小麦の世界の生産と輸出はどうなる?2035年までの見通しをデータで読む

ケーキやクッキー、パンの原料になる小麦は、どこで作られ、どこから世界へ運ばれているのでしょうか。この記事では、農林水産政策研究所が2026年3月に公表した「2035年の世界食料需給の見通し」をもとに、小麦の生産・輸出・価格の見通しを整理しました。
小麦の生産の特徴
世界の小麦の生産は、中国とEUがそれぞれ2割近くを占める
| 順位 | 国・地域 | 世界の生産量に占める割合(2022-24年度平均) |
|---|---|---|
| 1位 | 中国 | 17% |
| 1位 | EU | 17% |
| 3位 | インド | ― |
| 4位 | ロシア | ― |
| 5位 | 米国 | ― |
上位5か国・地域を合わせると、世界の生産量の65%を占めます。小麦の生産量は主に単収(面積あたりの収穫量)の伸びによって増えており、先進国の収穫面積は少しずつ減る傾向にあります。
※インド・ロシア・米国の個別の割合は、報告書の本文には書かれていません。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
2035年には、アジアが生産の4割、欧州が3割超を占める見通し
| 地域 | 2035年の世界の生産量に占める割合 | 2035年の世界の消費量に占める割合 |
|---|---|---|
| アジア | 4割 | 5割弱 |
| 欧州 | 3割超 | 2割程度 |
アジアは、生産より消費の割合が大きく、足りない分を輸入に頼る地域です。反対に欧州は、消費より生産の割合が大きく、余った分を輸出に回せる地域といえます。
※割合は、2035年の見通しについて報告書に書かれた表現です。地域ごとの輸入・輸出の位置づけは、生産と消費の割合から当サイトが読み取ったものです。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
小麦の輸出の動き
ロシアは2014年から、アメリカを上回る小麦の輸出国になった
小麦の輸出は、長くアメリカやカナダなどが中心でした。2000年代以降は、新たにロシアとウクライナが輸出市場で存在感を高めています。ロシアの輸出量は2014年以降、アメリカを上回るようになりました。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
2035年もロシアが世界一の小麦輸出国を維持する見通し
報告書の見通しでは、ロシアは2035年に向けて小麦の純輸出量を増やし、世界一の輸出国であり続けます。世界の小麦の流れは、今後もロシアの生産や輸出の動きに大きく左右されることになりそうです。
※純輸出量は、輸出量から輸入量を差し引いた量です。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
小麦の使われ方
2035年には、小麦の消費の2割ほどが家畜のえさになる
小麦は主に食用として消費が増えますが、家畜のえさとしての利用も増える見通しです。2035年には、飼料用が世界の小麦の消費量の2割程度を占めるとされています。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
小麦の価格の動き
2035年の小麦の国際価格は、実質で2022-24年とほぼ同じ水準
| 期間 | 小麦の国際価格(実質) |
|---|---|
| 2022-24年 | 278ドル/トン |
| 2035年(見通し) | 275ドル/トン |
物価の上昇分を除いた実質価格で見ると、2035年の小麦の国際価格は2022-24年より1.2%低くなる見通しです。ただし、全体の物価の上昇を加えた名目価格で見ると、穀物の価格はわずかに上がると見込まれています。
※これは世界の国際価格の見通しで、日本国内で小麦粉やお菓子に使われる小麦の価格とは別のものです。
参考:世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し―|農林水産政策研究所
足元では、日本の輸入小麦の売渡価格が2026年10月期に12.0%上がった
| 適用される時期 | 輸入小麦の政府売渡価格(5銘柄の加重平均・税込) |
|---|---|
| 2026年4月期 | 62,520円/トン |
| 2026年10月期 | 70,020円/トン |
長い目で見た国際価格の見通しとは別に、日本では、国が輸入した小麦を製粉会社などに売り渡す価格が、2026年10月期に引き上げられました。この価格は、直近6か月に国が買い付けた価格の平均をもとに年2回見直されるため、その間の国際価格や為替の動きが反映されます。これを受けて日清製粉は、業務用小麦粉の価格を2026年12月19日納品分から、25kgあたり240〜395円(税抜)引き上げると発表しています。
※2035年の見通しは物価の影響を除いた長期の国際価格、政府売渡価格は日本国内の半年ごとの価格で、性格が異なるため並べて比べることはできません。
参考:輸入小麦の政府売渡価格の改定について|農林水産省
参考:小麦・小麦粉の価格のしくみ|日清製粉グループ
参考:小麦粉価格改定のお知らせ(2026年10月8日)|日清製粉
データを読むときに気をつけたい3つの点
- 平年並みの天候や、今の政策が続くことを前提にした見通しです。 干ばつや紛争などで生産や輸出が落ち込む場合は、見通しとは異なる動きになります。
- ロシアとウクライナの情勢には不確かさが残ります。 報告書も、ウクライナ侵攻の長期化などで2026年以降に穀物などの価格が大きく動く可能性があるとしています。
- 数字は前後3年の平均です。 1年ごとの豊作・不作の影響をならした値で、特定の年の実績とは一致しません。
まとめ
この記事で使った資料
資料の一覧と、数字の数え方を見る
| 資料名 | 世界の食料需給の動向と中長期的な見通し―世界食料需給モデルによる2035年の世界食料需給の見通し― |
|---|---|
| 発信元 | 農林水産政策研究所(農林水産省) |
| 公表日 | 2026年3月 |
| 集計の対象 | 世界の穀物・大豆・植物油・肉類・乳製品などの需給と国際価格 |
| 集計の単位 | 前後3か年度の平均(基準は2022-24年度)と、2035年の見通し |
| 資料名 | 輸入小麦の政府売渡価格の改定について |
|---|---|
| 発信元 | 農林水産省 |
| 公表日 | 2026年9月9日 |
| 集計の対象 | 輸入小麦5銘柄の政府売渡価格 |
| 集計の単位 | 半年ごと(4月期・10月期)の1トンあたり価格 |
見通しは、農林水産政策研究所の「世界食料需給モデル」で計算されたものです。収穫面積の変化に特に制約がなく、今の単収の伸びが続き、各国の政策が今のまま続き、天候が平年並みであるという前提に立っています。政府売渡価格の決まり方は、日清製粉グループの解説ページを参考にしています。

