頼る構図が続いています。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
バイオ燃料向けの需要は、2035年にかけて横ばいで推移する見通し
植物油などを原料とするバイオディーゼルの需要は、インドネシアで燃料への混合率が上がったことなどから、2020年以降も増えてきました。とうもろこしなどから作るバイオエタノールも、コロナ禍で落ち込んだ後、2024年には以前の水準まで回復しています。2035年に向けては、バイオ燃料の原料向けの需要は農産物の需要を下支えするものの、横ばいになると見込まれています。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
データを読むときに気をつけたい3つの点
- 国際価格の見通しで、日本国内の価格ではありません。 日本でのバターや植物油の価格は、為替や国内の制度、流通の事情などによっても変わるため、並べて比べることはできません。
- 物価の上昇分を除いた実質価格です。 実際に支払う名目価格では、上がり幅はこれより大きくなると考えられます。
- 平年並みの天候や、今の政策が続くことを前提にしています。 報告書は、紛争や各国の政策変更、物流の混乱などで2026年以降に価格が大きく動く可能性があるとしています。
まとめ
この記事で使った資料
資料の一覧と、数字の数え方を見る
| 資料名 | 世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し― |
|---|---|
| 発信元 | 農林水産政策研究所(農林水産省) |
| 公表日 | 2026年3月 |
| 集計の対象 | 世界の穀物・大豆・植物油・肉類・乳製品などの需給と国際価格 |
| 集計の単位 | 前後3か年度の平均(基準は2022-24年度)と、2035年の見通し。価格は穀物・油糧などがドル/トン、畜産物がドル/100kg |
見通しは、農林水産政策研究所の「世界食料需給モデル」で計算されたものです。収穫面積の変化に特に制約がなく、今の単収の伸びが続き、各国の政策が今のまま続き、天候が平年並みであるという前提に立っています。

